12 人間電卓ミルフィーユ
エリカたちは近くのオープンカフェに席をとり、一応自己紹介をしたあと。
「さて、ミルフィーユちゃんは。どうして私たちの船に乗りたいの」
ミルフィーユは、自分がラスタリア皇国のコンピュータオペレータで、スカーレットルナのコンピューターに魅せられたことを話した。
しかし自分が、ガルーダ王の娘で、あのレオン・リーの妹であることは伏せている。
「ごめんね、やっぱり乗せるわけにいかないわ。
別に私たち、連合に与しているわけではないから気にすることないけど。あなたはラスタリア皇国の脱走者だしね」
エリカとしても素性の知れない脱走者を簡単に乗せるわけにいかない。しかし、物腰は柔らかくなった。
そんな話をしている時、後ろから話を割ってエリカを呼ぶ男の声がした。
ふりむくと白いガウンをきた商人が立っている
「あら、ミネス商会の方でしたっけ」
「やあ、エリカさん、探しましたよ。さっきの品物ですけど」
エリカは、クラリスポートの難民からもらった品物を売りに出して、難民たちの食費などの足しにしている。
「それで………いくらで買い取ってくれるの」
「はい、あの品物ですね。一個が2,315ギルでそれが223個、それに諸経費を35.6パーセント載せて………さらに、おまけして65万ギルでどうでしょうか」
商人は、なぜか複雑な計算を言う。エリカはわかったようにうなずくと
「うん、いいのじゃない。しかも、おまけしてくれるなら」
「まいど、有難うございます」
商人は笑顔で答えると、横で聞いていたミルフィーユが
「おじさん、計算が違いますよ。答えは70万3,052.1ギルじゃないですか」
商人は冷や汗をかいて
「おじょうちゃん、何を言ってるんだい」
すると、エリカはその商人の帳面と電卓をとりあげ計算すると、ミルフィーユの答えが合っていた。
商人はとぼけて
「あれ、入力ミスだったみたいだね……ごめん、ごめん、お譲ちゃんすごいね、諸経費まで計算に入れたのかい」
エリカは上目遣いに、冷や汗をかく商人をにらんだあと、急に思いたったように立ち上がり
「ひょっとして………ねえ、ミルフィーユちゃん来て! 」
そう言うと、エリカはむりやりミルフィーユをひきつれて、雑踏に消えていった。
カイトとルナは、いつものことと思いながら、そのまま待つと。しばらくしてエリカは息を荒らげて帰ってきた。
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「あいつら、いい加減な計算しやがって。もうちょっとで、ぼったくられるとこだった」
横で聞いていたカイトは
「いい加減なエリねぇもいけないぜ。ぼったくられエリカってよく言われてるしな、俺がついてるときはいいけど。だいたい電卓で計算したらどうだ」
「だって……信用してたし。でも、すごいねミルフィーユちゃん、暗算得意なんだ」
「暗算なんて、所詮ツールです」
ミルフィーユは微笑んで言うと。エリカはミルフィーユの肩をだいて
「よし、決めた! おいしそうな名前のミルフィーユちゃんを採用しよう」
カイトとルナはあきれて
「え……エリねぇ」
「エリカ。いいの」
「もちろん。人間電卓ミルフィーユちゃんよ、人間宇宙船のルナさんと仲良く出来るじゃない」
「でもさっき、脱走者はとか、素性はとかって…」
カイトがあきれて言うと。
「私たち運送屋にその人の素性なんて関係ある? 単に荷物を運ぶだけじゃない」
さっきと全く話が違うエリカに、ルナとカイトはやれやれといった感じだった、ミルフィーユは鈴玉のような瞳で笑顔になっている。
ただし、最後にエリカは
「でも、お父さん、お母さんの許しは得ること」
するとミルフィーユは
「両親じゃなくて、兄でもいいですか」
「まあ、肉親だったらいいでしょ」
「わかりました、メールしますから返事がきたらお見せします」
エリカたちは承諾し、とりあえずミルフィーユと一緒に宿舎に向かった。
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