第5話 初級魔法と他の姉弟
今日は待ちに待った魔法の練習だ。
昨日と同じ真っ白で馬鹿でかい建物に入る。
中には昨日は無かった丸い的が幾つか立っていた。そこでフィーニスが待っていた。
「お前達2人には、現世では学園に通ってもらうことになった!今日は学園の試験で必要になる、初級魔法を覚えるぞ!」
異世界の学園……!憧れの場所に行ける!
「……学園……!」
ルセも珍しく目を輝かせていた。
やっぱり異世界の学園には憧れるよな。
「適性が無い初級魔法を打つには詠唱が必要だ!まずは俺がお手本を見せよう!」
そう言い、フィーニスは前に片手を突き出し詠唱を始める。
「此処に水による罰を求める『ウォーターボール』」
すると、突き出した手のひらに段々水の球体が出来上がり、テニスボール程の大きさになると
正面にある的に向かって飛んでいく。水は直線に飛んでいき、見事に的に命中し飛び散った。
初めて生で見る魔法に俺は目を輝かせる。
これを自分も出来るようになるのだと思うと
凄く興奮してくる。
「さあ!お前達もやってみろ!」
詠唱がえーと確か……
「此処に水による罰を求める『ウォーターボール』」
フィーニスの格好を真似し片手を突き出して詠唱してみると、手のひらに何とも言えないものが集まる感じがし、的の方に手のひらを向けるとちょうど手のひらに出来上がった水の球が飛んでいく。
しかし水は直線では無く山なりに飛んでいき、的の手前までしか届かなかった。
あれ?何で届かなかったんだ?それにフィーニスと違い山なりに飛んで行ったし。
だが魔法は打てた。すげえ……
「魔力の感覚を掴め!それが出来なければ詠唱を使ってもちゃんとしたものにならないぞ」
なるほど、魔力は多分さっきの手のひらに集まる感じがしたあれか。なら今度こそは的に当てて見せる。片手を突き出し、詠唱を始める。今度はしっかり手のひらに意識を向けて。
「此処に水による罰を求める『ウォーターボール』」
すると、さっきよりも多くの何かが手のひらに集まっていくのを感じる。そして水が発射され、今度はちゃんとまっすぐ飛んだ。しかし狙いが甘かったのか的の僅か横を通り過ぎていく。
「あとは練習あるのみだ!」
その後、疲れ果てるまでウォーターボールを打ち続けた。ルセも俺も段々的に当たるようになり最後の方にはほとんど当たるようになった。
しかし今日打った数は恐らく500程だ。初めての魔法に興奮して夢中になっていたが今は疲れ果て今にも倒れそうですぐに家に帰りたかった。
しかしまだ模擬戦が残っていた。ルセは俺よりも少し余裕があるように見え、案の定一瞬で蹴っ飛ばされ、模擬戦が終わる。
「タナト、この体の魔力は無尽蔵だ。だが後衛向きの体のつくりをしているお前は、ルセより体力が少ない。だから今日ルセに負けるのは当たり前なんだ。落ち込むなよ、俺がお前を最強の盾に仕上げてやる」
何か昨日も同じ慰められ方だった気がするな。
気にしない方がいいか。
「では今日の訓練は終わりだ!解散!」
そう言いフィーニスは帰っていった。
そしてルセが仰向けに倒れている俺のもとに向かって来る。……ああ、この流れも昨日見たな。
「……帰ろ」
そして、ルセに抱えられ建物を出ると、お母さんがいた。
一番恐れていたことが起きてしまった。
「あらあら、仲が良いですね」
微笑ましいものを見ているような目をしながら、そう言った。恥ずかしい。
「からかわないで下さい」
と俺は無駄と分かりきっている抵抗をするが、
ルセは
「……そう、仲良し」
ふふん、偉いでしょ?そう言いたげな声音だった。無表情な顔も何故かドヤ顔をしているように見えてくる。
「ええ、仲良しなのはいいことです。そういえば、貴方達はフィーニスから他の兄妹達のことを聞きましたか?」
「いえ、聞いて無いです」
そういう話は聞いて無かったな。気になるといえば気になる。
「なら私が話しますね。まず子供達はペアで行動する事が多いですね。パートナーと離れる事の方が稀かもしれません。最初はまとめ役のリーベとそのパートナーのレンリです。リーベは
お姉さん気質でとても話しやすいと思います。
見た目や言動によらず子供達の中で一番強いですね。そのパートナーのレンリは、リーベとは違い少し気が弱いです。リーベをお姉ちゃんと言い、慕っていますね。この2人は貴方達が現世に降りた時にサポートをするように言ってあります。
次に貴方達も知っているフィーニスとそのパートナーのルーアについて、フィーニスは帝国で帝国最強の証である、帝国騎士団団長を務めています。見た目通り熱血で頼れる兄って感じですね。そのパートナーのルーアはフィーニスのことをフィーと呼んでいますね。そして彼女も帝国騎士団に所属していて、副団長という地位についています。帝国に行くことがあればこの2人を頼ると良いでしょう。最後にニライとそのパートナーのカナイについて、この2人は前世にある事があったせいで体が少々特殊です。この2人は主に神聖国にいますが情報収集することに長けていますので、他の国へ行くことも多いですね。会いに行く時は注意して下さいね。こんな所ですね。皆いい子なので仲良くしてくださいね。」
「はい、ありがとうございます」
「いえいえ、これも親の役目ですから。ではおやすみなさい。」
そう言いお母さんは真っ白な神殿のような建物に入っていった。
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