第13話 立て直さなきゃ

「ちょっと、なに?」

 梓の問いかけに、黒澤は息を潜めて答えた。彼女もわけもわからずといった顔で姿勢を屈める。


「少し考えればわかることだったな、これだけの資材を運び入れるのに車が入れないなんてことないもんな。奴ら戻ってきたぞ。反対側の道からあがってきたんだ」

「なんでさっさと気づかないのよ!」

「俺はこっちの道しか知らないんだよ!」


 あくまで小声で、黒澤は反論した。車のエンジンが切れて、ドアが開く音がする。複数ではなさそうだ。1台の車に乗れるとすれば、多くても4人。この森の中に大型車で乗りいるのは無理があるから、それ以上はないだろう。


 黒澤はすぐにそう予測して、振り返る。

 テントの逆側から抜け出せそうだ。

 テントは連立されて設置されていた。

 あちら側から抜け出してもあるのはテントだけ。

 うまくいけば茂みに身を隠せるかもしれない。

 足跡は徐々に近づいてくる。

 確実に1人ではない。

 そして小屋ではなく、まっすぐこちらのテントに向かってくるのがわかる。


「反対側から出るぞ、来て。立て直す」

「え、ちょっと!」

 梓の困惑を無視する形で黒澤は彼女の腕を強く引き、テントの外に押し出した。それと入れ替わる形で、複数人がテントに入って来る。


 黒澤たちは、近くの茂みに飛び込み木陰まで移動した。彼は肩に背負っていたボウガンの状態を確認する。


 物音に気づいたのか、テントから1人が姿を現した。作業服にジャケットを着こんだ地味な女だった。怪訝な顔をしながら、背伸びをしつつ茂みを見つめている。テントの中から男が出てきた。


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