第3話 可哀相な子

おとなの言うことを碌に聞かない小さな子は、育ちました。


何が育ったと言うのでしょう?


周りの、おとなは、その子に何を見ていたのでしょう?


碌に会話の無い家庭で、いや、もとい。


家族とも碌に会話を交わせない、その子が。


いったい、どうして育つことができたと言うのでしょうか?


心が。


そう心が無かった、と大きくなって語ります。


心の無い私が、と。


自分の心を知らない私が、どうして他の子と喋ったり遊んだり楽しんだりできたと言うのか?


喋ったり遊んで楽しんだりすることのできない子が、どのようにすれば育ったり芽生えたりできるのでしょうか?


恨み、ですね。


家庭の。


それでいて、周りの、思惑を汲み取ることのできる子ですので、そこから逃れる術は持たない。


母親に良いように扱われている可哀相な子でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る