第12話 モヤっとした気持ちを抱えてしまう僕
夕方。
僕は家に帰るなり、自分の部屋にあるベッドで横になった。
照明がついていない天井を眺めつつ、僕は感慨にふけってみる。
「好きな人、か……」
先ほどのカフェ店内にて、瑞奈に聞かれたことを思い出す。
僕はウソをついた。
本当は好きな人がいる。けど、どうせ叶いっこないと半ば諦めていた。今日のある瞬間までは。
「高村さん、陽太に振られてるんだ……」
僕はつぶやきつつ、生徒会室で会った高村さんの姿が脳裏に浮かんでくる。
まさか、片想いをしていた高村さんの恋を手伝うような日が来るとは想像すらしなかった。
「まあ、もう一度陽太に告っても、また断られるだけだろうな」
僕は寝返りを打ちつつ、スマホを取り出し、画面へ目を凝らす。
MINEのアプリを開き、僕は陽太とのやり取りをしていた画面を映す。
内容としては、たわいもないネット動画の話題とかだ。後はまあ、瑞奈のこととか。
「考えてみれば、何で、陽太は高村さんに告られたことを教えてくれなかったんだろう」
当時は、女子から告られたので、どうしようかと相談に乗ったくらいだ。
まあ、その時の僕は確か、「自分の気持ちに正直に答えれば」とか助言をした。今考えれば、当たり障りもないものだけど、結果として、陽太は相手の女子、高村さんを振ったのだ。
だから、高村さんに恨まれても、致し方ないかもしれない。とはいえ、僕は断ればいいとか、ぞんざいなことを伝えてはいないのだ。
もし、相手が高村さんと知ったら、僕はどうしただろうか。
「いや、過去のこととか、今更考えても、意味ないよね」
僕はスマホを枕元に置き、改めて天井を見つめる。
「まさか、陽太は僕が高村さんに片想いを知っていて、あえて言わなかった?」
考えてみるも、結局は憶測の域を出ないので、後は本人に問いただすしかない。
「そもそも、陽太の方こそ、誰か好きな人とかいるんだっけ?」
僕は新たな疑問を口にしてるも、答えは出ない。
結局、僕はその日、モヤっとした気持ちを抱えたまま、過ごすことになった。
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