第18話 腑に落ちない話

「あんたたち、地元の保安官をなめるんじゃないわよ」梓が言い放つ。

「ほとんどそこのガイドさんが動いていたように見えたけど?」

 女が挑発するように声を上げた。自分はガイドと思われていたのか、と思いつつ、黒澤は服や髪についた粉を払っていた。


「私は人を見る目には自信があるのよ。知ってること、話してもらうわ。これはなに?」

 梓はそう言ってポケットから先ほどくすねた錠剤を取り出した。女は舌打ちして宙を見つめる。


「…いい儲け話があるって連絡があったの。私は調剤の勉強をしてたから。こいつら2人とは別に仲間じゃないわ。別々に連絡がきて、ここに集まった。実際に前金が送金されてたし、ここに来てみたら設備が整ってたから、私たちはレシピ通り調合してただけ。ボスが誰とか用途までは知らないわ」


「そんなこと信じると思う?」梓が女を睨みつける。女はため息まじりに続けた。

「使用目的やボスを”知らないから”できる作業だったのよ。知ったら消される。そんな匂いがしたわ。それ以外のことなら……全部話すわよ。ただボスは知らないったら知らないの」


 いつの間にか目を覚ましたのか、両隣に両隣に括られている男2人もそれに同意して頷いていた。


 女たちの言い分を簡単に信用するわけにはいかないが、証拠として現物が残っている以上捜査は進められるだろうと黒澤は思った。保安官達が本当に怠慢していなければの話だが。


 腑に落ちないが、どのみち自分にとっては進捗があろうがなかろうがあまり関係の無い話だと思っていた。それよりもそろそろ日が暮れそうなことのほうが心配だった。テントの外から顔を出して周辺を観察していると、梓が横に並んだ。

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