24
地下室が急に明るくなる。
それはダウトが神獣フェニックスを呼んだからだ。
全身に炎を纏ったフェニックスがチャリー夫妻に近づく。
チャリー夫妻に緊張感が走る。
「ばっ、馬鹿な真似はよしなさい!」
「パパとママに・・・いや、マークさんとカレンさんに尋ねたい事があるのですが答えてくれますか?」
他人行儀にダウトは尋ねる。
周囲の者も、冷静なダウトに委ねている形であった。
村の住人を殺害させ、幼少の頃に両親は亡くなったと嘘をつかれ、少年少女は困惑しており、どういった判断をすれば良いのか分からなかった。
「・・・答えるから、食堂に・・ー」
遮り、「ここで答えて下さい」と告げるダウト。
両手を前に出し、マークは言った。
「分かった!答える。答えるから・・神獣をしまってくれ・・・な?」
マークの表情は焦っており、カレンはマークの背後で震えている。
長年暮らしてきて、実の両親のように育てられた少年らだが、今のチャリー夫妻に嫌悪感を抱く者もいる。
「分かりました」
ダウトは冷淡な声音で答え、フェニックスを消した。
「何から・・話そうか・・・そうだな、まずは君達を騙していた事を許してくれ」
そう言ってマークが頭を下げると、続くようにカレンも下げた。
「私達も・・騙したくて嘘をついていた訳じゃないのよ?あなた達の事は本当に自分の息子、娘のように愛していたのよ?」
悲しげな表情でカレンは言ったが、
「そういうのはいいです!僕の質問に答えてくれますか?」
声音変わらずダウトは言った。
それを聞いて、マークは考えていた。
このままでは本当に子供達に殺されてしまうのでないかと感じていた。
(なんとか煙に巻いて、こいつらを言いくるめなくては・・)
「私達も騙されていたのよダウト!!」
泣きそうな表情でカレンが叫んだ。
「いや、ですから、僕達の質問に答えて下さい」とダウトは忠告する。
「わ、分かったわ」
カレンもカレンで演技をしていた。
泣いてもいないのに涙を拭う仕草をする。
チャリー夫妻は共にダウトが厄介だと分かっていた。
(こいつに納得してもらわなければ殺されてしまう)
マークはそう考えている。
入り口横にある部屋の灯りのスイッチを押すマーク。
地下室が明るくなる。
少年少女らの疑心暗鬼に満ちた表情を見て、マークは小さく息を吐いた。
(とにかく、こいつらに分かってもらうよう説得するしかないな)
「ダウト・・何から聞きたいのですか?」
「そうですね。一つずつ行きましょうか。まずは、僕達はどうやってこの村に来た・・・いえ、どういった経路で連れて来られたのですか?」
ダウトの問いに周囲の者はざわつく。
少し間を置いてマークは答える。
「それを分かりやすく説明するには、少しばかり我々の事について話しても良いかな?」
ダウトは頷く。
「私とカレン、そしてあなた達もですが、この星の人間では無いのです」
この発言にざわつく一同。
「どういう事なのパ・・・ー」
習慣でパパと呼ぼうとして、止めるキュラミス。
「私達は地球という星から、この惑星にやって来た人間です」
「ちきゅ・・う?」と首を傾げるメルキィ。
「そう!我々は、この星に住む我々に似た宇宙人を皆殺しにする為に派遣された使徒です!」
周囲の喧騒を他所に、ダウトはマークの視線を凝視する。
(その話しが本当なら、色々と辻褄は合うか・・)
警戒しつつダウトは言った。
「どうしてこの星の住人を殺害しないといけないのですか?」
「それは、地球に今、危機が迫っているからです」
「危機?」
「私達の住む地球は、ドグマウイルスと呼ばれる対策困難なウイルスや残虐非道な戦争、そして何より温暖化により、人類滅亡の窮地に立たされている。我々、地球人はその昔は70億といった人類がいました。それが今や人口9億人まで減少しているのです」
「それが、住人を殺す理由とどう関係があるのですか?」
「2722年・・今からおよそ12年前に、宇宙飛行士がこの星を発見した事から全ては始まりました」
そう告げたと同時に、マークは床に座り、胡座を掻いた。
それから手で、座るよう合図を送る。
少し考え、ダウトも座った。
それに従い、オルガ以外の者も地面に座る運びとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます