第2章 希望の代償

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 マークは語る。

 それはおぞましくも悲しい地球の現状。


 第5次世界大戦が始まったのは今から45年前の冬であった。

 それに伴い、地球全体の人口は20億まで減少していた。

 時が流れるにつれ、懸念されていた地球温暖化による死亡者数も年々増えていった。

 豊かな生活を送る事の出来ない国民は自ら命を絶っていく。

 相次ぐ貧困にする自殺。

 自殺者数も増加の一途をたどり、ついには全世界に安楽死制度も認められる程となった。

 追い討ちを掛けるかのように、とある国がばら蒔いた未知の細菌が各地で猛威を奮う。

 身体全体に紫色の斑点ができる。

 味覚障害、高熱、それらの後には言語障害になり自我を保てなくなってしまう病である。

 ドグマウイルスと呼ばれる感染症の病気が相次ぎ、死者数も増加。

 免れたのは自宅に引きこもる国民と、ワクチンを打てた政治家や上級国民と呼ばれる者達。

 ワクチンといっても高額な金を積まないと打つ事が出来ない。

 現在の地球の人口は半分以下の10億を割ったとされている。


 人類は徐々に徐々に衰退していた。


 そんなおり、12年程前に三名の宇宙飛行士が宇宙船にて探索中に発見したのが、地球よりも小さな惑星【ホープ】であった。

 後に名付けられたホープの名前は、地球の政治家が勝手に付けた名前である。

 ホープに降り立った三名の宇宙飛行士は衝撃を受けた。

 地球に似た惑星と、太陽系惑星に似た恒星の存在。

 生命活動における大気を十分に含んだ質量を有していた。

 生体元素と呼ばれる生物には無くてはならないものを、惑星ホープはクリアしていた。

 更に驚いたのは、ホープで生きている住人に遭遇した事であった。

 地球に住む人間達と、全くといって遜色無い人体。

 髪の毛や肌色、目や口に耳といったところまで、人間と同じであった。

 文明においては、最低限の衣食住程度で、発展途上な印象を宇宙飛行士達は受けた。

 電気は動くものの、インターネットはおろか、金銭でのやり取りも無く娯楽も無いホープ。

 宇宙飛行士達は帰還すると、それは秘密裏に動き出した。

 度々ホープへ向かい、住人を観察したり、軍事力を測ったり、地球人はホープへの侵略を企てる。


 大人数で向かうのも怪しまれる為、少人数を派遣しつつ地道に動いていた。

 徐々に浮き彫りになる、地球とホープの違い。

 

 発覚したのは、地球とは違い、惑星ホープは地盤が脆いという研究結果であった。

 大規模な自然災害で壊れてしまう可能性もある。

 それでも、ウイルスや温暖化による地球に比べると、ホープへの移住を望んだ。

 地球人の侵略が開始され、戦争に発展すると高確率で地球人側の勝利は分かっていた。

 地道な調査で分かった事だが、ホープに住む全体の人口が1万人程度であると共に、武器という物を所持していないからである。

 そもそもホープにいる住人は武器や戦争といった概念を持ち合わせていないのである。

 戦争の無い平和な惑星、それが地球人側の率直な感想であった。

 だが、ホープは地球の半分以下の小さな惑星である為、戦争を起こし、地割れが起きた時の事を恐れた地球人は別の方法を考える事となった。

 大挙で惑星ホープへ向かうのも難しく、大型の宇宙船を造るのには膨大な時間も必要であった。

 それでも2729年、今から遡ること5年前に地球人はノアの方舟と呼ぶにふさわしい大型宇宙船を完成させていた。


 僅か7年で地球脱出の宇宙船を完成させた。


 後は、ホープに住む邪魔な住人がいなくなる事だけであった。

 ダークマターと呼ばれる未知の物質も発見出来る可能性もある為、出来るだけ自然を残し、ホープに住む人類を根絶やしにするのが地球人の願いであった。


 現在の地球、西暦2734年7月20日、地球に住む人間に限界はきていた。


 


「それで・・・神獣を扱えるあなた達に使命が下されたのです」 

 

 マークとカレンはその時に雇われたと続けた。


「話しの口振りからして、どうして僕達には・・・・いや、僕らだけに神獣がいるのですか?マークさんとカレンさんはいないのですか?」

 

 ばつが悪そうな顔をするマークとカレン。


「い、いや、それは僕達には分からない」


 咄嗟にダウトは答えた。


「嘘ですね?話して下さい!」


 首を振り、マークは困惑した表情を隠せないでいる。


「し、知らないんだ!!わわ、私達は政府に、来るべき時まで・・そう、今の今まで監視をするのが役割だったんだよ!?」


 監視と言ってはいるが、ある種の洗脳によるものである。

 

「それでは、誰に聞いたら分かりますか?」


「そ、それは・・・」


 ダウトの問いに答えが詰まるマーク。

 少年らの親に聞けば分かると、マークは答える訳にはいかなかった。


 鎮まる地下室。

 ここでスランが立ち上がった。


「村の人達は悪くない・・よね?」


「いや・・・それは・・・・・ー」


 遮り、スランは叫ぶ。


「パパは!!村の人達を、この星の人達を宇宙人って言ったよな!?」


 マークは困惑した表情を浮かべている。


「そ、そうだが・・」


「村の人達からしたら、僕達が宇宙人じゃないか!?」


「そ、それは違う!!」


「違わない!!」と食いぎみに答えるスラン。


「お、落ち着くんだスラン!?」


 マークは両手を前に出し立ち上がった。


「僕らは・・・結局何の為に産まれてきたの?」


「そ、それは、その・・・・ー」


 言葉に詰まるマーク。


「・・・・ツムギ」とボソりと呟くと、スランの神獣【ツムギ】が現れた。


 

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