第6話 使徒会議

天界にある建物のように真っ白な空間にある円卓を、ある6人の男女が囲っていた。しかしそこにある椅子の数は8席。つまり2席が空席になっていた。

そして、身長180cm程と女性にしてはとても高く、腰まで伸びる銀髪をポニーテールにしている女性、リーベが口を開く。


「では!第…………何回だっけ、ニライ?」


ニライと呼ばれた150cm程で中学生ぐらいにしか見えない金髪碧眼の少女が抑揚のない声で答える。


「19回です。リーベ」

「お、流石ニライよく覚えてるねー。では!気を取り直して、第19回使徒会議を始めまーす!今回の議題は新しい弟達についてです」


そう、この6人はタナト達と同じく、女神アステラの子供達もとい使徒である。彼女達は全員が10年以上人界で暮らし、ここ数年は使命を果たすために奮闘している。


「じゃあ実際に弟達に会っているフィーニス!

報告をどーぞー」


「会議の時くらい、その軽い口調をやめたらどうだリーベ。まあ、どうせ直らないからいいか。まず名前からだな。弟の方はタナト、妹はルセだ。どちらも身長は170cm、仲は大分良いな。適性はタナトが守護、ルセが適性無しだ。」


フィーニスはリーベへの文句を言いながらも、タナトとルセについて報告する。


「でもどーせフィーニスも良い印象与えようと熱血男ぶってるんでしょ?まあいいや。で、

『共有』は?」

「まだ教えてないが、視界共有だな。」

「ふーん、便利そうだねー。まあ、離れることはほとんどないだろうから、戦闘以外で使うことは無さそうかな。あ、初級魔法は覚えさせた?」


リーベはタナト達を共和国の学園に通わせるため、試験に必要な初級魔法をフィーニスに覚えさせるように言っていたのだ。


「ああ、しっかり的にも当たるようになっていたぞ。ただ、まだ訓練は3回しかやってないんだ。だから適性魔法も最上級も教えていないんだ」

「まだもう少しだけ時間はあるから大丈夫だね。ちなみにあたし達は、タナト君とルセちゃんのための準備は順調に進んでるよ。転生者は好奇心から共和国の学園に行こうとする人は多いだろうね。あそこ試験と教師の態度は皆に平等だからねー。ね?ニライ、カナイ」


ニライと、カナイと呼ばれた150cm程でニライと同じく、中学生ぐらいにしか見えない銀髪金眼の少年が答える。


「大丈夫です。転生者と思われる者は監視、及びこの世界には過ぎたものを作ろうとする動きがあった場合は、脅しもしくは圧倒的な力による恐怖を与えてあります。」

「ただ、僕達も認知していない転生者達がまだまだいる可能性があります。また、転生先が貴族であったり、既に各国の主要人物に認知されている者は問題になるため、監視中に見つかる可能性も考え放置しています。ただ後者の方は学園に行く可能性が薄いと考えています」


と、ニライとカナイは報告する。この2人は使徒の中でも大分特殊で、神聖国を拠点としているが、情報をもとに潜入調査をする事もあるため他の国にいることが多い。

リーベはその完璧な仕事っぷりに感嘆していた。


「やっぱり2人はいい仕事するね。こっちでも転生者は探っているけどこの身分だから冒険者以外で見つけるのは難しいんだよね。フィーニス達の方はなんかあった?」


転生者はそんなに多いのかと言いたくなるような話の内容だが、あくまで推察に過ぎないため

実際にこの世界にいる転生者はそんなに多くない。だから空回りなどよくあることなのだ。


「俺の方からは特に何も無いぞ」


フィーニスは最近は外に出ていなかったため、タナトとルセのこと以外に報告するようなことは何も無かった。


「1年後ぐらいには邪王の魔力の影響が出始めると思うよ」


と、青髪のショートボブの髪型をしたルーアが報告する。しかしルーアはボクという一人称と中性的な顔が相まって男に見られることが少なくない。そのため帝国軍の副騎士団長は男性にも女性にも人気がある。ちなみにフィーニスは

帝国軍の団員達(内7割男性)に兄貴分として慕まれている。


最近、邪王の封印が弱まっており微かに邪王の魔力が漏れ始めている。漏れた魔力は周囲にいる魔物を変化させる。変化した魔物は変化前よりも倍以上に強くなる。そうなれば、封印に魔力を込めに来た魔法士達に被害が出てしまう。魔法士も各国の精鋭なので遅れは取らないだろうが、普通の魔物だと舐めてかかれば苦戦を強いられることになる。彼らは邪王との戦いにも参加してもらいたいとリーべ達は思っているのだ。


「王様達にはなるべく早く気づいてもらいたいねー。国々を集めて会議でもしてもらえれば、

王様達をまとめて説得できるし忠告もできる」


説得は邪王を倒すために勇者を召喚する事、

忠告は邪王の復活に危機感を持ち大陸全土で協力することだ


「まあ、その時の神の使徒役はルセちゃん達にやってもらう予定だけどねー。身長も体格も

理想的だし」

「そうですね、彼女達が適性かと」

「ああ、異論はないな」


ニライとフィーニスが答える。カナイとルーアはそれぞれのパートナーの意思に従うようだ。


「じゃあ決定!あとはその時が来たら頼むだけだね。他には何も無いね?では!第19回使徒会議を終わります!次は多分、ルセちゃん達に神の使徒役を頼む時かな?じゃ、解散!」


するとフィーニス達は次々に消えていき、

最後にリーベとレンリが残った。


「じゃ、帰ろっか」

「はい、お姉ちゃん」


そしてリーベとレンリも消え、真っ白な空間には円卓と椅子だけになった。


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