第1章 ~死後の世界の街《ルグレ》~
第1話 "夜蜘蛛の女王"と呼ばれた男
世界を揺さぶるココン・ルティの鐘の
見慣れない景色に戸惑い、不安げに揺れるシグナルレッドの瞳は、何千年と
世界一と
あまりにも
1番目の招待客、ロゾール・ヴァニタス。
彼は、時代と宗教に忌み嫌われた名医だった。
ヒトならざるモノを連想させる赤い瞳と、死に最も近い
しかし生前のロゾールは、決して「時代が悪かった」とは言わなかった。
かわりに「それが彼らの知性の限界だ。仕方が無い」と言った。
このような発言から想像される彼の性格を
その原因が彼の言動にあるということは、事情を知らない者であっても想像に
敷き詰められたマリーゴールドの毛布から身体を起こし、ぎこちない動作で棺を抜け出したロゾールは、虚ろな瞳で何かを探して、薄暗い部屋をゆらゆらと
突然、深く着込んでいた上着を脱ぎ散らかし、彼の手荷物であろう大きな鞄の中身を、おもむろに床にばら撒いている。
挙句の果てには、棺の台座の下にまで潜り込んだり、マリーゴールドの花びらを乱暴に
明らかに正常を
しばらくの沈黙の後、お目当ての物が無いと知った彼は、ここで初めて感情を
音の無い薄暗がりに、
彼が探しているのは、生前、命の次に大切にしていた銀のモノクルだ。
それは、ある時の誕生日に、たったひとりきりの兄から貰った愛情の形だった。
慌てふためきながら部屋を飛び出したロゾールは、あてもなく見知らぬ建物の中を駆け回った。
奇妙にも建物の灯りは全て落とされており、影に濃淡を作る内装も、踏み外したと
一寸先すら闇に呑まれる廊下を
しかし、その扉はどんなに押しても、引いても、
ふと顔を上げると、
本当はわかっていた。こんなことは、無数に
そんな現実を再認識してしまった途端、
ふと、思い出したかのように魂が脈を打ち始め、繰り返される拍動により全身を巡る感情が、あたたかい雫となってしとどに心を濡らす。
"死"に分かたれて、初めて気がついた。
ロゾールが執着していたのはあのモノクルに対してではなく、モノクルに投影して見ていた兄の存在だったのだ。
決して、仲の良い兄弟だったとは言わない。だけど、他人が取り入る隙も無い程、目には見えない糸で固く結ばれたふたりだった。
ほたほたと
____二の腕をギリギリと締め付けるような強い圧迫感に、ロゾールはハッとして
背後から伸びるその力は痛いほどに強く、あっと声を上げる間もなく、ロゾールは大扉から引き剥がされてしまう。
『とんだ不届き者だ。一発かましてやる』と。
その声に勇気づけられたロゾールは、立ち上がると力任せに相手の手を跳ね除け、振り向きざまに右腕を鋭く振り抜く。
目元に残っていた涙の雫をパッと飛び散らせながら、ロゾールはこう言い放った。
「このっ……無礼者っ!!」
>>【招待者名簿 1/12】
ロゾール・ヴァニタス(18??~1907年)
享年:**歳
職業:医師・納棺師
身長:171㎝
駒名:ビショップ(黒)
役割:医師
魔法:「女王の夢占い」
・発生させた煙を吸った者に、幻覚を見せる。
・幻覚の内容を詳細に作り込む事もできるが、術者自身が幻覚に呑み呑まれる可能性も高くなる。
・煙の他にも霧や粉塵を操ったり、一時的に煙に身を隠す事もできる。
・代償は比較的大きい。
リーズエクラ民話「
当時の最新医療の常識を塗り替えた天才医師だったが、彼の死後、その情報の
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