私のお風呂はどこ?
池田…瑠美…。この工務店のオーナー…。
一旦整理しよう。とりあえず今分かることをまとめておきたい。
私の名前は池田瑠美、誕生日は1999年の5月8日で、今が2115年。つまり、私が産まれた時から116年経ってる…。私の記憶が正しければ、私は今16歳。てことは…私は2015年に誰かから封印魔法を食らってそれから100年たったって事…?
で、この工務店が2025年に開業してる…私が封印されてから10年後…。有り得ない。そんな記憶無いし…。
つまり…このオーナー池田瑠美は偽者…。
私視点からはそうなるよね…。
でももし…仮にもし…私が池田瑠美じゃなかったら…?この記憶も全て作り物だったら…?
そしたら私は…この私の記憶は……
「そんな訳…無いよね…ハハ…。」
途端に身体から力が抜けて壁にもたりかかり、冷たい床にへなりと座り込む。
埃で少し身体が痒い。お風呂…入りたいな。
「ルミちゃん…。今何考えテル?もし悩んでるナラ僕に手伝わせて欲しいんダヨ…?」
キブリは私に目線を合わせるようにしゃがみ手を差し伸べる。
元はと言えばキブリの痕跡を探しに来た。何も痕跡を見つけられなかったキブリはもっと悲しんでいるはずなのに。私は…。私はなんてわがままなんだろう。
背中とロングスカートの襟に着いた誇りを払って立ち上がる。
「心配かけてごめんねキブリ!この辺にさ?お風呂とかってないの?なんだか疲れたし今日はもう休憩したいな。」
キブリは突然立ち上がった私に驚いた様子を見せたが直ぐに元の様子に戻りまた検索を始める。
「んトー…2km先にセントーがアルヨ!中に寝泊まり出来る施設も併合してるみたいだかラそこに行こうか!」
「完璧!」
ここが2115年の銭湯…。
ちっせー!!?!?
「キキキキブリなにこれ何よコレ!小さなテンプレみたいな赤屋根の一軒家があるだけじゃない!」
目の前には赤い屋根の一軒家、よくアニメで見たことあるような見た目をしている。煙突は屋根の八割を占めていて、煙がとんでもない量出ている。
置き看板には『シェアバス』と書かれている。
「ハハルミちゃんは面白いネ!セントーは地下に広がってるんだヨ!」
そう言うとキブリは赤屋根の家の扉を開き手招きして見せた。
恐る恐るドアをくぐり抜けると、外観とは真逆の未来的な光景が目に入った。左右にはびっしりとパネル、中央にはエレベーターの様なものがあった。ふむふむ…。どうやらこのパネルにはタオルやシャンプーなどが売られているようだ。
「コーヒー牛乳まである…!こんな進歩しても古い慣習は残り続けるんだ…すご。」
「このエレベーターでセントーやホテルに行けるヨ!まずはここで買い物をしてかラ行こネ!おカネは僕がダスヨ!」
「ありがと!じゃあ2時間後またここで集合ね〜…てか、キブリってお風呂入れるの?」
「僕は入れないヨ!防水だけど入る意味が無いからネ!だから散歩してくるヨ!ゆっくり楽しんでネ!」
そう言うとキブリはまた外へ出ていった。
なんか寂しいなぁ…。けど、まあいいか。今はお風呂お風呂!
エレベーターの開閉ボタンを押して乗る。”セントー”と書いてあるボタンを押してみる。
ゴウン…ゴウン…。
「目的地に到着しました。お客様、丁度3秒後にそのまま真っ直ぐお進み下さい。段差などはございません。ごゆっくりお楽しみくださいませ。また、セントー内には音声サポートが引き続き御座いますゆえ、気にせずお楽しみください。」
すご…盲目の人でも来れるようになってるんだ…。
扉が予定通り3秒後に開きふわりと硫黄のような匂いが鼻に飛んでくる。
「…すご…!なにこれ…」
眼前広がるは横10m程の大きなモニター、左右には赤い暖簾と青い暖簾。自販機があったりレトロなポスターが貼ってある。お客さんもまばらにいるようで、左手前側にある畳の部屋で寝ていたり右手前側の食堂で談笑している。どうやらここはロビーのようだ。
その光景はどこか懐かしいような、古い記憶の匂いがした。てか、今まで人に出会わなかったからなんかすごい感動…。普通にちゃんと人間だ…。
ドキドキを胸の奥に押し戻して赤い暖簾をくぐる。
「とりあえずお風呂だお風呂!ウォー!…え?」
裸体の男たちがこちらをジッと見つめる。
「ちょ、ちょっと変態ー!!!」
「キャー!もう何よこっちは男湯!」
「み、見ないで…。」
阿鼻叫喚。男たちは悲鳴をあげタオルやロッカーの扉で裸体を隠す。
私は咄嗟に逃げるように後ずさりしてその場を去る。
「すみませんでしたー!」
赤い暖簾って…普通女湯じゃないの…?
はあ何はともあれ…青い暖簾か…。気狂うなあ…
ぴらりと暖簾を潜り先へ進む。
「な、なんでよ…。」
するとそこには同じように裸体の男達がいた。
「ん?なんだ嬢ちゃんここは男湯だぞ?」
「カカカ!何してきてんだこの女!」
「裸が見たいならじっくり見せてやるからこっち来いよォ…?」
「失礼しました!!!!!!」
はぁ!?!?なんでどっちも男風呂なの!?
怒りを腹に抱えながらさっきのロビーに戻る。
「んん?そこの赤髪のお嬢ちゃん、まさかここに風呂入りきたんか?」
身体から湯けむりをホカホカ上げるおじさんが椅子から立ち上がり私に向かって呆れた顔で話しかけてきた。
「え、えぇ…まぁ。」
私がそう答えるとおじさんは笑いだした。
「プハハ!ここは男専門セントーだぞ!青い暖簾は心が男、赤い暖簾は心が女のな!」
「は、はぁ!?つまりえと、その私は…大きなお風呂に入れない…と?」
「プハハ!そういうこった!ここは飯と寝泊まりできる部屋がいいから女も来るけど、お風呂目当てで来たやつは初めて見たなぁ!ま、部屋の風呂でも使うこったな!」
マジで何なのよ…。この世界………!
「もぉ〜〜私の大浴場はどこぉ〜!!!!!」
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