特別な魔法

「ルミ〜!ルミ〜!」

あれ…ここ、学校…?って…美咲じゃん。

「ちょっと早く起きんと〜次の授業始まるよ〜?昨日ちゃんと寝たのー」

ごめんごめん…昨日は魔物が出てきてて、それで寝れなくて…テストがあることもわかってたんだけど…さすがにクッタクタで…

「もう置いてくからね〜!怒られても知らんよ〜!」

待って…行かないで美咲…お願い行かないで

「行かないで…」

「ルミチャン!目が覚めたみたいだネ!」

あ…れ?眼前に広がるのは青緑色の寂れたロボットと、真っ黒な空と明るい空気。

「あ〜思い出した…やっぱりアンタ!私をなんかどっか連れてって改造しようって魂胆だったのね!あんな急に」

首を傾げるキブリ。

「ごめんゴメン!そんなに怒らないデヨ!今もこうやって何も異常なく話せてるじゃナイか!そんな酷いこと、僕はしないヨ!」

「はぁ…本当に?私、いつでもあんたぶっ飛ばせるから!…まあその、それで、とにかく目的地はここ?」

土埃を払い立ち上がり周りを見渡す。

やけに潮臭いと思ったら、港のような場所で、大きな工場がある。月明かりでかろうじて全貌が見えるということは、都市部からはかなり離れているのだろう。

「そう!ここは昔ロボットを製造していた工場ナンダ!いくつかある候補の中で1番何か痕跡がありそうな場所だヨ!ロボットは合理的だからネ!」

そう言いながらキブリは扉を強引にねじ開けて中に入っていった。よっぽど気になるのだろう。私も少し遅れて後を追い中に入った。

「ホコリまみれで汚くてヨクミエナイ…。ぼくはプロトコルアイを持っていないから見づらいネ…。」

「魔導六唱の四、エアロ」

ぶわぁと大きな風が吹きホコリを飲み込み外まで飛ばす。

「はい、これで存分に見えるでしょ。私も手伝うから、さっさと終わらせちゃお。」

「へ、へ!ルミチャンのそれはなんて言うカセットナノ!?とても便利だけド!どうせぼくには使えないんだろうナ…」

「これは魔法だよ。あんたらみたいな機械とかカセットとかじゃないの。自然の力を利用するの。」

「ぼ、ボクにもあとで魔法を教えてヨ!」

「魔法は限られた”人”しか出来ないからなぁ…。あ!あとで素敵な魔法教えてあげる。だから先にキブリの痕跡探しね〜。」

「ハイ!」

その後二人でくまなく工場を散策した。

…しかし。

「ダメだ〜まるで見当たらんない。その、鉄谷博士っていう名前すら見てないよ。」

「ウウーン…。」

キブリは酷く項垂れている。

「なんでそんな落ち込んでるの。」

「だって…ここが一番有力だったんダ…。ココにナイナラ、他のところにもキット痕跡はないヨ。」

こんなキブリの落ち込んでる姿初めて見た。まあ会って1日も経ってないけど。

「…分かった。取っておきの魔法、教えてあげる。右手出して。」

キブリは項垂れながら大きな右手を伸ばした。

「魔道六唱外の術、ネバギバ!」

温く小さな手で、冷たく大きな手にハイタッチする。

「これは私取っておきの魔法。とにかく諦めんなって魔法!これなら、キブリもできるでしょ?」

キブリは顔を見上げて口角を上げる。

「…ウン!アリガト!ルミ!ネバギバ!ネバギバ!」

「よし!ちょっと休憩したらまた工場散策ね!まだ隣にもあるから!絶対諦めないよー!…の前に…キブリィ…ご飯とかぁ…ある?」

「ウウーン、花はご飯に入ル?」

「食べれるか。んなもん。ああ無理。もー無理。動けん。」

「ルミ…?アレ…??ネバギバ…??」

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