6 瀕死のクラリスポート
エリカ達は何度か異相空間ワープを繰り返した後、最後にはどうしても機雷原を通過するしかなかった。
エリカとカイトで、ひたすら機雷を撃ち落として進路を開くことにした。
今度はシャトルがないので少し気楽だったが、次々と迫る機雷にエリカたちは参っていた。
「ねえ、この前より多くない。なかなか進めない」
「確かに、シャトルを繋いでなくてよかった」
進む速度はかなり制限されている。
その横でミルフィーユはキーボードを叩いていたが、「よしっ! 」と小声で言うとコンピューターを操作する手をとめ、いそがしそうにしているエリカ達に向かって
「機雷ですけど。べつに撃ち落とさなくても、こうすれば」
ミルフィーユがボタンを押すと、スカーレットルナの前の機雷が次々と連鎖して自爆していく。
エリカ達は手を止めて、呆然とその状況を見つめた。
「ど……どうしたの」
「はい、機雷に自爆する指令を送りこみました」
「うそー! この前は、あんなに苦労して突破したのに」
「苦労したって………まさか、こんな多くの機雷を撃ち落としていたのですか」
呆れた表情のミルフィーユに、エリカとカイトが力なくうなずくと
「それはそれで、すごいですけど……ご苦労さまです。でも、爆破司令は高度なハッキング技術ですので難しいでしょうが、これほど優秀なAIなら機雷を自動補足して撃ち落としてくれますよ」
そう言うと、少しキーボードを叩くと、迫る機雷を次々とスカーレット・ルナの小銃が自動補足して撃ち落とし、難なく機雷地帯を抜けていく。
カイトは、頭に手を組んで苦笑いしながら
「これなら、寝ても行けるな」
エリカも感心して言葉がなく、ミルフィーユを凝視していると、その視線に何か不気味なものを感じたミルフィーユは
「え……エリカさん………なにか……」
すると、エリカはミルフィーユにとびついて。
「ミルフィーユちゃん最強! 大好き! それに人形みたいで、お部屋に飾りたーい」
そう言って、頬を摺り寄せた。
「ちょっと…エリカさん! 」
ミルフィーユに抱きついているエリカに、ホログラムで実態のないルナも
「あーエリカだけずるーい、私もすりすりしたーい」
「じゃあ、今度、人間に戻ったらね」
するとカイトがあきれたように
「エリねぇいい加減にしなよ。ミルフィーユちゃんも、嫌がってるぞ」
「いいじゃん、一度この白い肌にすりすりしたかったんだ、カイトもしてみたら気持いいよ」
「ば…ばか言うな! だいたい、こんなときに」
慌てるカイトを。エリカは横目で見たあと
「ミルフィーユちゃんはどう、カイトにすりすりは」
「カイトさんなら………って!……あっ うそ、うそです、そんなこと」
赤くなるミルフィーユを、エリカはおもしろそうに見つめた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
その頃、クラリスポートでは最後の防御体制を組んでいた。
残る戦闘機もわずかで、対空ビーム砲も十門程度残存するだけだった。
艦隊に対しては、ほとんど無防備な状況といえる。
敵は防御能力を探るため威力偵察的に、ドローン(無人戦闘機)で攻撃をしかけてくるが、その小規模の攻撃にすら、クラリスポートは精一杯の応戦だった。
既にステーションの大部分が破壊され、兵士たちの疲労も限界だった。負傷者も多数でている。
司令官は覚悟を決めなくてはいけないと考えていた。
これまでにない多数の敵が迫り、とても次の攻撃を持ちこたえることはできない。
最後にエリカの持ってきたジャガイモを湯がいたものが振舞われ、兵士も最後の食事ではないかと感じている。
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