第二百六十八話 武装政務官

※本話に出てくる「しゃーしゃー!」鳴く遥さんを本作のコミカライズ担当作家であらせられる横山コウヂ先生が描いてくださいました!

作者X(Twitter)の方に掲載されておりますので、是非フルカラーで鳴く「しゃーしゃー!」猫ちゃんをその目でご覧になってくださいませっ!

「チュートリアルが始まる前に」コミカライズ第2話も電撃マオウ様にて絶賛連載中です!


(ФωФ)「しゃーしゃー!」


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◆◆◆『皇都』龍心上層・都内汎用交通サービス“機龍”客室内



 狻猊地方皇都府『皇都』“龍心”。龍脈の発信源にして、全ての龍達の故郷龍宇大への入口、そして皇国の首都機能が一手に集いしこの栄華なる都は、文字通り「皇国の心臓」として、我々皇国民の暮らしを支えている。



 地下層、地上層、そしてはるか天空まで聳え立つその“三界龍脈都市”の「中」に我々“烏合の王冠”が到着したのは正午過ぎの事、翼龍や蛇腹の龍が当たり前のように空を翔る彼の都の光景は、まさに奇怪にして綺街にして異界、要するに“ぶっ飛んで”いた。



 完全精霊石製の超高層ビル郡、空中を鮮やかに彩る立体映像広告、行き交う人の数も密度も桁違いで、いかに自分達が田舎で暮らしていたのかをまざまざと分からされてしまった。



 桜花もそれなりに栄えてはいるものの、あれはまだ現代都市の範疇を守っている。

 龍心は違う。主要交通機関として利用される“機龍(精霊石とドラゴンの量産培養体クローンを掛け合わせた携帯可能な特殊金属生命体)”は、ユーザーの用命に応じて自転車から四輪車、果ては航空機へとその姿を変幻に変え、都市に行き交うあらゆる情報処理を人工知能AIならぬ龍工知性DIが統制する。


 道路も信号もない空の道を幾千の“機龍”達が事故も起こさず闊歩する。


 それはまさに「完制された自由」、全てを龍に依存した未来都市。


 『皇都』龍心、シリーズ三作目の中心舞台メインステージ

 そんな原作ファンとしては色々な意味で思い入れのある場所に、歴代のボスキャラ達が一手に集った。



「ねぇねぇ、凶さん」

「なんだね、遥さん」


 隣のシートに座る恒星系が、外の景色を指しながらこてんと大きく首を傾げた。



「どうしてこのドラゴンさん達ぶつからないの? ばびゅーん、ばびゅーんって狭い路地裏とか勢いよく飛んでるのに全然事故らないじゃん」

「そんなボカジャカ事故起こしてたら交通機関として機能しないでしょうよ」

「だからどーして交通機関として機能してるのって話ザマスよ」 


 特に意味もなく彼女の顎を触りながら、うんちくを語るべきか思案する。俺もゲームの設定資料集で乗っている程度の知識しか持っていないため、あんまドヤ顔で解説できるわけではないのだが、


わたくしも気になりますっ。何故機龍様達は、かくも伸びやかに飛び舞うことができるのでしょうか」


 後部座席に座るお下げの少女からも同じ問いかけが。



「“減衰”と“管制”だよ」


 であれば、と俺は口を開く。



 白地のリクライニングシートが四席並ぶ客室車両。


 内側から見れば、プライベートジェットの中にいるようにしか見えないその心地の良いこの乗り物の実態は、しかして機械化され龍の体内ナカである。



「『龍麟』ってあるだろ、ドラゴンが必ず持ってるあの見えないバリアみたいな奴」

「あー、あのバリア的なやつ」


 『龍麟』、龍種の代名詞とすら言えるインチキ防御性能。あらゆる武器を折り、あまねく術式をはね除けるそのイカれた硬さの本質は、読んで字のごとくの鱗──ではなく龍達の“主”より賜った「祝福」に由来する。



 それが“減衰”、ダメージや危険性を伴う干渉をオートガード(場合によっては任意発動)で中和し、迫り来る驚異から絶えず身を守り続ける常在発動型個龍結界。


 こいつがあるおかげで龍達は接触事故を起こさない。

 もしも飛行中にぶつかりかけたとしても互いの『龍麟』がダメージを中和し合い、身体への悪影響を限りなくゼロに近い値へ“減衰”させる為だ。



「とはいえ、幾ら『龍麟』でダメージを抑えられるといっても、みだりに他所様とぶつかり合うようじゃとても交通機関としては使い物にならない」

「あ、わたくし分かったかもしれません」


 はいっと背筋を伸ばしながら右手を挙げるソフィさん。俺は心の中でクイズ番組の司会者を気取りながら、「はいソフィさん」と彼女に手番を回す。


「どなたかがこの“機龍”様達の進行方向をコントロールされているのではないでしょうか。この空を飛ぶ全ての“機龍”様達の動きが一つのシステムによって管制ないし調停されているのだとすれば、彼等がぶつからない理由にも一つの筋が生まれます」


 

 流石は聖女。物の本質を見抜く力に長けている。


 そう。ソフィさんの言う通り“機龍”達の動きは、皇国が産み出した「一つの偉大な知性」によって統制管理されている。


 空を舞う有翼銀色の機械龍達。“龍心”の上層、浮遊諸島雲海郡を飛ぶこれら一機一機の金属生命体達が全て完璧にコントロールされている。なんと壮大で浪漫のある話なのだろうか。



 俺はソフィさんを称えるべく口を大きく開いて──


「ソフィさん正解」

 

 ──気づけば右手が勝手に彼女の頭を撫でていた。


「あ」

「ひゃんっ」


 絹のようになめらかで、程よく柔らかな感触が俺の右掌を包み込む。


「しゃー!」


 なんという破廉恥、信じられない程にセクハラ。俺は急ぎ詫びの言葉を入れるも今更謝ったところでもう遅い。



「しゃーしゃーしゃー!」



 顔を赤めるソフィさん。巧妙に気配を消すあなた今までどこにいらっしゃったの!?会津。当然猫ちゃんは「しゃーしゃー!」と不機嫌そうに鳴き出す始末である。


 俺は謝った。何かがおかしいと思いながらもひたすら真摯に謝った。



 おい、どうしたんだ清水凶一郎。いつからお前はパートナーでもない異性の頭を無許可で撫でるような破廉恥大猩猩ナデポやろうになっちまったんだよ。


 『天城』編の時のお前は一体どこに行った? 遥のいない世界で胃袋を何度も壊しながらも決して己の在るべき紳士道を曲げなかった愛すべき純愛野郎! それがお前だ! お前だった筈なのだ!



 ……なのに何だこの体たらくはよぉ!


「浮気だにゃ! 彼女の目の前で堂々と浮気してるにゃ!」


 俺は、ぷりぷりと怒る彼女を全力で宥めながら心の中で冷や汗をかいた。


「(もしかしたら今回の面子、前回以上に色々と意味でヤバイのでは……?)」



 『皇都』上空を銀色の有翼龍が翔け抜ける。




◆『皇都』龍心・五つ星旅籠『花天月地』:第一宴会場



 その旅籠は、空にある。『花天月地』、龍心上層に浮かぶ龍製浮遊諸島の一つ。


 浮き島一つを「巨大な旅館」に仕立てたこの規格外の浮遊旅籠は、季節を問わず多様な種の桜が咲き誇り、訪れた客人(大抵はお貴族様だ)を魅了するという。


 料金は当然、規格外。

 更に幾ら金銭を積んでも、旅館側が提示する「お客様としての資格」を越えられなければ、終生立ち入ることが許されない。


 そんな超高級VIP御用達SSS級旅籠ホテルは今、俺達“烏合の王冠”一行の貸し切りとなっている。


 何故か。



「やぁやぁっ! 畏れ多くも誉れ高き、光と闇の狭間を往く黄昏の勇者達とその近親者達よっ! 始めましての方はどうぞよろしく、そうでない方はまた会えたねっ、あなたの親愛なる友人桜蘂黄泉ちゃんです☆」


 全部この、ジャンル異世界恋愛女の仕業である。


 総面積五百畳という極めて広大な広さの大宴会場、龍皇系(向こうの世界の和風テイストを想像してくれれば良い)を貴重とした赤の敷地に白と金に彩られた天然木材の壁面。料理、サービス、その他全てのあらゆる要素が一地方の新興冒険者クランには不釣り合いなこの場所の最前列で、一人ド派手なテンションで盛り上がる皇国宰相筆頭補佐官殿。



 スポットライトの輝きを占有し、ステージの上で陽気にマイクを振り回す彼女がこの場所を俺達の活動拠点として提供した理由は偏に我々の身を守るためである────


「いやー、一度ここ貸し切ってみたかったんだよねー! 私もしばらくここに滞在してるから、みなさんどうぞよろしくー!」

 

 ──等と雄弁に語っていた彼女の言葉が今は微塵も信じられない。


 傍らに控えるは十種十絶。蒲牢を司る当代の龍生九士にして桜蘂黄泉のパートナー。


 一大事だ。何故って彼がこの宴会場に来たということは即ち、未来の龍生九士が二人も集ったという事になるのだから。



「ふんっ。何よ、偉そうに」



 当代の『蒲牢』十種十絶、未来の『狻猊』火荊ナラカ。


 三作目の主人公達の前に立ち塞がる歴代最強のボスキャラ軍団が内二人が、一クランの歓迎会に集うという衝撃的な絵面。



「(『天城』でも似たような場面はあったけど、こっちは信じられないほどに距離感が近いパーソナル。何より──)」

 

 

 ナラカが車内で言っていた言葉を信じるのであれば、二人では終わらない可能性があるのだ。



「さて、諸君に朗報だ。今日この場所に、君達の新しい仲間となる二人の逸材を連れてきたっ!」


 

 十絶さんがぽんと赤色の手持ち太鼓を叩いた次の瞬間、ステージ全体を七色のスモークが包み込んだ。



「まずはAチーム、黒騎士班の武装政務官を務めるのはこの女っ! 若冠19歳の身の上でありながら、数多の戦場を肩に携えた愛銃一本で皇国が誇る“白い悪魔”」



 アップテンポな曲調の女性シンガーのボーカルに合わせてステージ内に現れたその女性を俺は知っていた。


 糞みたいな射程を持つインチキチビちゃんや、当たり前のように世界を壊す空間破壊能力者が跳梁跋扈するこのダンマギシリーズにおいて、歴代最強シューターは誰かという「最強議論」にライフル銃一本で名を連ねるような化物は彼女をおいて他にいない。



 初出は二作目。大都市一つ以上の広大な領域範囲を持ち、その空間内のあらゆる物質を自在に置換転移する権能を持つ“虎の王”の左目と心臓を彼の射程外から撃ち抜いた唯一にして無二なる魔弾の射手。


霜平しもだいらヘイローちゃんですっ! みなさん暖かい拍手でお迎えください』

 


 万雷の拍手の中、白髪の軍服女性が恥ずかしそうに会釈する。


 百七十を越える長身に地面まで届きそうな長さのロングストレート、丸みを帯びたその薔薇色の瞳からはある種の臆病さを感じる。



「ふぅーっ! 長身白髪美女子ちゃん来たーっ!」


 俺ははしゃぐチャラ男に何も言わなかった。一人の紳士としてあるいは組織の長としても奴のこういう軽率な発言は、窘めなければならない。


 だが────


「続いてBチーム、清水君班の武装政務官を務めるのはこの男っ!」



 それどころではなかったのである。



「我が国が誇る護国の名門、澄江堂ちゅうごうどう家現当主にして、次期『睚眦がいさい』の内定者、皇帝陛下より賜った龍の御力の開花を早めるべく、「殺しの一族」の天才が深きダンジョンの底へと殴り込むっ!」



 それは人の姿を借りた処刑器具。

 それは万の軍勢を匕首あいくち一突きワンアクションで根絶やす“一撃鏖殺”の達人。


澄江堂ちゅうごうどうガキさんです。皆様、万雷の拍手でお迎えくださいっ!」


 澄江堂ちゅうごうどうガキ。


 “龍生九士”が一柱『睚眦がいさい』を司る狐目の男が俺に向けて手を振っていた。



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・特別付録!

嫉妬猫ちゃん無限「しゃーしゃー!」ダンシング


・用意するもの、遥さん、その辺のゴリラ、ソフィ


遊び方

ソフィの頭を撫でた後に遥さんの顎をよしよしすると、遥さんの表情がコロコロ変わって楽しいよ!レヴィアちゃんが「やめんかバカ!」と蹴ってくるまで無限に遊べるからどれだけ楽しめるか試してみてね!


以下、一例


(ФωФ)「しゃーしゃー!」←ソフィの頭を撫でる


(ФωФ)「しゃー!」←ソフィの頭をもっと撫でる


(◜◡◝) 「ぅにゃんにゃん」←猫ちゃんの顎を優しく撫でる


(ФωФ)「しゃーしゃー!」←ソフィの頭をもう一度撫でる


(ФωФ)「しゃー!」←ソフィの頭を更に撫でる


(◜◡◝) 「ぅにゃんにゃん」←猫ちゃんの顎を優しくくすぐる


(以下ループ)


※注意事項

・絶対にソフィさん以外の人で試さないで下さい。最悪死人が出ます。

・レヴィアちゃんの胃袋に甚大な負担がかかります。レヴィアちゃんルートに行きたい場合は控えましょう。

・チビちゃんの頭を撫でると拒絶案件チ◯チンと嫌がられます。

・邪神の頭を撫でるとチ◯チンがふっ飛びます。


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・新年明けましておめでとうございます!今年も1年よろしくお願いいたします!

所用の為今週の木曜日だけはお休みさせて頂きますがその後は、しばらく(少なくとも2月いっぱいは確実に)週二更新でまいりますので是非是非お楽しみにっ!

それでは次回、2月11日の更新でお会い致しましょうー!

あけましておめでとうございますっ!






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