6 宿敵
エリカは、右に左にジャブのように攻撃してくるレオン・リーの戦闘機を、なんとかかわしながらも反撃を試みたが効果がない。
そこでエリカは初めて恐怖をいだいた。
(このままだと、いずれやられる。やられるってことは、死ぬかもしれない)
「エリねぇ! 攻撃パターンが読れている、変化をつけるんだ」
「……って、言われても。戦闘は素人なのよ! 」
エリカはどうしようもない、いらだちと恐怖に声が大きくなっている。
「戦闘は素人だけど、喧嘩はプロ級だろ」
カイトの言葉にエリカは、はっ、とした。
「そうか、喧嘩だよね……よーし喧嘩なら。みてなさい! 」
エリカの眼が輝いた。
突然エリカは、追いかけてくるレオン・リーを出来るだけ高速で引き離し始めた。レオン・リーも追いかけるが、そのスピードはレオン・リーの戦闘機をはるかに凌駕し、一気に引き離していく。レオン・リーは自分の戦闘機の性能に、苛立しさを禁じ得ない。
「逃げるつもりか! 」
くやしいが、そう言うしかない。
エリカは十分に引き離したあと急旋回し、前方に防御シールドを集中して正面からレオン・リーに向かった。カイトは驚いて
「何をするつもりだ!」
「喧嘩はね。度胸とはったりよ! 弱いなら、吼えればいいのよ!」
エリカは、正面衝突するコースでレオン・リーに突っ込んでいく。
レオン・リーも「度胸だめしのつもりか」と軌道をかえない。次第に距離が縮み、カイトが相手との間合いをレーダーで読む
「距離二万! 相対速度、時速七万! あぶない! 」
エリカの手に汗が滲んでくる、レオン・リーも同じだ。
エリカは無論、正面衝突する気はない。
前方に集中した防御シールドで、お互い正面からの攻撃は通用しないため、相手がわずかな回避行動をとった瞬間をねらうつもりだった。しかし、レオン・リーも避けない。
「うそ、逃げないの! 」
レオン・リーも、同じことを考えていた、
「右、左、どちらに避ける。同じ方向に避けたら衝突する」
両機の距離が急速に近づく。さらにカイトが距離を読む
「百.五十、二十、十! エリねぇ! 」
カイトが真っ青な顔で叫んだ。ルナも震えている。
エリカとレオン・リーは同時に反応した。
それは、お互い申し合わせたようなタイミングと方向だった。
エリカは上、レオン・リーは下を、両機はわずか数センチの間隔で交差した。
交差する瞬間、カイトはビーム砲を放とうと思ったが、時速七万キロの速度のなか、わずか数センチで交差する二人の神業の前に無粋なことはやめ、エリカも発砲の指示をしないこともあり、手を止めた。
ルナは失神寸前の様子だ。エリカは、冷や汗をぬぐうとともに。
(あいつ……喧嘩も慣れてる)
エリカは思惑がはずれ歯噛みした。交差したあと再び旋回し始めたが、レオン・リーはそのまま離れていく。
そのとき、レオン・リーから通信がはいった。
『チキンファイトをする気はない、私は喧嘩をしにきたのではない。しかし、おもしろかったぞ、その腕ならミサイルを寸前でよける芸当ができるはずだ。ところで残念ながら貴様に艦隊がやられたため撤退することになった、今度会ったときは容赦しない』
敵に通信するとは非常識だが、彼にはかなりの余裕があることと、さらに相手を探る意図もあるようだ。
「なによ、こっちこそ、今度はギタギタにしてやるわ」
「エリねぇ! 」
不用意に返事をするエリカをカイトが諫めたが遅かった。エリカの声にレオン・リーは驚いた
『お前は………女なのか』
「女で悪かったわね! 」
『声を聞くと若そうだが、こんなところに居ては嫁のもらい手がないぞ、家で花嫁修業でもしていたらどうかね。というか、嫁の貰い手がないので、ここにいるのかな』
レオン・リーの毒舌に、エリカの眉間が引きつる。カイトは、勝手にしろと言った感じだ
「なによ、ラスタリアの犬め! どうせ、あんたも女に相手にされないから、こんなところで戦ってるんでしょ。今度あったら糞みそにしてやる! 」
『ははは、レディーがそんな言葉遣いするものではないですよ。まあ、たのしみにしているよ』
そして、無線が切れた
「あいつ何よ、セクハラじゃない。なんか上から目線の覚めた話ぶり、むかつく! あーいうのって、裏では絶対変態よ」
エリカは拳をにぎって、怒りを露にしていた。それはレオン・リーにからかわれたことのほか、勝てなかった苛立ちもある。
その後、艦隊は撤退を始めた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
レオン・リーが帰還すると、ミルフィーユの姿がなかった。
部屋をたずねると、あの白銀の戦闘艇のことが書かれた手紙が置いてあり、ミルフィーユは失踪していた。
レオン・リーは手紙を読み終えると、わずかに笑みをうかべ捜索の指示も出さず自室にもどり。
スカーレットルナの機長が女であることなど、今回の戦闘で知り得た情報を、ほとんどラスタリア皇国に報告しなかった。
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