第3話 富永さんの用件と僕のお昼

 さて、昼休み。


 僕は学食にあるパン売り場にいた。


「すみません、コロッケパンと焼きそばパン、ひとつずつください」


「あいよ」


 学食のおばさんは言いつつ、「三百円ね」と告げてくるので、小銭を渡す。引き換えに頼んだパンをラップで包まれた形で渡され、僕は場を後にしようとする。


「今日はコーヒー牛乳でも買うか」


「へえー。コロッケと焼きそばなんて、濃い組み合わせだねー」


 不意に横から声をかけられ、振り向けば、一人の女子が僕のそばに歩み寄ってきていた。


 昼時の学食内が生徒らで込み合っている中、ポニーテールの彼女は変に何回もうなずく。


「あたしも同じの買おうっかなー」


「いや、無理だと思うけど。それにもう売り切れそうだし」


 僕が口にすれば、彼女はパン売り場の方へ視線をやり、悲しげな表情を浮かべる。


「やっぱり、チャイムが鳴ったら、すぐ行かないとダメかー。まあ、わかってはいたけど、かといって、学食で済ませるのも何かねー」


 彼女のつぶやきに、僕は尋ねる。


「それで」


「うん? 何かな?」


「何か用でも?」


 僕が問いかければ。


 クラスメイトの富永未亜は「まあ、そんなところかなー」と口にする。女子でも運動神経抜群で、身長もバレー部に誘われたほどの高身長だからか、存在感が際立つ。後、胸の膨らみとか。


「あっ、長井くん。今、あたしの胸のところを見てたでしょ?」


「いや、その、別に」


「何か変な間があったってことはそういうことなんだねー」


 富永さんに訝しげな視線を向けられつつ、今度は僕が目を逸らすことになってしまう。


「って、それよりも」


「それよりっていう問題でもないと思うけどなー。あたしは」


「それは、その、ごめん」


「あはは。長井くん、面白いねー」


 今度は笑い声を上げて楽しそうな様子をする富永さん。うーん、彼女が何をしたいのか、わからない。


「まあ、それはさておき」


「あっ、置いておくんだ」


「まあ、これだと、その、いつまで経っても本題に入れないからね。ちょっと、ここだと混んでるから、場所変えてもいい?」


「まあ、いいけど、その」


「わかってる、わかってる。柏木くんを待たせてるんでしょ?」


 富永さんの指摘に、僕は当たってるという意思表示のため、首を縦に振る。教室では弁当を持ってきていた陽太が僕の帰りを待っているのだ。一緒にお昼を取るために。


「だから、用件は手短に済ませるので、ご安心を」


「はあ……」


 僕は曖昧な反応をしつつ、とりあえず、富永さんの後についていくことにした。

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