第9話 隣村の村長

 石畳を敷き詰め道を整備して行きながら隣村に着いたがこちらも門番はいないようだ。


「何度見てもアイリス様の規格外っぷりには驚かされますね。

 出発してから休みなく魔法を行使し続けても魔力欠乏状態にならないのですから流石は、最も神から愛されしお方ですね。」


「最も神から愛されているですか……王族や貴族の間では私みたいな容姿の者はそう言われるみたいですね。

 アリステラ公爵家ではハルク村長の村を含めた村々が見捨てられる原因となった事件があってから忌み子扱いで疎まれていますけどね。」


「そうなのですね。嘆かわしいことですね。国の繁栄にも繋がるだけでなく自分達の家の繁栄にもなる恩恵を受けれるというのに……」


 そうなんだよね。稀少なスキルとか授かるから国に貢献できるから生家も恩恵受けれるけどね。


「まあ、私には優しいカイル兄様や私を認めてくれる方々がいますから国を乗っ取ろうとか悪い利用のされ方をされるより放置されている方が自由気ままに出来るので助かりました。」


「人は欲深いですからね。邪な愚かな考えをする者はいますからね。」


 人は欲深い。それは間違いない。


 アリステラ公爵家はあの事件がなければ愚かなことをする貴族になっていただろうなきっと……


 そういう意味ではよかったのかな。

 そんな話をしているうちに村長さんの家に到着したみたいです。


「すみません。隣村の村長のハルクですが、お話がありますので、中に入れてもらえませんでしょうか?」


「ハルクか?わかった。今開けるから待っとれ。」


 ハルクさんが声をかけると中から返事が帰ってきてこの村の村長さんが出てきた。


「ハルク。その貴族らしい方々は誰じゃ?」


「私はカイル・フォン・アリステラと申します。」


「私はアイリス・フォン・アリステラです。」


 私とカイル兄様は名乗った。


「……。ワシはこの村の村長のナダルだ。領主家の者が長年見捨ててきた村に何用だ。

 ハルク、お前もワシらと同じ気持ちじゃろうが、なぜ連れてきたのだ。」


 やっぱりアリステラ公爵家はよく思われてませんね。当然ですけどね。


「とりあえず話したいから中に入れてもらえませんか?」


「ダメじゃ。領主家の者など中に入れとうない。

 話があるならここで話せ。」


 普通なら不敬だとなる場面です。


 ナダル村長さんの態度に専属たちは不満そうな顔をしてます。


 ハルク村長も複雑な顔をされてますが、私は事情が事情なので仕方ないと思います。


 カイル兄様も同じ気持ちのようです。


「わかった。ここで話そう。どうせ話した後に外に出てやることやるのだからここで話しても構わないしな。」


「話とはなんじゃ?」


「この村もハルクの村と同じで作物が育たなく食べるのに困っているだろうからそれを解消しにきた。」


「ほぉ~。長年放置してきたのに今更解決しに来たと……」


「そうだ。ハルクの村は既に食糧難も既に解消され暮らしもよくなっている。この村も同じようにしたい。

 王命もあり、村と魔の森の開拓をするつもりなので村々を廻り話し合い七つの村を町にしようと思っている。」


「それは本当かハルク村長。お前の村では普通に生活出来るようになったのか?」


「はい。カイル様たちが来られたのは昨日ですが、一日で今までが嘘のような暮らしが今は出来るようになりました。


 家もすきま風に悩まされることがない家に建て替えて頂きました。もちろん村長の私の家だけでなく村人の家全部ですよ。」


「領主家が考えを変えて戻ってくるということか?」


「いいえ。アリステラ公爵家の考えは変わってません。今も王都近くの公爵邸で好きにやっています。

 私は次期当主予定ですが、妹のアイリスと家を出てこちらに参りました。

 なのでアリステラ公爵家で動いているのは私と妹だけです。

 ただ先程も言いましたが王命です。

 国王陛下や一部の貴族はこちらの味方ですので村は安心な暮らしが出来るようになります。

 ハルクの村でもまだ行商は来ていませんが町になったら来てもらえるように手配する予定でいます。」


「アリステラ公爵家が何か言ってくるんじゃないか?」


「それはないと思います。気にもとめてないですからあの人たちは……

 それに町になればまだ国王陛下から許可は取ってないですが結界を張るつもりでいるので、現公爵邸にいるアリステラ公爵家の者は町に入ることもできなくなるらしいですから何かされることもないので安心してください。」


 カイル兄様の話を聞いて完全には信じていない様子だったが、ハルク村長の村のように畑を浄化し、食べ物を提供した。


 今回は作物の植え付けをして魔法で育ちを早め収穫するというのはやらなかった。


 提供された食べ物を喜んで食べ腹を満たした村人たちは、疑いながらも作物の苗植えを始めた。


 その間に家の荷物を出す許可を貰って家の建て替えを行った。


「本当にありがとう。ハルクの言っていた通り今までが嘘のようだ。」


「喜んで貰えてよかったです。

 ハルク村長の村のように一日で作物を収穫出来るように魔法で早めたりしませんでしたので多めに食料を置いていくので町が出来るまではそれでうまくやってください。

 足りる量だと思いますが、万が一足りないようでしたら旧領主邸のあるハルク村長さんの村まで連絡ください。

 これは手紙を転送する魔道具ですのでこれで手紙を送ってくれればすぐにこちらに手紙が届きますから」


 そしてこの村の村人たちからも大変感謝された。


 ナダル村長の家で一泊させてもらい明日の朝、次の村に移動することになった。

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