しつこい男

ハァハァ...やるぞ...俺は...やるぞォ...。

監視システム、Vーseeingを避けるため裏通りへと隠れる。

息を整え、唾を飲み込む。額の汗を拭き、靴下を履く。

「あとは...クロックス履くだけだなァ!?行くぞォオラ!」

勢いのまま、足をッッ!!靴下を履いているにも関わらずッッ!!突っ込む!!クロックスを、履いた!!

「成し遂げたぜェ!!ケダココ法12条を破ってやった!これで2個目だぜ!っ〜!!」

犯罪を犯すときのなんとも言えない高揚感、背徳感、それは何物にも代え難いものがあるッ!!


刹那、監視システムのVーseeingが作動し、警報がなる。

「規約違反者ヲ発見シマシタ!!至急、フーリスヲ要請シマス!繰リ返ス!規約違反者ヲ発見!至急フリースヲ要請シマス!」


何故!?確かにVーseeingが!監視プログラムがない所で行ったはずだ!まさか...


上を見上げる。排気電子に塗れて、Vーseeingがこちらを見ている。


「ここか〜!犯罪者はここか〜!?」

表通りからフーリスが、ホバーバイクに乗りながらこちら目掛けてやってくる。

「なんでこんなに早いんだ熱血野郎がよォ!」

急いで走る。ゴミ箱、捨てロボ、ホロパイプを避け、裏通りから人通りの多い表へ出る。

しかし、人に群れようとも無駄。ターゲットをロックされている。

「くそ!せめてバイクがありゃな...っお!」

古いスーパーの前に古いホバーバイクが停められていた。

「旧式だが仕方ねぇ!」

電子キーをバイクに刺し、電圧を変えて無理やり動かす。

「オラァ!チェイスだ!馬鹿フーリスゥ!」


「待て!止まりなさーい!」

「止まらねえよ!オレが何したって言うんだァ〜!?」

「お前はケダココ法12条!《クロックスを履く時靴下を履いてはいけない。》を破ったんだ!当たり前の処置だ!待ちたまえ!」

「くっそ〜!なんでバレたんだよ〜!!」


「待たんか〜!!!」

「待つもんかよォ〜!?俺はまだまだ犯し足りねえ法が沢山あるからなァ〜!」


空中ハイウェイの下を潜り、高層ビルの隙間を縫うように走る。

「旧式でも中々良い動きするじゃねえか!?」

フーリスも真っ白な警備用バイクで後ろを追いかけて来る。流石に最新式は速い。

「くそ!止まらぬならもう知らん!喰らえ!」

そう言うとフーリスの男は光線銃を乱発する。

「うわッ!!アブねェ!」

一発の光弾が頬の真横を突き抜け、高層ビルのガラスを割る。

「おい!当たったら死ぬぞォ!?」

「知らん!受けたらまた生き返れるだろうが!」

そう言うとフーリスの男はまた光線銃を乱発する。

一発、二発、弾を避けるが、三発目が機体に当たる。エンジン部分に穴が空き、バイクがよろける。

「このままじゃビルに突っ込んじまう!仕方ねェ!」

ホバーバイクから飛び降り、受け身の体勢を取り、ビルの窓に突っ込む。

ラッキーなことに廃ビルで、人は居なかった。

「袋のケミカルマウスとはまさにこの事だな...?」

フーリスの男はふわりと、割れた窓から侵入する。

「どうせだし自己紹介しようぜェ...?俺はトリッシュ。テメェは?」

「私の名前は湯島タツーニ。」

「名前の最後がニって事は...ユーゲル人かよ!きめェ!」

「うるさい!さっさと観念しろ!」

光線銃が放たれる。

一発目、両足の間を通り抜ける。二発目は左足元、三発目は右足元と、全く当たらない。

「しょぼいな!エイムもクソもないなァ!」

「バカはこれだから困る!落ちろ!」

途端、撃たれた部分に穴が空き、ヒビが入り、床が俺ごと落ちる。

「うわあぁあああァ!?」

「おらオラオラ!落ちろ!落ちろ!」

何度も何度もタツーニは床を撃ち、俺を下へ下へと落とす。その度に身体を思いっきりぶつけ、口から血が吹き出る。

上からタツーニがジャンプして降りてくる。12m下へも悠々と降りてくる。


「オラ、観念したか?もう立つのも辛いんじゃないか?さあ、お縄につけ。」


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