第3話 村の現状②

「私が、村に来た時にはいつ村が無くなってもおかしくない状況でした」


 やっぱり、危機的状況になっていたんだね。当たり前だけど……


「私が来る二十年前までは、魔の森から流れ出る魔素の影響が程よく、作物も立派でおいしい物が育っていました」


 魔の森があることも悪いことばかりじゃなかったのか。


「公爵家から見放され放置されていても行商人が来たりして、村はそれなりに潤っていたしやっていけてたらしいのですが、魔素が長年の蓄積により瘴気となって、畑をダメにしてしまい作物が育たなくなっていきました」


 やっぱり、デメリットもあるよね。


「しばらくして、行商人もこなくなり、私が村長になってからも試行錯誤しているのですが改善がみられず、村が滅ぶのを何とかくい止めているのが現状です」


 村長さんが、頑張っているから何とかって感じか。


 村長さんが、来ていなかったらやっぱり村人は死に絶え村はなくなっていたろう。


 やったことはないけどこれは私の出番だな。そう思い私は拳を握る。


「どうしたアイリス?」


「私の力で瘴気は何とかなるのではないかと思いまして、やったことないけど頑張ってみようと決心していたのです」


 私は、そう言って、カイル兄様に拳を握ってやるぞって顔した。


「そうか、でどうするんだ」


 あれ?呆れられている?まあ気にせず説明しよう。


「はい、瘴気なら聖魔法で浄化出きるのではないかと思いますので、そうすればまた作物も育つのではないかと思いますよ」


「そうか、じゃあ早速試してみるか、村長、いいだろうか?」


「はい、また作物が育つのなら是非。私が来た頃には作物は育たなくなっていたので私は作物が育っているこの村を見たことがないので、妻は小さい時に見たことがあるようなので、妻も喜ぶと思いますので、村の畑に案内いたします」


 そうして、村長さんに村の畑に案内してもらった。


 あらら、これは酷い。ほとんど芽も葉も出てない。

 出ていたとしても枯れかかっている。


 これは作物が採れても小さい物ばかりだろう。


 まあ、少しだけでも採れればいい方という感じだ。


 村長さんが見知らぬ私たちを連れて畑に来たので、村人たちが集まってきた。


 村長さんがいるので私たちの方に近付いてくる人達は、村長さんの奥さんと息子さんに娘さんかな?


「あなた、この方々は?」


「ああ、この方々の身分については家に戻りお前たちに話してから村人みんなに説明するから待ってくれるかな」


 私たちのことより畑をどうにかしなくちゃだからね。


「もしかしたら畑が何とか出きるかも知れないとのことだったので、来てもらった」


「あなたが、そう言うならわかりました」


 そうだよね。いきなり来て、何とかなるかもと言われても信じきれないよね。


 そんな顔を奥さんも息子さんも娘さんかもしている。


 話が聞こえていた村人たちも同じ顔をしている。


「じゃあ、やってみますね」


 私は、数歩前に出て畑に近付き、手を広げ念じた。


(浄化)


 すると、畑の土が光だし、数分で消えた。おお、これは成功したんじゃない。


「聖魔法で土に溜まった瘴気の浄化が出来たと思います」


 浄化できたことを伝えた。


「まあ、今植えてある作物は瘴気でダメになってしまってるので、これ以上育たないと思いますので、新たに種を撒いたり、苗を植えて試してみない本当に成功したかみんなわからないと思いますが、私は浄化できたと思います」


「村長、新しい種や苗は残っているか?」


「はい、ありますが……今から植えるのですか?」


 そうだよね。育つかわからないけどここまで世話した作物を抜いて、新たにと言ったら今までやってきたことが無駄になるので只でさえ少ない食料が無くなるんだもんね。


「しばらくの食料はこちらで用意してあるからやってくれぬか?」


「わかりました」


 納得した村長と村長に連れられて行った息子と村人数人が種と苗を持って戻ってきた。


「こちらが、今植えられている作物の来年分の種とこの季節から植える作物の苗です」


 苗の方は、ちゃんと浄化されていることがわかってから植えればいいよね。


「じゃあ、今植えられている作物を抜いて、種を植えてください私たちも手伝うので」


「いえいえ、貴方様方に手伝ってもらうなどとんでもないです。我々でやるのでお待ちくださいませ」


 村長は、慌てた様子でそう言うと奥さんやお子さん、村人達に指示して作物を抜いて種を撒いていた。


 私は、今は一応公爵令嬢だけど、前世はこちらの世界でいう平民だった。


 都市部で、育ったけど子供の頃は、祖父母の家のある田舎で田んぼや畑仕事のお手伝いをしたこともあるので、手伝うのは気にしない。


 カイル兄様も私がお願いすれば、やってくれそうである。


 私とカイル兄様の専属や料理長のゾイルさんと見習いのマキさんは、主である私やカイル兄様がやるといっているのに自分たちは、否とは言わないというか言えない。


 みんな不満がある人もいるかもだと仕方なくでも手伝ってくれると思うんだけどな。


 などと、考えている間に種まきが終わったみたいで村長さんや村人たちが戻ってくる。

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