趣味でレアスキル【未来視】を使っていたら、実は因果律確定の能力だった。〜自業自得で裏を掻き続ける人生になってしまった俺は罪滅ぼしの為にみんなを救います〜
第38話 身を伏せヘイトを擦りトドメを漁夫るそれはいわゆる卑怯卑劣
第38話 身を伏せヘイトを擦りトドメを漁夫るそれはいわゆる卑怯卑劣
ここを戦場に選んだのは何も当てずっぽうではない。
ここは中央都市が一応管理している場所で名を花園。
別に適当にそう名付けたのではなく中央都市の敷地内にあるので所有物となるのだが事実上の管轄は隣の女性だけの国が握っているためだ。
しかしどちらにせよあまり手を付けられておらず、ぶっちゃけ無法地帯化している。
理由は単純で同時にこの花園唯一の規則に繋がってる。
「『花園では[魔術]を使用しない事』……アンタがこの、花の集落の番人か」
土埃が付いたワンピースは大胆に肌を曝け出し、お陰で見える球体関節が通常の人のそれではないと視覚を伝って知らせる。
ソイツが番人であり、ここしか『頼れない』理由であり、花園の管理を放棄した異国の人らが言うに、
「初めまして、だな────『人形』」
中級[魔術]、風光は見た者の認識をズラすだけ。
故に派生先も応用技もなく、その上もないのだがそれでも魔力の塊には変わらない。
異界の門から現れたらしいあの魔物は中央都市に向かった。
理由はおそらく魔力だろう。
先生から聞いた魔物の習性、そして先の戦いで[刻印魔術]を使った攻撃の時だけ敏感な反応と大袈裟な回避をした。
この事から予想するに何かしら魔力を感知する方法があるとして、そして見事に奴と、おそらく同じ機能を備えている『人形』が膨大な魔力の塊に反応しこの場に襲来した。
「話には聞いてたがホントに人間じゃないんだな。 とすると魔力器官も何かで補ってるって感じか……」
人以外が[魔術]を使う事はない。
単純に魔力器官がないから他生物が、ましてや人工物が魔力を操る器官がないにも関わらず"魔力を感知してる"ことが問題であり。
「[魔術]を使えばその分、アイツらの注意を引くことになる。 『人形』の力量は未知数で魔物の方も楽に倒せる相手じゃない」
「
「そうです。 だから先に話した通り……え、今なんて言いまし、」
俺には人のゲロをまじまじと見れる性癖はない。
もしかしたらこの国のどっかには居るかもしれないが少なくとも俺にはないので見ないでと言った先生の要望に背後に先生が位置する感じに前に出たのだが……
「なんで水に覆われてるんですか!?」
人の言葉のそれではないまるで水中で話してるような発言に振り向いて見てみたらなんか球状の水の塊に頭全体が覆われていた。
「
「いや……なに言ってるか分かりません……」
「
「…………(絶句)」
何してんだこの人……
「うっ……ふぅ……やはり水中での会話は難儀ですね……[魔術]を解いて無かったら危うく溺死するところでした」
「えぇ……てか[魔術]使ったんですか!」
「使いましたね」
「使いましたねって、いや、さっき、言った、注意、気を引く!」
「まあまあ……遅かれ早かれ試さなくてはならなかったですから。 本当に擬態出来ているのか」
「……それにしたって行き当たりばったり過ぎますよ……」
最近、この人の脳筋具合が凄まじい。
いや元からそのケがあったのかもだがそれにしても行動力が高い。
(なんにしても魔力の流れに敏感な奴等が反応しないのを確認できた。 後は機会を待つだけ)
『人形』と魔物の到着速度が予想外に早く意表を突かれたが結果的に問題ない。
そもそも奴等は"魔力の流れを感知して"、ここにやってきた。
普通に戦闘するなら[魔術]を見切られて対処されてしまうがこと誘き寄せるのを目的とするならば奴等は後手に回る。
つまりこの策は、
①『人形』と魔物を魔力で誘き出す
②その為に異界の門から溢れる魔力を操作し、貯蓄した上で花園まで来る。
③そこで貯蓄した魔力で中級[魔術]の風光を発動して『人形』と魔物を誘い出して戦わせる。
──と言う内容だ。
(異界の門は理屈はどうあれ膨大な魔力の発生源だ。 [体言魔術]はそれ用に作られた[魔術]。 ならエルフェイスがやったように自由に操作出来なくても湧き出る魔力で補充させる事は出来るはず)
結果は今の惨状が物語ってる。
風光は周囲に居る者に幻覚を施すがある程度見せる内容を術者が決める事ができ、"人間以外の生物を人間に魅せる"……と言った幻覚を奴等は見てるだろう。
『人形』は何か怒ってるふうに身を起こして震わしてる
「偶然が重なったのもありますがそれでも上手く行きましたね。 私自身、対空手段を持ち合わせていますが飛行する敵と戦いたく無かったですし」
「対空……と言うと初対面の時に剣士の一人を瞬殺した時のあの跳躍ですか?」
「ですね。 草履の裏に刻印を付けてて特定条件で限定発動させた事であのように跳躍する事が出来るのです」
恐らく[刻印魔術]の応用によるところだろう。いつか教えて貰いたいが今は戦闘に集中しなくては。
(と言っても誘き出せた時点でもう作戦は済んでる。 風光によって人間以外の生物は人間に見えて、かく言う俺達はもう一つ付け加えた"人間は別の生物に見える"の効果で擬態してるから『人形』の標的になら事はない)
後はアイツらが戦うだけだがいつまで経っても戦闘が始まらなかったらこちらが勝手に戦いの合図を送るまでだ。
なぁに。
ちょっとばかし
ボンだよボン。
爆発した[魔術]を受けた側は片方の攻撃として勝手に誤認して勝手に戦い始める。
(小狡いけど無傷で仕留めるにはこれしかないってか、ここまで準備するにも先生に掛かる負担が大き過ぎた。 なのに戦闘も任せるのは酷だ)
先生にして魔物と戦うのを避けたがる位だし、ましてや吐き気がする中であんなキモい造形してる奴と命のやり取りなんて願ったりしない。
それでも使命が、逃した責任が戦いを強要するならばいっそもう擦ってしまえ。
無傷で終わるならそれに越した事はないだろう。
「でもやっぱりあの方に申し訳無いですね……幾ら"殺人兵器"だとしてもあのクソ虫の敵意を肩代わりさせるなんて……」
「クソ虫って……まあ気を掛ける必要はないんじゃないですか? あれ、そんな事考える能力もなさそうですけどね」
貴重な文献である異物を暇潰しの道具として使い潰していた俺の記憶から探るに、機械で出来た人工物。
馬車の構造をより複雑にして、剣よりも鍛錬に造られた無機質な
それが花園の番人であり、また第三次生殖戦争にて数多の人を殺害した兵器だ。
(そんな兵器も結局は過去の遺物だ。 昔の人はどうやってあんなのを作ったのか知らんけど、敵対さえしなければ原因を探りもしない目の前の敵を倒す事しか出来ない兵器に感情なんてあるはずもないだろうしな。 情をかけるだけ無駄だ)
そう割り切って、俺は遂に始まった戦いを巻き込まれたら困るので移動した先の草むらから見守った。
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