第6話 人に触れられるのって…②
改めて、ボクは許しをもらった。
そして、頭まで景一に撫でてもらった。
お母さんにしかボクは撫でられてきてなかったけど、他の人にもされるのはこんなに心地よいものなのだと新発見である。
ここまでボクの心を落ち着かせられるのだと。でもそれは、景一だからである。
本当に景一は不思議なやつだ。
正直告られてきてもOKを出せる自信がなんとなくある。
一緒にいて楽しいし、気軽に話せるし、自分の犯してしまった罪をも包み込んで一緒に解決してくれる。
もう、
ボクは大きな決断を下す!
「もし、ボクのことを女の子って気づいてくれた時、ボクは景一に告白する!それまで絶対誰にもボクのことを口外させない!できた友達だけに秘密にしてもらう!」
こうすることにする。結局ボクが一目惚れ的なことになっているけど、それでもボクはいい気がする。
人の優しさに触れることってこんなにも自分の心を動かすものなのだと知った。
そんな決意を自分の中でしていると、
___キーンコンカーンコン
チャイムが鳴る。
「授業終わっちゃったな、あとで山本先生に報告しにいこか!」
「そうだね。いこうか。」
グランドへとボク達は飛び出す。
「松崎!お前大丈夫か!?クラスみんな心配してたぞ。佐々野も付き添いご苦労様。」
「すみませんね、先生。初回から授業しっかりと出れなくて。」
「ボクからもすみません。ボクの誤ったコントロールで友達を怪我させてしまって、そのせいで出席できなくて。」
「なーにいってるんだお前らは。体育なんぞ怪我はつきもんだろ。次回からしっかり注意して、安全に配慮して行うようにな。大した怪我もなさそうだったそうだし、一件落着だな。」
「先生…!ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「みんなもう解散したから、お前らも着替えに行きなさい。」
『はい!!』
ボク達はグランドから教室へと向かう。
「うっし〜俺らも着替えるか!」
「そうだね、早く着替えないと次の授業に遅れるからね。」
ボク達はトイレの前まで歩いてきた。
「あっと俺ちょっとトイレやわ〜。お前もトイレ行こうぜ、連れションじゃ。」
「えぇっ!いやいいよボクは…」
「まぁ出すもんは出しときーな、ほらほら、いくぞー。」
ボクを連れて男子トイレへと連れて行かされる。
「あれ?おまえションベンほんまにせーへんのか?」
「あっ…!いや…ボクは座ってやる派…なんだよ!」
「へー伊織ってなんか変わってるな。まぁでも座り込んでやるほうが落ち着くーっみたいなのは聞いたことあるわ。」
「そ…そう!それだよそれ!じゃあボク個室入るから、済ませたなら勝手に着替えに行ってて…」
「おう!了解した!」
_________
あっぶな〜〜〜〜〜!!!!!
え!?
なんでボクが男子トイレにいるんだよ!?
こんなことバレたら本当に洒落にならない!
というか早く景一トイレ終わってよ!そんな…景一のモノ…みちゃったら恥ずかしいよぉ…。
ボクは本当に焦っている。と、
「よーっし、ほんなら俺先帰って着替えとくわぁ〜んじゃぁ〜。」
「まっ…またね。」
隠し通せた安堵で、ドアにもたれかかる。
いやしかし、ここで安心してはいられない。
早くここを抜け出して、女子トイレに戻らないと。着替えを置いてきたままだからそこで着替えるしかないのだ。
ボクは音を殺しながらドアを開ける。
幸いにも誰もいなかった。
ボクは素早く女子トイレ駆け込む。
「任務完了〜!怖かった本当に。景一以外のみんなは大体ボクが女の子っていうことは知っているからね。」
鈍感な景一め。バカっ。
とりあえずボクは着替えを済ませて出ようと…するが、
「伊織、お前何してるんや?」
「えっ…っとこれは…」
これはかなりまずい。どうか、神様!ここでバレるのは本当にやばい!
「お前…そんな趣味あったんか…!」
そっちか〜!いや安心はするけど。
「ちがうよ!た…ただ服が飛んでいったから取りに行ってたんだよ。」
これは苦しい言い訳だったか…。
「お…おうそうなんか。手から滑り落ちることもまぁ多々あるしな。伊織、でも覗こうとはしてないよな?笑笑」
いやボク女子なんですよ!??
くそぅ、こういうときにこれは不便だな。
「みないよ!てかなんでここに景一がいるんだよ。」
「いやー着替えるのがまぁまぁ早かったからここで待っていようかなと。」
「ふ…ふーん、そうなんだ。」
幸いにもギリバレてはいなさそうだ。
「よし!着替えも終わったことやし、教室いくぞー。」
「おっけい。」
この1時間と少しの間でボクは、どれだけハラハラしないといけないんだよ!
でもここでバラしてしまうのは少し面白みがないし、トイレの前は流石にやばい。
頑張って隠しつつも、少しそういうところも見せていこうかなと決意した。
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