第7話 ここの家主、俺なんですけどね
窓の外を鋭く睨みつけると、人影が見えた。
部屋の片付け云々は一度頭の片隅に追いやり、襲撃者にどうお灸を据えるかに意識をフォーカスさせる。
人影は地形を利用して少しづつ家に向かっているようだ。2,3人はいるだろう。そうしているうちに、また石が投げ込まれた。火炎瓶でなくて彼は少しホッとする。殺す気はないらしい。襲撃者達は、家に乗り込んでくる気なのか足を止めない。
ボウガンで威嚇くらいしたかったが、あれは納屋に置いてある。黒澤はすぐに物置からバールを取り出し、柱に身を潜めた。時間があれば仕掛けでも設置してやりたかったが、緊急時というのはドラマみたいにいかないものだな、と彼は苦笑いを浮かべた。
相手が何人でどれほどの技量かは知らないが、白昼堂々奇襲をかけてくるあたり、こちらに打ち勝つ自信があるからだと判断し、黒澤はバールを強く握りしめる。
侵入してくるなら裏口か割れた窓からだろう。こちらは1人だ。うかつには動けない。
相手の出方を慎重に伺った。どうしても一発以上お見舞いしてやりたい。こちらも手加減するつもりはなかった。
すると裏口のドアノブがゆっくと動きだした。開いた途端に打ち込もうと、両腕でバールを構える。
振りかざそうとしたその瞬間、外からけたたましいサイレンの音が聞こえてきた。それに驚いた黒澤は、不覚にもドアに勢い良くバールをめり込ませてしまった。ガツンと衝撃音がなり、彼は舌打ちした。
バールを握りしめたまま正面玄関へと駆け出すと、庭先には車が数台停まっているのが見えた。そこから人が降りて駆け出しているのが見える。襲撃者を追っているらしい。
誰かが通報したのかと思ったが、隣家とは距離が離れている。簡単には気づかないはずだ。
保安官たちが通報で駆け付けたわけでなく、此処へ何らかの捜索しに来たものと悟って、黒澤はすぐにバールを放り投げた。すると案の定、保安官に呼び止められる。
「そこのお前、その家から離れなさい」
「私はここの家主です!」黒澤は大きな声でそう言って、IDをかざした。こちらに走り寄ってきた保安官は厳しい眼光でIDを睨んだあと、家に他に誰かいないか彼に尋ねた。
「私が1人で住んでいる。他にはいない。彼らが急に襲ってきた」
黒澤はそう言って、手で室内を促した後、腕を組んだ。攻撃する気がない事と、少しうんざりしている気持ちの表れだと自覚した。
すると襲撃者を捕まえたという報告が、保安官の無線から聞こえてきた。これで自分の正当性は保証されるなと安堵していると、別の保安官が庭先からこちらへ向かってやって来るのが見えた。威勢よく手足を動かす姿に見覚えがあった。
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