第12話 素人探偵
「名前を、菱友 静香と言って、過去にミス東慶に選ばれた美女だ。 そうだ、写真を送りたいから、ラインの設定をしよう」
一旦 電話を切り、ラインを設定した。
その後、ポルシェの横に立つ彼女の写真を送り、再び電話した。
「画像が小さいから拡大しないと見えないじゃん。 なるほど、確かに凄い美人だわ。 それと、隣にいる背の高い男だけど、下級生の 三枝 元太 にどことなく似てるわね」
「この男は、百地 三瓶と言って、東慶大学の大学院に在籍してる。 三枝って、高校時代 皆から恐れられてた奴だろ。 オールバックで色メガネのチンピラだったよな。 でも、成績は常に学年1位で、下級生から聞いた話では 東慶大学の医学部に進学したそうだ。 学校始まって以来の秀才と言われてたよ」
「えっ、そうなの?」
「おまえが転校した後の事だからな。 情報通の 金子 優香もさすがに知らなかったか」
「嫌なことを思い出したわ。 それで調査期限はいつまで?」
「目標は、5日以内に頼む。 それじゃ、連絡を待ってるぞ」
「やって見るわ」
優香は、力強く答えた。
◇◇◇
翌日の、東慶大学での事である。
優香は、大学の学生相談支援課を訪ねた。
「私、法学出版の 金子と申します。
実は、御大学に在籍していた 菱友 静香さんに取材を申し込みたいのですが、連絡先をお聞きする事は可能でしょうか?」
優香は、名刺を差し出した。
「本学に関わる取材であれば、担当教授に確認した上で、改めてご連絡します」
「そうではありません。 菱友さん個人への取材なんです」
優香の話を聞いて、職員は訝しげな顔をした。
「それですと …。 申し訳ありませんが、個人情報なので お教えできません。
「困りました。 お会いできなければ電話でも構わないのですが …。 ミス東慶に選ばれた、優秀で美しい彼女を広く紹介できれば、法学を志す学生が増えると思うのですが …」
優香は、残念そうな顔をした。
「分かりました。 連絡を取って見ます。 菱友さんが取材に応じても良いと判断したなら、彼女から、この名刺の宛先に連絡が行くでしょう。 それで、よろしいですか?」
「はい。 承知しました」
優香は、丁寧に頭を下げた。その後、校内を散策した。
(さすが歴史がある大学だわ。 校内の施設全てに趣がある。 でも、日本一の難関大学のわりにバカそうな学生が多いわね。 試しに話しかけて見るか)
優香は、ベンチに座って本を読んでいる女学生に話しかけた。
「法学出版の 金子と申します。 お聞きしたいのですが?」
優香は、名刺を渡した。
「はい、なんでしょうか?」
「過去にミス東慶に選ばれた、菱友 静香さんをご存知ですか?」
「もちろん、知っています」
「どちらに、就職されたのか分かりますか?」
「彼女は、本学の大学院におります」
「大学院に進まれたんですか。 取材したいのですが、彼女に取り次ぐ事はできますか?」
「すみません。 直接の面識はないんです。 でも、私は法学部なので、たまに お見かけする事はあります」
「そうなんですか。 実は、アポイントが取れなくて困ってるんです」
「今度、菱友さんを お見かけしたら、今の話しをお伝えし、名刺を渡しておきます」
「よろしく お願いします」
優香は、東慶大学を後にした。
◇◇◇
その後、優香は 田所に電話した。
「速報があるわ」
「何か、分かったのか?」
田所は、声を弾ませた。
「菱友 静香は、大学院に進んでたわ。 だから、大学に入り込めば会えるわよ。 今日、出版社を装って取材を申し込んだから、彼女が受ける場合は連絡が来るわ。 果報は寝て待ての状態ね」
優香は、力強い口調で話した。
「そうなのか。 そっちとは別に、会社の求人活動を利用して近づいて見るか。 優香、素性も探ってくれ。 頼んだぞ!」
田所は、嬉しそうに言った。
「分かったけど …。 ところで、なんで、彼女を調査する必要があるの。 そっちの方が興味があるわ」
優香は、悪戯っぽい声を出した。
「そんな、大した理由じゃないよ」
田所は、慌てて電話を切った。彼は、優香が最後に質問した事に対し、嫌な予感を覚えていた。
「雅史の慌てた様子、あれは只事じゃないわ。 暴く必要があるわね!」
優香は、思わず呟いた。
◇◇◇
放課後、俺は静香と話していた。
「さっき、学生相談支援課から連絡が来たんだけど、法学出版の金子さんて女性記者から取材の申し込みがあったんだって。 どうしたら良いかな?」
「学校を通じての取材なら、学校が判断するんじゃないのか?」
「それがね。 私個人への取材なのよ。 受ける場合は、この名刺の宛先に連絡してほしいって」
静香は、俺に名刺を見せた。
「なんか変な名刺だな。 会社名と氏名と携帯番号だけで、会社の住所とその電話番号がない。 それに、デザインが斬新すぎて胡散臭い気がする」
「やめた方が良いかな?」
静香は、少し不安げだ。
「もし受けるにしても、俺が付き添うよ」
「もし何かあったら、相手をぶっ飛ばしてくれる」
「命をかけて守るよ!」
「じゃあ、これから電話してみるね」
静香は、スピーカーホンにして、名刺の携帯番号に電話した。
「はい、金子です」
「法学出版では?」
「失礼いたしました。 法学出版の金子でございます。 もしかして、東慶大学の菱友 静香さんですか?」
「はい。 学生相談支援課から聞きましたが、どのような事を取材したいのですか?」
静香は、不安げに質問した。
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