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 筋トレや勉学に勤しむ子供達は同じような日々を過ごし13歳になっていた。

 子供達が嫌がらない様に適度に休憩と娯楽を与えつつ、成長してゆく10人の子供。


 だが時が経つにつれ節々に疑問に思う子供がいた。

 赤髪のスランは自分達は何でこんな事をしているのだろうかと考えるようになっていた。


 その日の洗濯物を干す当番は、スランとチユ。

 中庭で、洗濯物を干し終えるとスランは縁ぶちに腰掛ける。


 「チユ、ちょっと話そう?」


 スランは仲の良い女の子のチユに伝えた。

 小さく頷き、スランの横に座るチユ。


「勉強したりトレーニングしたり、同じ事の繰り返しで嫌になるよな?」


「しょうがないよ」


「どうして僕達は毎日毎日こんな事をしているんだろう」


「んー、成長・・する為?」


 色素の薄い黒髪を弄りながらチユは自信無さげに答えた。

 チユはいつもビクビクとしている女の子。

 申し訳なさそうに笑う顔を見る度にスランは複雑な気持ちになっていた。


「この村の人達は誰も僕らみたいにしてない」


「それは、その・・・大人だからじゃないかな?」


「子供もいるだろ?」


 スランがそう言うとチユは小さく頷いた。


 少し間を置き、スランは尋ねた。


「チユは子供の頃の記憶ある?」


「今も子供でしょ?」


「そうじゃなくて、その、フリーラインに来る前の記憶」


「無いよ」


 小さく答えるチユに「僕も」とスランは答えた。


「まだ・・ちっちゃかったから」


「だけど、ここに来る前の記憶が全く無いなんてあり得るか?」


 スランがそう言うと、チユは小声で返した。


「分かんないよ」


「そう・・・だよな」


 返した言葉に暫くの沈黙。

 スランはチユに密かに想いを寄せていた。

 毎日、孤児院で会うが、なかなか二人きりになる機会はなくスランはドキドキしていた。

 何か喋らないとと思いつつも焦って何も浮かんでこないスラン。


「きょ、今日は天気良いよな?」

 

「う、うん」


「いや・・まぁ、あれだ!なんつーか、その・・・」


「ふふっ、無理して喋らなくて良いよ?」


 言葉を遮り、クスクスと笑いながらチユは言った。

 自然に笑うその姿に、やっぱり可愛いなと思うスラン。

 

 つかの間のほんわかした空間だったが、


「チユ、こっちに来なさい」


 マークに手招きで呼ばれるチユ。


「はい」


 覇気の無い返事をしチユは向かった。

 それがスランには不満だった。

 去年の今頃から、チユは定期的にマークの部屋に勉強と称して呼び出されていた。

 それをスランは疑っていた。

 たまになら良いかも知れないが週に2回、多い時で4回もマークの部屋に足を運ぶチユ。

 マークとカレンは夫婦別室の為、カレンも二人で何をしているのかは分からないでいる。

 それ以前に根本的には無関心。

 マークとの夫婦生活は年々冷えきっていて、どうでも良いと思っていた。

 体裁を保つ為に、ノックヴィルの住人の前では仲睦まじい夫婦を演じている。


「ま、また勉強会・・ですか?」


 スランが尋ねるとマークはニコりと笑って答えた。


「そうだよ」


「ぼ、僕も参加して良いですか!?」


「いや、スランの学力だと悪いけど邪魔になるんだ。また今度にしよう」


 学力だけの話しであれば確かにチユの方が上である。

 だが、それほどまでに大きな差がついている訳でも無い。

 断られたスランは手を大袈裟に振って返した。


「じゃ、邪魔にならないようにします!」


 その言葉にマークは、ただ笑ってチユの肩に手を置いた。


「行くよ?」


「はい」


 か細い返事をするチユ。


 二人はそのまま裏庭を後にする。


 一体、マークの部屋で何をやっているんだろうと勘ぐると同時に、自身が何も出来ない事に苛立ちを覚えるスラン。

 年を重ねるにつれ、マークの笑った表情が胡散臭く感じるスラン。

 マークに呼ばれるチユの表情はいつも曇っている。

 その顔がスランを不安にさせる。


 施設での暮らしにもどかしさを感じるようになっていた。

 自分がまだ子供だからと、何も出来ない、何も分からないと焦りと苛立ちが募るスラン。


「くそっ!!」


 チユとマークが居なくなった後、一人虚しく叫んだ。

 その様子を木陰からエリザがコソコソと覗いていた。

 悟られないように、近づく事もしない。

 エリザはスランに恋をしていたが誰にも言わず、その想いを隠していた。

 スランがチユを好きであるのを察していたからだ。



 それからも何も変わらず淡々と日常は過ぎて行く___








 






 









 



 


 

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