17−11

 そのうち喜美がマイケルの元に新しい料理を運んできた。香ばしいソースとマヨネーズの匂い。たこ焼きだ。紙皿に8個並んでいる。普段の俺は大好物だが、今の状況ではソースとマヨネーズの組み合わせは後がキツそうだ。


「おー、オクトパス、ホールか! これは美味そうだ!」


 マイケルが揚々とつまようじを掴み、たこ焼きを突き刺して丸々一個口に放り込む。口に入れた瞬間に顔をほくほくさせ、咀嚼しながら「んー! デリシャス!」などと言っている。その様子を見て、見物していた子どもが物欲しそうな目を向けてきた。


「くそっ、負けるか……! おい喜美! 俺にもたこ焼きくれ!」


 ようやく焼きとうもろこしを完食した俺は喜美に向かって叫んだ。喜美が頷き、走ってたこ焼きの皿を持ってくる。

 テーブルに皿が置かれると同時に俺はつまようじを取り上げてたこ焼きを口に放り込んだ。急いで食いたいのにたこ焼きはまだ熱くて、はふはふと口の中で冷ましながら咀嚼する。ソースとマヨネーズが絡まった皮はほどよくカリッとしていて、具材のたこは大きめに切られていて噛み応えがある。どうせならゆっくり味わいたいと思うものの、それができないのがもどかしかった。


「ヘイ、ガール! 次を頼むよ!」


 やっとのことでたこ焼きを3個食ったところで、隣からマイケルの声が飛んでくる。テーブルに置かれた皿は洗った後みたいにぴかぴかだった。ソースやマヨネーズの滓すら残っていない。あれだけ早さを駆使していながらこんなに綺麗に食えるなんて、この人どんな食い方してるんだと俺は訝った。


 喜美が急いでマイケルのところに次の料理を持ってくる。鼻を突くソースの匂い。焼きそばだ。こっちも大好物ではあるが、たこ焼きの後にこれはキツい。


「オー、フライド・ヌードルか! うちの店の人気フードだね! ボリュームマックスでスタミナもマックス! 海をエンジョイするにはヴェストだよ!」


 マイケルがノリノリで言いながら箸で焼きそばを混ぜ始める。ソースと青のりがいい感じに絡まったところで身体を屈め、麺を勢いよく吸い込む。口の中で転がし、満面の笑みで一言。「んー! デリシャス!」台詞と表情に触発されたのか、手前にいたギャラリーの何人かがごくりと唾を飲み込んだ。あれだけの量を食いながら食レポまでするなんて、こいつどんだけエンタメ精神高いんだよ。


「……って、感心してる場合じゃないか。おい喜美、こっちも焼きそば!」


 かっ込むようにたこ焼きを食い終わったところで喜美に向かって怒鳴る。すでにゲップが出そうになっていたが、何とか堪えた。にしてもこれ、勝ち目あるんだろうか。

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