感想

エリー.ファー

感想

「見ました。あの映画」

「見た」

「どうでした」

「どうと言われると」

「難しくないですか」

「難しいよな。そうなんだよ。感想が難しいんだよ」

「だって、そもそもラストとか言ってましたけど」

「そう、結局ああいう撮り方ってことはラストじゃないじゃん」

「そうなんですよ。あれ、どう考えてもラストじゃないですよね」

「そうなると、感想も変わってくるじゃん、正直な話。だってさ、もう単純な面白いか面白くないか、という所から大きく外れてくるわけよ」

「えぇ、その通りです。もう話が違ってきますよね」

「そう。こっちは、ラストですよっていう心構えで行ったわけだ。今までの青春がどうなっていくのか、それはもうこっちの青春でもあるし、スタッフさんたちの青春への結論なわけじゃん。監督からこのコンテンツに関わった人たちすべてに送るアンサーなわけじゃん」

「そうです。そう思ってみましたし、それが正解だと思っていました」

「でも、エンディングの少し前くらいで」

「そうなんですよっ。なんかおかしいぞみたいな感じになりますよね」

「そう、なるんだよ。ならざるを得ないんだよ。だって、主人公が死んでないんだもん」

「犠牲になってないということは、つまり」

「そう、終わっていない」

「ずるいですよね」

「うん、ずるい。だから、こっちも感想を固めることができない」

「後だしジャンケン過ぎますよね」

「そう、それじゃあ、勝てるよ。みたいな話だよな」

「全くです」

「監督のインタビューとかも公開前に出てたけど、俺、見なかったんだよ」

「私もです。事前情報なしで楽しみたかったので」

「でも、こんな感じだったら見てもよかったな」

「そうですね。幅がある状態にした方が変な感じにならなかったかもしれませんね」

「期待し過ぎたのかな」

「いやいや、期待しちゃいますよ。それが普通ですって」

「そうだよなあ」

「そうですよ。あそこまで煽って煽って煽って煽って、それでラストを叩きつけますって、そういう宣言が前作だったわけですから。それは、先輩だけじゃなくて、私もそうですし、皆だってそうですよ」

「だよなあ」

「えぇ、それは間違いありません」

「これで、もし」

「はい」

「俺たちが少数派だったらどうする」

「え」

「みんな、こんなに憤ってなかったらどうする」

「あぁ。なるほど。その場合はなんというか、ちょっと怖いですね」

「だよな。逆に怖いよな」

「どうしましょう。私、急に他の人の感想を見るの怖くなってきました」

「大丈夫だ。俺がついてる。二人で見よう」

「そうですね。受け止めましょう」

「あぁ、感想も創作の一つだからな。俺たちは自分の創作物に責任を持つべきだ。もし、少数派だったとしても胸を張るべきだし、最悪お墓をたてよう」

「先輩のそういう所がマジで好きです」

「ありがとう」

「先輩」

「なんだ」

「今のは告白です」

「う、うん。映画愛とはそうであるべきだよな」

「いや、そういうことじゃなくて、先輩のことマジで好きです」

「え」

「先輩への恋愛感情のことです」

「え、マジで」

「マジです」

「あ、そう」

「ダメですか」

「いや、ダメってことはないけど」

「ちゃんと言ってください」

「いいの、俺で」

「先輩がいいんです」

「あ、ありがとう」

「どうしたんですか、先輩」

「どうしたもこうしたもねぇよ。付き合うのは全然いいけど。ちょっと、戸惑ってるんだよ」

「あの、感想どうしましょうか」

「感想どころの騒ぎじゃねぇよ。ちょっと、飯食いに行こうぜ」

「焼き肉がいいです。あ、でもちょっとお財布に余裕がないから、安い所で」

「大丈夫だよ。俺、女には奢らねぇけど、彼女には奢るから」

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