12
「はっ、離してっ!?」
「逃げないと約束出来るなら離すよ」
「わ、分かったから!」
首を傾げるダウト。
「逃げないわよ!」
プリシラが答えるとダウトは手を離した。
(に、逃げないで話し合えば・・なんとか・・なるかな?)
プリシラとダウトは特別仲が良かった訳では無いが良好な間柄だった。
「その・・後ろにいる・・・・鳥?は、何なの?」
「何って・・神獣だよ」
「し、しんじゅう?」
分からないといった表情のプリシラ。
「分からなくていいよ」と呟くダウト。
「な、何で、皆を焼いちゃうの?」
「それも・・プリシラは知らなくていいよ」
一呼吸置いてプリシラは尋ねた。
「わ、私も、その鳥・・みたいなのを使って焼いちゃうの?」
ダウトは小さく頷いた。
それに伴い、泣きそうに顔を歪めるプリシラ。
「わ、私・・・ダウトに何か・・その、き、気に障るような事した?」
動揺を隠せないプリシラの声は震えていた。
「そうじゃないよ」と答えるダウト。
「や、やだ!止めて・・お願い!?」
「それは出来ないんだ」と答えるダウト。
「私・・ダウトが好きだったの!・・・・だから・・そんなダウトに・・ー」
突飛な嘘で言葉を選ぶプリシラだが、焦って言葉が出てこない。
「ありがとう」と返すダウト。
その返事に苦笑じみた表情でダウトの腕を握るプリシラ。
「じ、じゃぁ・・・見逃して・・くれ・・ー」
「それは出来ないよ?」
言葉を遮りダウトは言った。
「な、何で?」
「見ていないだろうけど君の両親も、さっき殺してしまったんだよ僕は」
ダウトが言った通り、プリシラの両親は既にダウトの手中により亡くなっていた。
告げられたその言葉にプリシラは手を離す。
現実を受け入れ難いプリシラは、ガクりと地面に両膝をついた。
「う、嘘・・だよ・・・・ね?」
「本当だよ?」
「な、何で?」
「それは・・・今から死にゆく君には関係無いよ」
淡々と語るダウトが怖くてプリシラは泣き出した。
「助けて・・・・・下さい」
フッと小さく笑って答えるダウト。
「どうして敬語なんだい?」
プリシラは大粒の涙を流しながら懇願する。
「私は・・・まだ生きていたい・・です」
「誰だってそうさ?」
「生きた・・・いの!」
「それは出来ない」
「まだ・・人と・・・・素敵な人と出会ってないから、それから・・・結婚・・したいです」
「そう」
低い声で答えるダウトの顔は悲しげであった。
「いろんなとこ・・行きたいのと、私は・・まだ、その・・・したい事がたくさんあるんですっ!」
祈るように手を握るプリシラ。
「だから、そんなのは誰だってそう・・だろ?」
「でも・・だけど、お、お願いします。助けて下さい!」
ポロポロと大粒の涙を流すプリシラ。
「ごめんね」
「あぁー、嫌っ!!死にたくないっ!」
ダウトは悲しげな表情になって片膝をついた。
「死の恐怖に直面した時に、命の尊さが分かる」
小さく呟くダウト。
混乱するプリシラは首をブンブンと振る。
そんなプリシラの肩に手を置き答える。
「僕を恨んでくれても構わないよ」
それでも首を振るプリシラ。
「まだ・・・・誰とも付き合った事無いの!お母さんとお父さんに・・その・・・あの、私はー・・」
「君の両親はもう死んでいるんだよ?」
諭すように告げるダウト。
逼迫した状況にプリシラの呼吸も早くなる。
「こ、子供を産んで・・幸せな家庭を築きたいの」
「それは出来ない・・・ごめんよ?」
と、ダウトが告げた後、フェニックスの口が大きく膨らむ。
「ごめんなざいっ!!許して、許して!!何でもずるっ!」
首を横に振るダウト。
その表情は悲しげであった。
フェニックスの口から火の球が吐き出る。
一直線にプリシラに命中すると一瞬で全身が覆われた。
「ああああーっ!!」
プリシラの悲鳴の後、ダウトはその光景を見る事もなく歩き出した。
「僕を恨んで欲しい」
誰に言うでもなく呟くダウトであった。
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