計画通り

全身が痛い。肺は息を吸うのに精一杯で上手く喋れない。

「ハァハァ...フーリスに...捕まるくらいならよォ...飛び降り...てやるぜ...」

最後の力を振り絞り、全力で走る。窓まで残り2m、

「待て!行かせんぞ!」

タツーニが撃った光弾が右脚のふくらはぎに当たる。

「イテェ!くそがァ!」

それでも走りを止めない。止められない。残り30cm。

「待て!自殺する気か!」

「へ、お前が言ったんだぜ?でも受ければいいってな!あばよ!」

窓に突っ込み、上空を舞う。空中ハイウェイ、デリバリーロボ、ホロモニターそれらを横目に落ちる。

もちろん、自殺する気などない。全て予想通りだ。落下する、100m下の大通りにはさっきのホバーバイク。エンジン自動修復に集中する為、他の機能を抑え、降下しているだろうと予想していた。的中。

「ホロクッション展開しろ!」

ホバーバイクからクッションが展開される。勢いよく落ちる俺を受止める。

「作戦成功...!後は逃げるだけだな...!ヒヤヒヤしたぜェ...」


ホバーバイクのエンジンをふかす。...あれ?動かない。


「ケダココ法第1条『やられたらやり返さなければならない』だっけ?」


「誰だテメェ...?」

ホバーバイクの真下に、大荷物を持ったとんでもない形相をした青年が居た。


「それ、俺のバイク。返してもらうよ。」

そう言うと青年は俺の頭を肉の塊で殴った。

数秒後、冷たい地面の感触がした。


「やっと捕まえれた...ホロタクシー無かったら終わってたわ...はあ...店長に怒られるだろうなぁ〜。」


「君!極悪人逮捕の協力をしてくれて、ありがとう!全く...本当に自殺する気かと思ったぞ!

何はともあれ助かったよ!君がいなかったら逃げられてたからな!」

「は、はい...」

「またどこかで会おう!」

そう言うと、フーリスの男はクロックス野郎を抱え、ホバーバイクに乗りどこかへ飛んで行った。

「まあ...一件落着だな...」






数日後.....

「それじゃあデスちゃんチップス30個と、合成肉を4キロお願いねぇ!」

「店長そろそろデリバリーに頼りません?」

「何?あたしに文句があるの?食べちゃうわよ!人が運ぶから物は存在してるのよ!ロボットなんて味気ないわ!」

相変わらず頑固で古い人だな...

「そっすよね〜...了解しました。」

ホバーバイクに乗り、スーパーへ。

「待たんか〜!地の果てまで追いかけるぞ〜!」

「ひ、ひぃ!勘弁してください!」

「待つものか〜!お前はケダココ法第42条『楽曲の違法ダウンロードをしてはならない』を破ったんだからな〜!」


「はあ..いつも通りだなぁ..」

相変わらずうるさいこの街から耳を塞ぐように曲を流す。最近はレトロなロックにハマっている。ボヘミアン・ラプソディは、古い曲だが名曲だ。


スーパーに着き、バイクを停める。新たな防犯設備をつけているから、もう安心だ。



「デスちゃんチップス今日3400円って!高ぇな...」


   

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