「日、昇るところ」

目が覚めた。

時計を見るとまだ5時だった。

折角早く起きたので、近所を散歩してみることにした。

家から歩いて3分ほどのところにはコンビニが、そこからさらに進むと大きめの十字路があった。

信号待ちをしているタイミングで、靴紐が解どけていることに気付き、結ぶためにしゃがんだ。

足元に何か赤いものがあった。

赤いというより、赤黒い。

そして乾いてしまって、地面にこびりついていた。

要は、血だった。

誰のものかはわからない。

なのに、息が上がる。

鼓動が嫌というほど聞こえる。それに比例するように、周囲の音がどんどん聞こえなくなっていく。


一体どれ程の時間、あそこにいたのだろう。気付いたときには、もう家に帰っていた。どのようにして帰ったのかもよく覚えていない。

「......? どうしたの?」

「あ、いや。なんでもないです」

どうやらぼうっとしていたこともばれていたみたいだ。


四十分ほど前。交差点でうずくまる男を見つめる二人組がいた。

「やはり、ここに来ましたね。警部」

「さあな。偶々かもしれん」

「覚えてない。ということは嘘なのではないでしょうか?」

「なぜそう思う?」

「なぜって言われても......うまく説明できるかわからないですけど、強いて言うなら“そんな気がする”んですよね」

そんなことを話しながら、男を見ていた。

おおよそ三十分経ってから、男が歩き始めた。二人組もそれに続いた。

「ほら、警部。ふらふらしながらもしっかり家に向かっていきますよ」

しばらく経って

「あぁ、そこも。いつも通っていたらしい道を行ってますよ」

家に大分近づいた頃。

太陽も大分昇った頃。

「警部、やっぱりあの人、記憶なんて失ってないんじゃないでしょうか?」

「さあな。何度も言ってるが、そんなことは頭の中を見てみないとわからん」

そうして尾行は終了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る