第二百十二話 天城の神々と天翔ける最新の神話達12
◆世界にとっての未来、彼にとっての過去
煌びやかな宮殿。どこまでも伸びる螺旋階段。巨大な炉心を思わせる球状の機械。爆ぜる壁面。顕れる甲冑の騎士。緋翼を纏った巨神が槍の穂先を彼女達へと向け、穿つ。宮殿に咲く深紅の閃光。幾つもの破壊が、殺戮が瞬く間の内に行われた。抗うも、無力。奇跡が無惨にも朽ちて、壊れていく。散らばる無数の残骸。広がる絶望。止まらぬ神の進撃。
まるで蜘蛛の巣を散らすような容易さで、甲冑の巨神は人を追い詰めた。
放たれる神の
誰もがその威容を前に諦めかけたその時
“――――のことは、――――あぁ、――――みんなに”
たった一人で、神の裁きに立ち向かう人がいて
その瞬間を、奇跡が終わる瞬間を見ている事しか出来なかった桜髪の少女は、深く、強く己の弱さを呪って
“ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――!”
黒が、黒い闇が世界を、彼女を――――
◆◆◆ダンジョン都市桜花・第百十八番ダンジョン『天城』最終層・杞憂非天・第五番神域『怨讐愛歌』:『英傑戦姫』:空樹花音
『十秒前』
思考通信越しに鳴り響くユピテルちゃんの声に従い、私達は仕上げの準備にかかった。
燃え盛る怪物達の宮殿。鼻孔を侵す有機物の焼けた臭い。汗ばんだ手指。乾いた喉。そして
「SUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUNNNN!」
耳を塞ぎたくなるようなその咆哮は、この神域の主である怪物女王から発せられたものである。
地母神ガイア――――いや、今はテラと呼ぶべきか。
『再解釈』の力によって新たな肉体を得たその
そしてその怪物の身体には、現在無数の『栓』が敷かれていた。
蛇を彷彿とさせる暗灰色の長い胴体を貫く巨大な金属棒。
ヒイロさんの契約精霊『セイテンタイセイ』の巨大化と分身を掛け合わせた増殖
『五、四、三』
頭の中で
『いくゼ、おめェら、いっせのせいっ!』
ゆっくりと、引き金を引いた。
◆
凶一郎さんが黒騎士さん経由で調べた情報によると、オリュンポス・ディオスは【第二陣時に解放された五つの
どうして一年前に現れた(しかも“笑う鎮魂歌”の皆さんがずっと秘匿し続けてきた前代未聞の
間違い等、ある筈がない。
五柱の内、三柱を倒した瞬間に次の
普通だったら、最も厄介なトップスリーを選択し、できるだけ楽な二体を抱えて次へと進む道を選ぶだろう。
しかし、我等のリーダーが選んだ道は違った。
『先に邪魔な
だけど、何て言えば良いのかな。私はこの作戦を聞いた時恥ずかしながら納得よりも先に「そんなのアリなの?」という感情の方が勝ってしまったのだ。
だってあまりにも無謀すぎるというか、手間がかかるというか。
「(……だけどそれをやれちゃうのが凶一郎さんなんだよね)」
そう。彼は……というか私達は実際にやり遂げてしまったのだ。
第五、第九、第十を司る三柱の神格達を別の次元から同時に討つという離れ業。
驚異的な感応能力を持つユピテルちゃんを中継役として、三界の情報をリアルタイムで更新し続け、
「(いや)」
手の震えが止まらない。疲労による蓄積……は、間違いではないし、精神的な
だけど今私の身体を震わせるその寒さの根源は、これまで起こった事に依るものではない。
私は今、これからやって来るモノ達に対して恐れている。
深く、強く、恐れている。
「行こう、花音ちゃん」
ダンジョンの神が“
彼女もまた、震えていた。肩は小刻みに、そのあどけない顔は真っ青に染まり
「行かなきゃ全部、無駄になる」
「……はい」
私は、それでも前に進み続ける冒険者の先輩の勇気に心からの敬意を払いながら、彼女の後に従って燃え果てる第五神域を後にした。
◆ダンジョン都市桜花・第百十八番ダンジョン『天城』最終層・杞憂非天・
白雲をはるか真下に従えて、青空の頂きに
“偽史統合神殿”オリュンポス・ディオス。
ポータルゲートを抜け、
さもありなん。私のこれまで生きてきた人生の中でこれ程までに強大な敵と
全長二キロメートルを越える異次元の巨体
十二の神域を統べる未曾有の戦力
そして“外れ”と“突然変異体”を掛け合わせた唯一無二の
どこをとっても特別で、私が聞いたどんな
……だけど、何だろう。
「(そういうことじゃない気がする)」
うまく説明できないけど、この“ざわめき”の正体は冒険者としての
「花音さんっ!」
声のする方へと、視線を向けると
凶一郎さん、ユピテルちゃん、ナラカさん、虚さん、アズールさん、黄さん、納戸さん。
そこに私とヒイロさんを加えた総勢九人のパーティーが、今ここに再び集う。
「怪我や不調はないか?
「見ての通りへっちゃらです。
「花音ちゃん。すっごい頑張ったんだよ。ほぼ単独で
私とヒイロさんの返事に凶一郎さん(人間モード)は、心からの安堵を顔に滲ませて
「そっか。――――なら来てもらって早々のところ悪いんだけど」
そうして私達は、ダンジョンの神が奏でる絶望的なアナウンスに耳を傾けながら、本日三度目の、そして最大の決戦に向けたメンバーチェンジを始めたのである。
◆
【冒険者が、新たに五つの
【第二神域『聖婚賛歌』
【“至高神妃”ヘラの解放に伴い、“至高神妃”の特殊
【最終階層内にいる全冒険者の
【“至高神妃”の特殊
【冒険者は、第三神域及び第六神域の踏破を終えるまで第二神域に干渉する事はできません】
【第三神域『永久女神』を
【“鎧装騎神”ミネルヴァの解放に伴い、“鎧装騎神”の特殊
【第三神域に特殊ユニット群・“ディーユニット”を配置致します】
【“至高神”ゼウス・ディーを配置致しました】
【“天陽龍”アポロ・ディーを配置致しました】
【“怪物女王”ガイア・ディーを配置致しました】
【“殲月龍”ディアナ・ディーを配置致しました】
【“冥王”ハデス・ディーを配置致しました】
【“創星王”ウーラノス・ディーを配置致しました】
【“混沌大黒”カオス・ディーを配置致しました】
【“海洋皇帝”ポセイドン・ディーを配置致しました】
【“神王”クロノス・ディーを配置致しました】
【ディーユニットは、第三神域外でのあらゆる干渉行為を行えず、また第三神域外へと出る事はできません】
【“鎧装騎神”の特殊
【“鎧装騎神”は、全オリュンポスユニットの
【第六神域『戦争工房』を
【“機甲軍神”マルスの解放に伴い、“機甲軍神”の特殊
【“青銅機神兵”タロスを400機生産致しました】
【これより、全てのタロスは最終階層内の冒険者に対して攻撃行動を行います】
【“機甲軍神”の特殊
【召喚された全タロス・ユニットは、一定時間経過毎に「全ての能力をアップデートする」
【
【ルール名“
【全冒険者の帰還行為を禁じます】
【このルールは、冒険者側が第三陣を
【“外れ”への
【以下の条件を満たした場合、全冒険者に特殊強化加護、《
【該当条件:第三陣の踏破】
【また第三陣の踏破を以て、条件α――――「全ての神殿の踏破」を「達成」とみなし、
【さて、冒険者の皆様。長らく続いたオリュンポスの神々との
【
【人の可能性に際限などありません】
【最後まで諦めなければ、自ずと道は開かれます】
【希望を捨ててはなりません】
【光を見失ってはなりません】
【良き旅を、良き戦いを、良き物語を】
【待ち受ける困難の先に奇跡の花が咲き誇る事を我々は切に、切に願っております】
【さぁ】
◆◆◆
「「極上の物語を見せておくれ」」
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邪龍おじさん( ´_ゝ`)「ちーっす!フリクエのポッと出ボスでーす!」
( ´_ゝ`)「自分、やっぱり適正でした!」
( ´_ゝ`)「…………」
( ´_ゝ`)「クソゲーにも程があるだろ!」
・ヘラ:物理霊術問わず、全ての攻撃を90%デバフ
・マルス:ちょくちょく『タロス』が強さの指標として使われてた理由そのもの
・ミネルヴァ:あらゆる意味でメアリー・スー。ウ◯コ
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