第14話 不安的中

「なにかあったか?」男が訊いた。

「音がしなかった?」女が答える。

「またイノシシでも出たんだろう? 前も荒らされたじゃないか」

「だからこんな森の中で作業するなんてゴメンなのよ」女は男に向き直りながら愚痴をこぼしている。黒澤と梓は茂みで息を潜めて伺っていた。


「仕方ないだろう、ここら一帯がボスの縄張りで……」そう言いかけた所で、男がもう1人駆け出してきた。なにやら慌てているようで、2人に問い詰めている。


「おい! ”タブレット”が1つ足りねぇぞ! おまえらまさか、くすねてないだろうな!?」

 男は血相を抱えて2人問い詰める。当の2人も驚き困惑した顔を見せたが直ぐに反論していた。黒澤は茂みからわずかに顔を覗かせて口を開いた。


「あいつら、何をモメてるんだ?」

「これを探してるのかしら……」

 そう言って梓が懐から取り出したのは、バッドに並べられていたさきほどの錠剤だった。黒澤が丸い目をさらに丸く見開き、まくしたてる。あくまで小声で。


「あんた…! 何勝手に持ち出してるんだよ!」

「うっさいわね、証拠よ。証拠!」

「状況確認済む前に現場荒らしてどうするんだよ。あいつら警戒してんぞ。調査どころか無事に逃げられるかも怪しいぞ」


 黒澤が目くばせすると、梓は”待ってました”と言わんばかりの強気な顔をし、ジャケットから得意げにテイザー銃を取り出した。


「新しく支給されたテイザーの威力を発揮する時が、ついに来たのね、行くわよ!」

「え、ちょっと、おい!」

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