第7話 やっとの思いの昼飯


_______キーンコンカーンコン


「っしゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!」


「いやーやっと昼休憩だね。」


「ほんま授業ってしんどいわぁ〜ねむねむ。」


「本当に景一ってどんだけ寝るんだよ。」


「さぁな?まぁ腹も減ったし、飯食うか!」


「そうだね、食べようか。」


昼休憩。

それは昼飯を食う時間であり、時間が余ると遊んだり話したり…となかなか楽しいものである。

そして俺たちは3時間の苦痛を乗り越えて、やっとの思いで掴み取ったものである。いや、昼休憩は逃げないけどね。


「さぁさぁ、今日の昼はっと…おぉ!唐揚げとは!これは嬉しい限りだなぁ。」


俺は弁当箱の蓋を開ける。


「景一は肉系が好きなのか?」


「死ぬほど好きやぞ。マジで。」


と、言うとなぜか顔を赤らめている伊織がそこにいる。


「あれ?俺そんな恥ずかしいこと言った?笑笑」


「あぁ…いや気にしなくていいよ。」


「お、おうそうか。で伊織は肉好きなんか?」


「かなり好き…だよ。」


伊織がより一層顔を赤くする。なんでや。

なんか肉の話を抜いたら告白してされてるみたいで気恥ずかしいな。だからかな。


「へーやっぱええよなぁ…っで伊織の今日の昼飯どんなんなん?」


「あぁ、ボクのはこれだよ。」


伊織が弁当を見せてくれる。

そこにはなんと…


「っと…おお!!!オムライス!!!!」


「声がでかいヨォ。うん…オムライスだよ。」


「うわぁー!めちゃくちゃうまそうやなぁー!」


俺は目を光らせて見る。正直物凄く食べたい。オムライスは俺の大好物の一つなのだ。


っと…まてよ。あの勝負…!


「てかよ!俺らまだ勝負の決着ついてなくてさ、互いの弁当食うんやなかった!?」


「あっ!そうだったな!よし、景一にも分けて差し上げよう。」


「感謝する、伊織。」


「とりあえず自分の弁当いただいてからするか!」


「そうだな!景一よ。ではせーの…!」


『いただきま〜す!』


俺らはその掛け声と同時に、自分たちの弁当へと箸を伸ばす。


「いやぁ〜唐揚げうめぇわ〜!最高たまらん!」


「オムライスうっまぁ〜やっぱりケチャップにかぎるね。」


「いやーマジそれうまそうやわ〜!」


「でしょ。景一の唐揚げもいいよね〜。もう食べちゃおっかな〜〜。」


「そうやろ!刮目せよ!我が家庭の唐揚g」


「いっただっきまーす。あーむっ。」


「っ…ておい!お前勝手に人のもん盗んだな!?」


おいおい早いぜ、やってんな伊織。


「うめぇ〜〜〜やっぱり唐揚げは最高だな!」


「そ…そうやろ!肉こそ正義や。」


「ってお前俺の肉食うたお返しじゃ。スプーン貸せ。」


「エッッ!?な…なんで…」


「だってスプーンの方が食いやすいやん。量も多くすくえるしな!笑笑」


「い…いや…なんかその…同じスプーン使うのは…なんというか…」


「そんなん気にしてたら死ぬぜ?もしかして潔癖症?」


「いやそうじゃないんだけど…カァァ//」


「ほんならええな、んじゃ、いただきまーす!」


俺は伊織からスプーンを貸してもらい、そこいっぱいにオムライスを乗っけて口に運ぶ。


「んんーーん!!!うめぇ!やっぱ最高やな!オムライスってやつは!」


「あ…あっ…そう!?そうでしょ!?これボクが朝からつくった…んだよ…。」


「おおまじか!伊織お前すげぇな!あんな時間ねぇ朝にこんなうめぇもんつくれるんやて。ってことはおれは伊織の料理をいただかせてもらってるんやな!最高!」


大満足。人の手作りオムライスを食うのが久しぶりだったもので、すごく美味しく感じた。

うますぎて

癒される俺の心、浄化されゆく俺の魂…


_____________


「ボ…ボクの料理おいしいだろ…!」


「最高!ありがとな!マジで伊織最高!」


「そ…そうか…そうだな!エッヘン!」


ボク達は勢いで弁当を食べ終わる。




…っと実はとても恥ずかしくて、スプーンを使うのが意識が飛びそうになるほど緊張しているのだ。


だって…


間接キスじゃないかぁぁぁぁ!!!!


ボクがあの時から意識しだしたせいか、些細なことでもすごく敏感に反応してしまう。


でも間接的にキス…をしているのだ!これは照れで済むものじゃない…!


まさか、景一が、ボクのスプーンを躊躇なく使うとは思ってもいなかった…!

だからこそ余計急すぎて心臓が止まりそうだった。


そして…今日に限ってボクが弁当を作らないといけなかった…。


よって上述より、今日ボクの手料理を景一が告知ほぼなしに食べたということになる。


Q.E.D.....


んなわけないだろぉぉおおおぉおぉぉ!

なにが証明終了だよ、何の証明してるんだよ!


もう…ボクの弱みがどんどん露わになっていくじゃないか…。


ボクは決めた!


どうにかして景一の弱みを握って優越感に浸る!


今日でボクの弱みが2、3個も発見されている…!これはボクにとって緊急事態である。


たかがスプーン、されどスプーン。


「でも…嬉しいな…おいしいって言ってくれて。」


ほんとうに素直に、自分の作ったものに喜んでくれるとこんなに嬉しいだとは知らなかった。

顔がすごく綻んでいるが修復ほぼ不可能。

頑張って隠し通す。


「まぁ俺はなにも包み隠さず言う男だからな!俺の口から出るのは全部本心やぞ。」


「そう…嬉しいなほんと。」


「おうよ!」


「てかこんなことしてたらもうチャイムなるやんけよ!まずいなこりゃ。遊ぶ時間なかったぜ。」


よし、ボクも心を切り替えて勉強タイムといきますか。


「よし気合入れて午後の授業に取り組もうか。」


「せやな!エネルギー満タンの俺なら寝ずにすみ…そ…う……zzz」


「寝るなーー!!景一おきろぉー!!!!」


ボクはなんとか景一を起こして、授業に取り組む。景一もなんとかやる気が出てきたみたいで、なんとか頑張っている。


暖かな日差しがボクたちを照らし、輝いている。

まだ、春は始まったばかり。


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