第7話 適性
今日も俺達は真っ白な運動場のような場所に来た。あれから毎日フィーニスの指導を受け、毎日模擬戦でルセにボコボコにされた。ルセの動きには毎回新しい動きが加わっていて、体術では追いつけそうにない。ただ今日はフィーニスだけで無く、お母さんも待っていた。なぜお母さんがいるのだろう?
ただ可愛い子供達の様子を見に来ただけかもしれないが、それなら早く来て俺達を待つ必要は無い。それにお母さんにもすべきことがあるはずだ。
「今日は適性魔法と武技についてだ!ルセは俺と武技を、タナトは母さんと適性魔法の訓練を
しろ!」
なるほど、2手に分かれるからお母さんがいるのか。だけどフィーニスにも俺にとってのルセのような人がいるはずだ。その人は連れて来なかったのだろうか?
「何でお母さんが?フィーニスにのパートナーはどうしてるの?」
「ああ、ルーアは現世で俺の仕事を片付けてくれている。だから連れて来れないんだ」
ふーん、現世での仕事って何をやっているんだろうか?まあ、そのことは後でもいいか。
そして、2手に分かれてルセはフィーニスに、俺はお母さんに教えを乞う。
「いいですかタナト。貴方の適性は守護です。
直接攻撃には使えませんが、味方を守るための大切な魔法です。まずは基本の3つを覚えましょう」
守護の基本は盾、壁、結界で他はこの3つの派生となる。これは、他の魔法も同じで基本が
3つで他は基本の派生となる。
「まずは、盾からやってみましょうか。
『盾』これが盾です。よく見て覚えて下さい」
盾は半透明で縦30cm程の正六角形だ。守護は特殊で初級魔法が無い。だから全て見て覚えなければいけないのだ。ちなみに盾と壁が中級、結界が上級になる。
「『盾』」
よし、ちゃんと出せた。こんな板みたいなものが宙に浮いているなんて、不思議だ。
「出来ましたね。契約者並みの硬さですね。よく出来ました。」
やっぱりお母さんの微笑む姿は絵になるな。
それより気になる単語が
「契約者ってなんですか?」
「あら?説明してませんでした?契約者とは
大量の魔力が集まって生まれた、精霊と呼ばれるものに気に入られ契約を結んだ者のことを指します。精霊は契約者が魔法を放つ時に一緒に魔力を込めてくれます。そのため契約者の魔法は実力が同じ者よりも威力が高いのです。
ただ、精霊にも心があるので、認められなければ姿が見れず声も聞けません。」
精霊か……見てみたいな。世界中歩き回ったら1人ぐらい見えるかな?
その後、壁と結界も問題無く出すことができた。ちなみに壁は高さ5メートル横10メートル程の白い壁だ。結界は半径5メートル程のドームで色はシャボン玉のように虹色に見える。
結界は込める魔力の量を増やすと結界の硬さと大きさが変わる。しかし盾と壁は魔力を込めても硬さしか変わらない。これが中級と上級の違いなのか?
「では次は盾を2枚出してみましょう。盾が2枚浮いているのを想像して唱えてみて下さい」
言われた通りに盾が2枚浮かんでいるのを思い浮かべ、唱える。
「『盾』」
よし!出来た。俺の目の前には2枚の盾が浮かんでいる。
「よく出来ました。2枚出せれば9枚まではすぐ出せるようになります。目標は10枚ですよ。あとは、少し離れた場所にも出せるようにしましょう」
10枚……そんなに出す必要がある状況は無いと思うけど。
「10枚も出す必要があるんですか?」
「出せるようになれば分かりますよ」
出せるようになれば分かるってどういうことだ?
それにお母さんの言い方では9枚と10枚の間にも壁があるようだ。とりあえず9枚出してから、
10枚に挑戦しよう。9枚全ての盾が正面に無規則に浮かんでいるのをイメージして唱える。
一応9枚は出せた。でも全ての盾にひびがはいっていて今にも割れそうだ。
……何でだ?込める魔力が少なかったのか?
なら10枚の時はもっと魔力を込めなきゃな。
体感では9枚の時の2倍程の魔力を込めて唱える。
だが、出した瞬間に全ての盾が、ガラスが割れるような音をたてて砕けた。
2倍魔力を込めたんだぞ?ひびがはいるならまだしも、出した瞬間に割れるのは予想外だった。
「魔力の制御ができていませんよ。魔力が形となる前に集中が切れています。集中が切れれば、魔力はあなたの制御下から外れ、霧散します。だから、盾がすぐ砕けてしまうのです」
そうか、魔力を込めて唱えたら終わりでは無く、魔法が出来上がるまで集中を切らしちゃいけないのか。
再度、10枚の盾が無規則に浮かんでいるのをイメージして唱える。
「『盾』!」
集中しないと、盾が砕けてしまう。
これ精神的にきついな。何かがゴリゴリ削られていく感じがする。だがここで集中を切らしたら、またやり直しだ。あともうちょいで完成しそうなのにまたやり直すのは嫌だ。集中し直し
何とか耐えた。目の前には10枚の盾が無規則に浮かんでいる。良かった、成功した。
ただ10枚同時に出すのは精神的にかなりきつかったし疲れる。早く帰って寝たい。
タナトが頑張ってる。私も頑張らないと。
私はフィーニスから短剣の使い方と武技を学んだ。武技とは、武器に魔力を通して、魔力による補助を受けて攻撃の威力を上げるという技術。正直言って短剣を使うより格闘で近接戦をした方が楽。
でもフィーニスが蹴りや殴りに関する武技は無くて、この世界の常識では最後の手段としてでしか使えないらしい。武技無しの攻撃と武技ありの攻撃では威力に差がある。だから仕方なく短剣を学んだ。
私が学んだ短剣の武技は『スラッシュ』という基礎的な武技だけ。他に『疾走』と『縮地』
を学んだ。
疾走は単純に足が速くなる武技。
縮地は地面自体を縮め移動する技。要は瞬間移動。疾走は速くなるだけだからすぐに慣れた。
でも縮地は速いとかでは無く、視界が切り替わる感じがする。だから慣れるまで時間がかかった。
最後にスラッシュを10連続で繰り出して終わり。簡単だったけどフィーニスの顔を見ると、とても驚いた顔をしていた。
「……どうしたの?」
「……いや、お前才能あるな。俺も1時間ぐらいかかったのに」
どうやらスラッシュを10連続で出すのを1回目でできたことに驚いてるみたいだ。
別に大したことじゃないと思うけど。
意外と簡単だったし。
今日の訓練は呆気なく終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます