第19話 結局、黒幕とは

「助かったわ、ありがとう」

「あの人たちは?」黒澤は調理屋の3人を一瞥して尋ねた。

「中継地点に置いてきた彼から、応援要請が通ったって連絡が入ったから大丈夫。そしたら町に連れ帰るから大丈夫よ」

「そうか」

「ほっとしてる?」

「なにが?」

「あなたのお父さん、黒澤藤吾の名前が出なくて」

「さぁ」

「さぁって、あんたね」

「さすがに自分の名前をホイホイ使うほど、頭の悪い奴じゃないよ、あの親父は」


 黒澤はそう言って、テントから引きずりだしたキャンプ用チェアに腰掛けた。じきに応援がやって来ると、保安官たちは調理屋の3人と梓、自分を連れて森を後にした。数名が調査のために残ったようだ。


 後に梓から聞いた話だが、3人は本当に黒幕のことを何も知らなかった。

 調剤していた”タブレット”はクスリとしてはなかなかの出来栄えだったらしく、裏社会で流通が始まったばかりのものだった。その世界では人気のあったもので、それの製造が止まってしまったのだから、黒幕はなにかしら動きを見せるかもしれないだろう、というのが彼らの見解だった。


 黒澤への礼金も確認がとれ、彼はすぐに自宅の修繕をした。

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