27

 鎮まる地下室にてダウトは続ける。


「今は喧嘩してる場合じゃないだろ?」


 諭すようにダウトは告げる。

 スチルは黙って座り直した。


「俺に指図すんな」と返すオルガ。


 ダウトは無視してチャリー夫妻に近寄る。


「僕達はこれからどうなるのですか?」


 真顔で尋ねるダウトに、マークは悲しげに答えた。


「君らは・・・・村を離れ、ホープにいる住人全員を抹殺する事が義務づけられている」


 フッと半笑いで返すダウト。


「もしその命令に逆らったら?」


 尋ねられるも返答しないマーク。

 それでも暫くの沈黙の後にカレンが答えた。


「あなた達は殺されるわ」


 変わりに答えたカレンに向けてダウトは続ける。


「僕達は抵抗するかもよ?」


 そう答えるダウトに即答するカレン。


「出来ないわ」


「何故?」


「あなた達の神獣には特殊な装置が施されているの」


「どういう意味?」


「私も詳しくは分からない・・・でも、あなた達に戦う意思が無いと判断された場合は、速やかにその装置が作動する・・らしいわ」


「それは・・爆弾みたいなものです?」


 カレンは首を振る。


「分からない。私達は・・あくまで、あなた達の教育と監視が仕事だから」


 そうカレンが答えると、ダウトは顎に手を置き、何かを考えている仕草をする。


「でも、私達は・・私は!仕事だったけど、何年も一緒にあなた達と過ごしていく内に、かけがえのない存在に・・・ー」


「黙って?」と告げ、手を前に出すダウト。


 カレンは下を向き眉をひそめる。


(このままじゃ・・・いずれ殺される)


 カレン同様にマークも同じ気持ちにあった。

 

「ダウト?・・私達も・・君達と同じような立場なんだよ?」


 マークの言葉にダウトは何も返さない。


「でも僕達に黙ってた」


 そう答えるのはスチル。

 唾を呑み込み、マークは悔しげに嘆いた。


「それは・・君達のためなんだ」


「僕らの?」と返すスチル。


「そうだよ。こんな人殺しのような事、私達は命令したくなかった!・・・・そう!君達には、この年になるまで、その、楽しく健やかに暮らして欲しかったんだよ!?」


 それを聞いてダウトは小さなため息を吐いた。


「僕達に住人を殺す様に命令した時のあなた方の表情は、とてもイキイキとしてましたよ?」


「そ、そんな事は無い!!嫌々だったさ!!」


 声を荒げるマーク。


「無理がありますよ」と小馬鹿にした笑みで返すダウト。


「本当さ!!信じてくれ・・・な?」


 泣きそうな表情で懇願するマーク。

 

「エ、エリザ、キュラミス!!おま・・・あなた達からも何か言ってくれないか?」


 唐突に指名され、慌てる二人。


「ぼぼ、僕は・・馬鹿だから分からないです」


「わ、私も、気を失っていたから・・・」


 エリザは申し訳無さそうに答えてから、スチルを睨みつけた。


「動揺してますよね?」と再び詰め寄るダウト。


「いや、動揺なんかしちゃいないよ。君らに理解して欲しくて、分かりやすく伝えようと・・・」


「まぁいいです」と小さく呟くと、ダウトは周囲を見渡した。

 それに合わせるようにスランが近寄る。

 その横には神獣ツムギ。


 躊躇なくツムギの頭を撫でるダウト。

 その表情は哀しげであった。


「ダウトは何を考えているんだ?」


 スランの問いは、ザンクやアルミも同様の疑問を持っていた。

 

「僕は真実が知りたいだけだよ」と答えるダウト。


 少しの間を置き、スランは尋ねた。


「ダウトは・・・僕達の味方?」


 勇気を出して尋ねたスラン。


「それはどういう意味だい?」


「僕らは・・・僕らは、人殺しの集団にはなりたいくないんだ」


 答えになっていない返事に、ダウトは首を傾げて告げる。


「僕らって、それはスランの願望だろ?」


「願望・・・」


「皆が君と同じ気持ちな訳ないだろ?」


「そ、そんな事は分かって・・ー」


「ないよ!だろ?」


 遮り断言するダウトに対し、首を振るスラン。


「村の人達は何も悪くない。それなのに、僕らは罪の無い人に手を掛けた」


「罪の無いだぁ?」


 黙って聞いていたオルガが尋ねた。


「そうだろ!!村の人達が何をしたって言うんだ?」


「この村で、いや、この星で生きていること事態が罪なんだろうが!」


「ふ、ふざけんなよっ!!」


 スランはオルガの胸ぐらを掴み叫んだ。


「離せや、殺すぞ!?」


 オルガもスランの胸ぐらを掴む。


「お前には人としての感情が無いのか!?」


「知るか!!離さないとマジで殺すぞ!」


 アルミとザンクの二人は立ち上がり、取っ組み合いになっている二人を静止しようとする。


「お、落ち着け二人共!」と宥めるも、互いに手を離さない。


 瞬間、オルガの神獣エンドレスが現れた。


「な、何考えてんだよ!?」と、アルミが叫んだ。



 

 



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矛盾の先にある安寧 双葉 琥珀 @saku07

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