女王さまはパカかも……知れない

 見える下着を脱いだ女王は、侍女の手伝いでパカとアポには見えない下着を身に付けました。

 侍女が、裸で羞恥に顔を染めてプルプル震えている女王さまを見て言います。

「お似合いです、女王さま」

 笑いをこらえている侍女は、横を向くと「ふっ……垂れ乳か」と、呟きました。

 さらにアポやパカには見えないドレスの袖に腕を通した女王は、裸のまま女王の椅子に顔を真っ赤にして座りました。


 周囲の者たちは、あらかじめ侍女から計画を伝えられているので、笑いをこらえるのに必死です。

 侍女が言いました。

「お似合いですよ女王さま、なんでもそのドレスは着ている者の好みを読み取って。デザインが変わる不思議なドレスだそうです……洗濯をしなくても大丈夫で、寝る時はそのまま寝着に変化するそうなので、着たままお眠りください」

「そ、そうなの」

 適当なところで見える衣服に着替えようと考えていた女王は、完全に見えないドレスと下着を、脱ぐ機会を失いました。


 侍女がさらに女王さまに提案します。

「どうでしょう、女王さまの新しいドレスを、城を出て町の者たちにも、お見せになられては?」

 女王さまは、侍女のとんでもない提案に言葉を失います。

「なっ!?」

「女王さまは、素晴らしいドレスを今は身に付けていらっしゃいます……まさか、見えていないとか?」

「そ、そんなコトは断じてありませんわ……町の者たちにも、この素晴らしいドレスを公開してやりますわ……馬車を用意しなさい」


 実はこの時すでに、町中に裸の女王の噂は、侍女の企みで流布されていました。

 城内を歩いてアポとパカには見えないドレスを披露した女王は、馬車が用意されている場所に来て、一目馬車を見た瞬間──馬車を指差して、さらなる羞恥に震えました。


「なっ? なっ?  なっ? なーっ!」

 そこにあったのは、キラキラ光る丸見えな、ガラス製のカボチャの馬車でした。

 侍女が、意地悪そうな口調で女王に言います。

「どうしましたか? 胸と股間に手を添えて体を隠すような仕種をして……ドレスを着ているのに、そのポーズは奇妙ですよ。早く馬車にお乗りください」

「わかっているわよ!」


 女王を乗せた公開露出ショーの馬車は、町の中を一周します。

 町の人たちは、ヒソヒソ声で女王には聞こえないように。

「痴女だ……露出狂の裸の女王さまだ」と、噂します。

 先回りして、ガラスの馬車で揺られていく女王さまを、物陰から眺めていた侍女は横を向くと小声で。

「ふっ…… 変態痴女の『市中引きまわし』か」

 そう呟きました。


 城にもどってきてからも、女王はアポとパカには見えないドレスとインナーウェアを身に付けたまま。

(なんか……服を着ている気がしない?)

 そう感じながら過ごしました。

 入浴する時も、侍女に手伝ってもらって。

 アポとパカには見えないドレスと下着を、着脱して入浴しました。


 数日が経過したある日──隣の大国の聡明な国王が、ぜひアポとパカには見えないドレスを着ている女王を一目見てみたいと、城に従者を連れてやって来ました。


 女王は、恥ずかしさに小刻みに震えながら、大国の国王と対面しました。

「お、お目にかかれて光栄です」

 女王を頭の先から、足の先まで何度も往復して眺め、首をかしげた聡明な国王が言いました。

「失礼だが……儂には、どう見ても女王が、裸で立っているようにしか見えないのだが?」

「や、やっぱり! 裸だった……きゃあぁぁぁ!」

 羞恥の悲鳴を発して駆け出した女王は、自分の部屋に飛び込むと扉に鍵をかけて、一生部屋から出てきませんでした。


 その後──なぜか、隣国諸国では。

『全裸の王さま』

『全裸の王子さま』

『全裸の王女さま』

『全裸の妃』

『全裸の国王』

『全裸の皇女』などがブームのように次々と出没しました。


 ちなみに裸の女王が、お隠れになった部屋は、開かずの『天岩戸あまのいわと部屋』と呼ばれ、今も城の観光名所となっています。


〔裸の女王さま〕~おわり~

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