第6話 投石注意報
食事をすませ掃除をしているうちに、昼になった。仕事で使う備品の整理をしようと納屋に向かおうとすると、電話のベルがなった。
これを鳴らしてくるのは1人しかいない。
黒澤は眉をひそめて受話器をとった。
『よう』しゃがれた声が聞こえてくる。父親だ。
「よう…って、急に連絡してくるなんてどうしたよ」
『なんだ悪いか? 突然息子の声を聞きたくなる時くらい、あるだろうよ。なに、そっちに問題がないか気になっただけだ』
「何言ってんだ。問題? あんたが掛けてくるときなんて、だいたいトラブルがあったときくらいだろうが」
『なんだよ、ひでぇなぁ。オヤジを疑うなんて』
その時、窓の外に気配を感じて咄嗟に身をかがめた。ガシャンと何かが割れ、ゴトンと床に何か落ちる音が立て続けに聞こえる。割れたのは窓ガラスだった。細かい破片が飛び散っている。腕で顔を庇ったので破片を浴びることは免れたが、舌打ちして受話器の向こうへ言葉を荒げる。
「おい! 家に石投げられたぞ。親父今度はなにしやがった!?」
『知るか、身に覚えが多すぎて検討もつかねぇな』
「ふざけんな。心当たりあるからこのタイミングで電話してきたんだろうが。こちとら思い当たるフシなんて……。…。」
黒澤は昨晩の出来事を思い出し口をつぐんだ。あんな小競り合いで逆恨みされるなんて腑に落ちないが、それくらいしか思いつかない。それを察したのか電話の向こうで相手がため息をもらす。
『あるんじゃねぇか。てめぇで何とかしな。違ったら謝ってやるよ。とっつかまえて、ガラス代もろもろきっちり請求しとけ』
「…そうする」
黒澤は静かにそうぼやいて、ゆっくり受話器を置いた。
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