第8話 エントランスホール
先程まで「ただのゲームに
ロゾールが真っ先に目を奪われたのは、空のように高い天井の、巨大なシャンデリアだった。
シャンデリアの吊るされた天井の中心から
しかし、目を
ホールの中央まで進みシャンデリアを真下から見上げれば、星の
「なんて素晴らしい眺めなのでしょう……。上手く言えませんが、富や権力を象徴する
「カイムラル、うまいことを言うじゃないか」
灰が落ちないように燃え殻を
ふたりがいる場所は、どうやらこの建物のエントランスホールのようだ。先ほどロゾールが駆け下りてきた大階段には、天井と同じ色のカーペットが掛けられ、踊り場には背もたれに時計が埋め込まれた椅子が置かれている。
踊り場から左右に伸びる階段の先には長い廊下が続き、そのどこかにロゾールが目を覚ましたあの部屋と棺があるのだろう。
いまだ深い闇に閉ざされた先の光景に、ロゾールの期待は高まるばかり。
骨ばった長い指を
チェッカー柄にはめ込まれた透明感のあるの
普段のロゾールであれば"おとぎ話じゃあるまいし"と吐き捨てられる空想でさえも、
恐る恐る進んだ先で、ロゾールの
なるほど。ロゾールが
像の右肩が、大きく
触れてみても、それが石でできているのか、はたまた金属でできているのか、ロゾールにはさっぱり分からなかった。
これでは、自身での
像は、ロゾールが
この様子では、カイムラルの手を借りたとしても、床から
「……すまない。後で必ず、"
床に片膝をつき、十字を握る像の手に両手を重ねて
(まるで、私の
そんな
大きな
その後は、顔の前で剣を
(これはもしや、ホール全体をチェス
チェスは、生前のロゾールが数ある
足早にホールを横断し、
よく観察すれば、同じ役割の
ふと、目が合ったように感じた王の像を
軽く
「……何の為に、彼は戦うのでしょうか?」
ロゾールの
「その問いについて、少年、君はどう考えますか?」
背後から返ってきた聞き慣れない男の声に驚き、肩を跳ね上げて言葉を失うカイムラルは、思わずロゾールの背の陰に身を隠す。
そんなカイムラルの様子を横目に見ながら振り返ったロゾールは、まるで
男は、白かった。これは
色素を失ったような髪や肌に、淡く血の色が透けている瞳の男は、固く重そうな
光の当たり方によっては
驚きのあまり声を失うふたりの様子に構うことなく、男は無言のまま右手でカイムラルを
カイムラルはふと王の像を仰ぎ見ると、自分の意見に自身が無い学生のように、
「……彼は、何かを守ろうとしているのではないでしょうか? 例えばそれは文化や、信仰とか……。目に見えず、触れられず、形として
冷や水を打ったような沈黙が広がる。
よっぽどこの重苦しい空気感が
「…………なるほど」
男は、短く
「思いもしない意見でした。素晴らしい。新しい
それまで、ピクリとも動かなかった表情を雰囲気だけ
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