第10話 国王陛下に報告
「次の村で最後だな、当然だが最初はどの村も私たちを歓迎しない感じだったが、村を出るときには凄い見送りだったな」
今までの暮らしを考えれば来た時と去る時で態度が違うのは当たり前ですよね。
長年のことだったので問題が解消されて普通に暮らせるようになったからと許せてしまう村人たちの優しさに感謝ですね。
まあ、搾取される側だからその日を暮らしていけるかどうかの平民は些細なことで不満をもつ者が多いがそれは仕方ない。
「あれ?カイル兄様。今までの村と違いこの村には門番がいますよ」
「ハルク村長、どうしてなんだ?」
「この村は、ハルムート公爵領と接してますからね。冒険者を引退された方が他領から村に来て、門番をやってくれているのですよ」
そんなことしてくれているのか、いい人たちだな。
「あとは言いにくいことですがハルムート公爵家から食糧を提供してもらっていまして、それを各村で分けあってきたから今まで生きてこられたと言えるでしょうね」
本当に、ギリギリだったのですね。援助がなければ今頃は……
「普通なら他領への干渉になるんですが、領主家に見捨てられた村でしたから領主家に相談も報告も必要なかったわけですよ」
「なるほどな、宰相には王城に行ったらお礼を言わねばならぬな」
本当ですね。私からも何か贈り物をしよう。一つは手紙を転送する魔道具だね。
宰相様は、国王陛下に渡した時に凄く注目していたからね。
そんなことを考えていると馬車が止まり、カイル兄様が降りて、門番さんに話しに言った。
「何者だ、次々に出来ているあの石の道は何だ?」
「私は、カイル・フォン・アリステラと申す」
カイル兄様が家名も名乗られましたね。
「あれは、道を整備しているのだ、門番、村長と話し合いたいから村に入れてくれ。」
「何!!アリステラ公爵家の者だと……ちょっと待っていろ村長に聞いてこさせるが、私としては入れたくはないがな」
「……わかった。こちらで待たせてもらう」
話している内容が聞こえてきましたが、ごもっともですね。
門番さんからしたら他領の者である自分達が手を貸してきたから村が存続していられたのに今更領主家が何用だって感じでしょうね。
でも門番さんは村の長ではないから決定権はないから村長さんに聞きに行かせたってところでしょう。
しばらくすると門番さんの一人が誰かを連れて戻ってきた。
あれがこの村の村長さんですかね?三十代くらいの女性ですね。
「私がこの村の村長のナンシーだ、アリステラ公爵家の者だということだが何のようだい?」
「ああ、今まですまなかった、それでこちらは畑の作物は育つのだろうか?」
「いいや、育たない、だから隣領のハルムート公爵領の領主家や領民の方たちに支援していただいているんだよ」
「なら畑で作物が育つように問題を解決しに来たと言ったら信じてくれるか?」
「今更って感じだし、やってくれるならやってもらいたいが信じてはいないね」
そうだよね。村長のナンシーさんの言い分を聞いて納得していると馬車からハルクさんが降りてカイル兄様の元に向かった。
「ナンシー村長、久しぶりだな」
「ハルク村長さん、お久しぶりですどうしたのですか?」
「カイル様の話をナンシー村長が信じていないと言ったのが聞こえたので、信じてもらうために説明に来た」
うん。カイル兄様はまずは自分がと言って話しにいったがこれは最初からハルク村長さんも一緒に行って説明してた方がスムーズに行っていただろうな。
「わかったよ、ハルク村長さんが言うなら本当なんだろうから信じる、村に入ってちょうだい」
ハルク村長さんの説明で納得したナンシー村長さんが村に入る許可をくれた。
ハルク村長さんが声をはそのままナンシー村長さんと話しながら歩いて移動するみたいでカイル兄様だけが馬車に戻ってきて馬車が動きだし村に入った。
この村でもやることは同じである。慣れたものだ。
「こりゃあ驚いたね……今までも修理してもらったりしていたから雨風はしのげていたが、立派な家になっちまったね他の村もこんな感じかい?」
「そうだ、これから七つの村を一つにして町にするらしいぞ」
「そうかい、そりゃあいいや」
「ナンシー村長、ハルムート領と交流があるということは行商が来たりはしますか?」
「ああ、たまに来るよ。金がないから買うことは出来ないが、毎月決まった日に食糧を届けに来てくれていて、今日来る予定だからあと三時間もすれば来るんじゃないかい」
「それは丁度いい、アリステラ領の商人にも頼むつもりだが、今日来る予定のハルムート領の商人とも交渉してみよう」
「カイル兄様、商人が来るまでの間に転移して王城に行きましょう」
「セバスたちは、万が一私たちが戻るまでに商人が来たら代わりに交渉しておいてくれ」
「かしこまりました」
そうして私とカイル兄様は王城に転移した。
「国王陛下、ご相談がございます」
「カイルどうした?村の方はうまくいっておるか?」
「はい、各村を廻りアイリスの力で村人が普通に暮らせるようにしましたので、各村を一つにして大きな町にしようと思っていること、魔の森との間の外壁を壊す許可を頂きたく参りました」
カイル兄様が、今のところの成果と今後やることの許可をもらうために来たことを国王陛下に伝えた。
「それからエリック宰相、ハルムート領と隣接村への支援ありがとうございました」
「よいよい」
「エリックよ、支援していたのか?」
「アリステラ公爵家には報告してませんが、国王陛下には報告したはずですよ」
「そうだったか?」
エリック宰相様は、報告したと言ってますが、国王陛下忘れていたのですか?
「エリック宰相様、これをお受け取りください」
「アイリス嬢、これは手紙を転送できるという魔道具ではないか」
「はい、ご支援して頂いていたお礼ですので、他にもあるのですが、ここでは出せないので外の方へ行きお見せいたします」
「そうかわかった、後程な」
私がエリック宰相さんと話し終わると国王陛下が話し始めた。
「カイルよ、魔の森を開拓するのに外壁を壊すのは構わぬが大丈夫なのか?」
「はい、アイリスが町が出来たら町をおおう結界を張るそうですので、万が一魔物が森から出てきても危険はありません」
「そうかアイリス、結界は国全体をおおうことは出来ぬのか?」
「出来ますけど、でもそうするとアリステラ公爵領も含まれちゃうので私としては……
カイル兄様が公爵家当主になったら国全体をおおう結界にしようかと思っています」
「そうか……ではカイルには早く当主になってもらわねばな、今すぐイルムには当主を引退させるか」
「国王陛下、それは無理でしょう……魔の森周辺を放置している問題はありますが、イルム公爵が当主になってからのことではないですからね」
「カイル兄様が公爵家から居なくなってしまったので、そのうち何かやらかすかもですよ」
「「「確かに」」」
ああ、やっぱり皆そう思っていたんだ。
「話しは以上か?」
「はい」
「ならアイリスがエリックに渡すという品を見に行こうではないか」
「そうですな」
そうして、私たちは王城の庭に向かった。
「アイリス、何を渡すつもりなの?」
「馬車に似たようなものを渡そうかと……まだ作ってないので庭で創造魔法を駆使してチャチャっとつくるつもりです」
それを聞いて、カイル兄様はどんな物かはわからないがとんでもない物だということは理解できたのか頭に両手を押しあてながら歩いていた。
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