第8話 村から町へ

 村に来てから数日が経った。


 今まですきま風に悩まされ寒い思いをしてきたが、村人たちは、家が立て替えられ快適な暮らしをおくっていた。


 今、村人たちは王都の平民どころかちょっとした貴族よりいい暮らしをしている。


 そして今後の事について、村長を交えて話し合うことになった。


「村長、領主家に見捨てられた村はいくつ残っているんだ?」


「領主が逃げてから村々はこの村と同じ感じではありますが、この村も含め七つの村全て残っております」


 領主家が逃げ、長年見捨てられた村が一つもなくなることなく残っているなんて奇跡と言えるだろう。


「領主家の者として非常に大変な思いをさせてしまい、いくら詫びても償えるとは思えんが、全ての村が存続していることにホッとしている」


「それでカイル兄様、今後はどうするのですか?」


「そうだな……各村に行き、謝罪と各村の村長と話を聞いた上で、領主邸のあるこの村を中心に大きな一つの町にしようと考えている」


 一つにまとめちゃうのか。その方が管理しやすいしね。


「村長の話によるとこの村と同じような状況のようだから、ここでやったように畑の土の浄化や家の立て替えをアイリスにやってもらいたい」


「わかりました、町にするなら道が凸凹していて、馬車移動も大変ですから村に行きながら石畳で立派な道にしてしまいましょう」


 凸凹して雨が降るとぬかるみができて馬車だけでなく歩くのも大変ですからね。


「その辺はアイリスに任せる」


「あと、魔の森から魔物が出て来て王家の命で城壁が作られましたが、魔の森の開拓もするって話でしたので扉もないから行き来出来ないので外壁を壊し、もしもの為に魔物が森から出てきたことを考えて、町をおおう結界を張ろうかと思うのですがいかがでしょうか?」


 外壁高いから私みたいに飛行魔法を使えれば城壁の向こうに行けるけどそうじゃないと無理だからね。


 無理に行こうとすると怪我や最悪命落とすだろうしね。


「外壁の破壊は国王陛下に相談が必要だが、結界を張ると言えば許可は下りるだろう……ちなみにどんな結界を張るんだ?」


「そうですね……魔物もそうですが、もしもですがアリステラ公爵家本家が噂を聞き付けてやって来ても面倒ですので、結界内にいる者に対して悪意を持っている者は入れないとかはどうでしょう」


「それだと……もし村人たちが喧嘩して喧嘩したまま一方が町から出て戻ってきたら入れないってことにならないか?」


「そこは、大きな町にするのですから門番を配置し、門番の許可があれば入れるようにすればいいかと思いますし、村人はともかく見知らぬ者を町に入れるとかしないでしょうから賄賂渡してくるような者は町を害そうとする者に違いませんからね」


「もし賄賂を受け取り町に入れる門番がいた場合には町を追放ってことでいいか……

 しかし、賄賂もらったか証拠がないとダメだから、貰ってないと言いはられたら難しい……」


 そうですね。使ってしまっていたり、証拠になるものがなければ罰せられませんからね。


 そしてうまみをしれば何度もやりますからね。


「なら監視カメラを設置しましょう」


「何だ。監視カメラとは何だ?」


「監視カメラは映像を記録しておく魔道具みたいなものです」


 監視カメラについて、簡単には説明した。


「 映像が残るので証拠になりますし、証拠残さないために監視カメラが破壊されていればやましいことがあるってことになりましからね」


 前世では機械は故障するものだった。


 この世界の魔道具は壊すことは出来るが経年劣化などで故障することはないそうなので設置しておけば永久的に使える。


「じゃあ、そうしようまず村々を廻り、町をつくることと外壁を壊していいか国王陛下に相談だな」


 国王陛下の許可は必要ですよね。王命ですし、勝手にやるのはマズい。


「村を廻るのは大丈夫そうだが、国王陛下に相談するのはどうするかな?

 手紙を届けさせてもやり取りにかなりの日数かかるしな」


「国王陛下から許可をもらい何かあれば約束がなくとも何時でも王城に転移魔法で来ていいと言われていますから行ってその日に帰って来れますよ」


「そうなのか……いつの間にそんな許可もらったんだ?」


「何かやるにも国の許可が必要なことも多いですし、手紙を転送する魔道具もつくりお渡ししてありますが、今回は直接行って話した方がいいと思います」


 そうなのだ。手紙を転送する魔道具も作ってあるのだ。


 見捨てられた村には配達員など来ないので側近たちに手紙を託して届けさせることになる。


 万が一、アリステラ公爵家の者に見つかると面倒だからね。


 私は、捨てられ行方不明ということになっているけど、カイル兄様やカイル兄様の専属たち、料理長のゾイルさん、見習いのマキさんがアリステラ公爵家から居なくなって騒いでいるだろう。


 私と一緒にいるのを知っているのは国王陛下を含めた一部の者だけである。


「じゃあ、村を廻る準備をするか、村長各村にはどのくらいでいけるのだ?」


「はい、そんなに離れていないので一日あれば行けますので各村に行ってこの村に戻ってくるのに二週間ほどで、話し合いが難航するかもしれないことを考えれば、三週間ほどですからね」


 そんなにかかるのか……あとでなんか考えよう。


 一つの町にするのに、町の中を移動するのにそんなにかかったら不便すぎる。


「領主家に思うところがあるかもしれませんが、畑や家をよくしてもらえていい暮らしが出来るようになるのですから町にするのに反対する者はいないと思います」


「そうであればありがたいのだがな……」


 私とカイル兄様は専属たちのうち私の専属メイドのアリスさん、専属騎士のカイトさん、カイル兄様の専属執事のセバスさん、専属騎士のトマスさん、それから村長のハルクさんの六人で隣の村に向かうため出発した。

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