14−7
「じゃ、焼き上がったところで後はトッピング! ソースとマヨネーズをたーっぷりかけて、その上に青のりとかつお節を散らしまーす! お好みで紅しょうがを添えても美味しいよ!
というわけで……『お腹も満足・とん平焼き』の完成でーす!」
出来立てほやほやのとん平焼きを自慢げに掲げながら喜美が高らかに宣言する。卵は具材がたっぷり詰まってはちきれそうになっていて、ジグザグにかけられたソースやマヨネーズがさらにボリューム感を増して食欲をそそる。ソースの香ばしい匂いが鼻の穴を突いて俺は腹の虫が鳴りそうになった。
「うっわー、うまそー!」昌平が身を乗り出して叫ぶ。
「やっぱとん平焼きっつたらこのボリュームだよな! カロリーとかガン無視してとにかく腹いっぱいになる感じで!」
「そうだね! このボリュームなら男の子も満足! えっと、ご飯とお味噌汁もあった方がいいよね?」喜美が昌平に尋ねる。
「はい、お願いします!」
「オッケー! じゃ、全部そろってから持っていくね!」
喜美がとん平焼きを持ったままいそいそと厨房の奥に駆けていく。奥にご飯と味噌汁のジャーがあるので入れに行くのだろう。
「あー食べるの楽しみだなー」昌平がはしゃいだ様子で身体を揺らす。
「あのとん平焼きぜってー美味いだろうなー。腹減らしてきてよかったー!」
「つーかお前ちょっとは遠慮しろよ。ご飯と味噌汁だって金かかってんだぞ」
「大丈夫だって! 食わせてもらった分はちゃんと払うから!」
「当たり前だ。……ったく、あいつも知り合いだからって何でもかんでもサービスすることないのにな」
「おーおー彼女の心配? いやー熱いねぇ」
「うるせぇ」
冷やかしてくる昌平を睨みつけるも全く気にした様子がない。そうこうしている間にお盆を持った喜美が厨房から出てきた。
「はい、お待たせしましたー! 改めまして、『お腹も満足・とん平焼き定食』でーす! ご飯はお代わり自由だから欲しかったらいつでも言ってね!」
「おーマジですか!? 俺3杯くらいいっちゃうかも!」
「だから遠慮しろっての……」俺はため息をつく。
「いいんだよ! いっぱい食べてくれたらあたしも嬉しいから! じゃ、今度はオムライス作るから涼ちゃんはもうちょっと待っててね!」
「わかった」
「じゃ、ごゆっくりー! 何かあったらいつでも呼んでね!」
喜美がとてとてと厨房に戻っていき、客席と厨房を仕切るカーテンを閉めた。実演調理が終わったからだろう。そこにいるのはわかっているのに姿が見えなくなると少しだけ物足りなくなった。
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