第1.5話 出会い
「初日からすげえやついたなぁ。すぐ友達…かぁ…悪くないね。」
ボクは高校というものに感動する。
入学初日から友達ができてしまったよ。
「世の中にはコミュ力お化けとはいるものだなぁ。」
ボク、こと佐々野伊織は今日から高校生。
中学のみんなからは美少年と言われ、なぜか勘違いされ中学時代はすごいモテた…のだが、ボクは女だよ!!!
でも確かに自分を鏡で見てみるとボーイッシュな感じもないこともないこともないこともない。
中学のときはなぜか女子にモテモテであって、でも一応陸上部では1番に足が速かったり、しかしながら勉強はあまりできなかったり…。
今日はまずコンビニで飲み物でも買って学校に行こうかなと思っていたのだが、レジ待機中に、
「あっすみません、もしかして俺と同じ学校の人ですか?」
ボクはびっくりした。突然声をかけてくるものだから。
自分は少し他人と喋るのは慣れていなかった。でもこの人ならなぜか落ち着いて話せる。
そこから、その人は松崎景一というらしく、ここまでの入学の話をした。
「そうなんや!俺は中学時代めちゃ遊んでたな…笑笑。」
普通にすごい。遊んでただけならこの学校にはそう入学できないから。
ボクは深く感心しつつも少し自分を非難した。
(やっぱり勉強はあまり得意ではないなぁボク。)
なんやかんや喋っていると松崎のレジが回ってきたのでそこでお別れした。
「なんか…入学初日の朝でも話してくれる人もいるんだなぁ。なぜか喋りやすかったな。」
ボクは安心しながら気楽に話せる仲の友達がほしいのだ。
「もしかしたら友達になれるかもなぁ。」
自分にもレジが回ってきたので会計を済ませた。気持ちが高揚して走りたい気分だったのでダッシュで学校へと向かった。
__________
ボクは学校に到着する。そして周りを見渡すが…まだ松崎の姿はない。1人じゃなんとなく心細い。人がたくさんいるところに自分1人佇んでいるこの状況がなにとなく恥ずかしい。
と、ちらちら周りを見渡す…と
「おお!佐々野!お前もついてたんやな!」
聞き覚えのある関西弁がきこえてくる。振り向くと、そこには松崎の姿が。
「そうだよ。1人じゃ少し心細かったからボク佐々野のこと探してた笑笑。」
本心である。少し頼れる存在がほしかった。
なんてったってボクは女の子なんだからね?
「なんか乙女なとこあるなぁ〜。苗字で呼び合うのも堅苦しいから、下の名前で呼び合うか!伊織!」
突然の下の名前宣言にボクは驚く。なにか最初から馴れ馴れしい気もするが、嫌な気持ちにはならなかった。
「そうだね!これからよろしく!景一!」
自然と笑顔ができている。なにとなく心地よい。というか乙女チックって、ボクは女の子だよ!
「もうなんか俺ら友達みたいなもんやな!ちょっと強引かもやけど。まぁやから、一緒のクラスがええなぁ。話しやすいしな。」
景一となら、なんとなくこれから先楽しくやっていけそうな感じがする。
勢いで、
「一緒のクラスやったらもう勝ちだろうにな。もうボク達友達だもんね!」
僕は最高の気分だ。
友達になった。
____________
友達になったところで、クラス分け発表が始まる。正直景一とは同じクラスがいい。なんというか、全てをひっくるめて解決してくれそうな、安心感というか包容力があるというか。一緒にいたいなっていう気持ちが芽生える。
「ンー俺は4組かぁ…って!伊織おるやんけ!」
すごく嬉しい。ぼっちは不確定になる。
「おー、ほんとだ!一緒だね。」
「イヤー嬉しいもんだね!もう俺ら親友やな!?笑笑」
少し早い気もするが、ボクの口からは、
「早いな笑笑。でも親友はありだね。よし!ボク達親友だ!!!」
と、素直に溢れる。嬉しい気持ちが心の底から湧き上がってくるのを感じる。
とはいえまだボク達、この学校のことをほとんど知らない。
「っま、とりあえず4組向かうか!って…場所どこやねーーーん!!!!」
案の定の反応。ボクも知らないので協力して探そう。
「ボク達まだこの学校のこと全然知らないから、少しずつ勉強していきますか。」
「よし、んなら探すぞぉ!」
「おーーーー!」
小さい頃を思い出されるような、子ども心が揺さぶられるような"探検"が始まる。
のだが、5分足らずで自分たちの教室を見つけてしまう。なんだろう、もう少し探していたかったけど。
でも教室は見つかったことだし、喜び合う。
『っしゃぁぁぁぁぁあああああ!!!』
ふと気づいたのだが、ボク…男と思われてね?
女の子だったらこんな馴れ馴れしくしないだろう…アレ?ここでも勘違いされるのか!!
なんか…もう言い出しにくい気持ちが心の中で渦巻く。せっかくできた友達に引かれるかもしれない不安に駆られる。
ボクはとりあえず隠すことにした。
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