6日目(火曜日)

第25話 「死にたい」とつぶやく皐月さんとボチボチな未亜。そして、僕。

 翌日の朝。


 僕は陽太や瑞奈とでなく、未亜と住宅街の中を歩いていた。


「いやー、急にごめんねー」


「まあ、その、何となく想像はついていたんだけど」


 僕は口にするなり、申し訳なさそうな表情をする未亜を見る。


「朝、皐月からMINEが来て、『死にたい』とかつぶやいてたからねー」


「それ、大丈夫なの?」


「まあ、そういうネガティブモードもあるから、大丈夫大丈夫。多分」


「多分って……」


 僕は言うとともに、自分が持っているスマホへ視線を移す。


 先ほどまで僕は、陽太とMINEでやり取りをしていた。


― ごめん。今日は瑞奈と先行っててもらえればと ―


― 急だね ―


― もしかして、富永さんと? ―


― まあ、そうだね ―


― そうか ―


― なら、後で詳しいこと教えてもらえればいいかな。 ―


― 昨日の件も含めてね ―


 陽太は明らかに、僕と未亜の関係を知りたがっている感じだった。まあ、先週から色々とあったので、逆に無関心の方が不思議なくらいだろう。


― わかった ―


― 後だけど ―


― 瑞奈がなぜかご機嫌斜めなんだよね ―


 陽太の報告はなくても、僕は充分わかっていた。


 なぜなら、陽太に遅れて、瑞奈からもメッセージを受け取っていたからだ。


― 先輩の行いは死に値します ―


― 後でじっくりと話を聞かせてもらいます ―


 瑞奈はご立腹のようだ。よほど、嫌いな未亜と一緒にいることを快く思っていないのだろう。


 僕はとりあえず、「わかった」と返すなり、ため息をついた。


「どうしたのー? 元気ないね、和希」


「まあ、色々と」


「ふーん。まあ、和希も大変なんだねー」


「そう言う未亜は?」


「あたし?」


 未亜は自分の顔を指さし、首を傾げる。


「うーん、どうかなー。まあ、ボチボチって感じかなー」


「ボチボチなんだ」


「それって、どういう意味かなー?」


 僕の返事が気に食わなかったのか、未亜が頬を膨らませてくる。


 対して僕は慌てて、片手を何回も横に振る。


「いや、未亜って、見てると、何事も前向きに捉えてるような、その、そういう風な感じがするから、ボチボチっていうのは意外だなあって」


「へえー」


 僕の言葉に対して、未亜は訝しげな視線を送ってくる。


「まあ、あたしはあたしで色々とあるってことかなー」


「色々?」


「そう。色々とねー」


 未亜は声をこぼすと、おもむろにスマホを取り出す。


「と、和希と雑談してたら、皐月だ」


「何て?」


「えっとねー、『和希くんには申し訳なくて、会う顔がない』だってー」


「それって、僕が行って大丈夫?」


「まあ、そこらへんは上手くやれば何とかねー」


「何とかって……」


 僕は口にしつつ、不安を抱かずにはいられなかった。

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