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月川

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「あーッ!ナイ!」

ランチをとるために、

いつもの席についた淑郎(しゅくろう)が叫んだ。


「今日はカラアゲにしてって、言ったのに」

淑郎はガクリと肩を落とした。


「あ・・・そうだった。すぐ追加するよ」

政宗は席を立ち、キッチンへ消えていった。


ほぼ同時に三成も立ちあがり、

政宗の後について行く。

「なんだよ、三成」

政宗は不機嫌そうな三成に言った。


「俺だって肉ジャガ頼んどいただろうが!」

「あ?そうだっけ?忘れてた」


「・・・お前!ずるいぞ!淑郎のカラアゲは作るのに!

俺のこと邪険にして!」

三成は怒りを一気に吐いた。


「そんなことないだろ?」

政宗は手を動かしながら、

適当に答える。


「じゃあ!なんで、肉ジャガ作ってくんないんだよ!

淑郎ばっかりズルイだろ!」

三成は、

振り向きもせずカラアゲを作る政宗の背中に向かって、

熱く抗議した。


「三成・・・」

政宗は汚れた手を洗い、振り返った。



「お前・・・うるさいよ。ソレやきもち?」


「ち・違う!差別だって言ってんの!」

「だから、肉ジャガは明日作るって言ってんだろ!」

「な!そんなこと今はじめて聞いたわ!」


二人の間に火花が散った。


「ふんッ」

三成は腕を組み、

そっぽを向いた。



1分後・・・


政宗は、

突然、

濡れた手で、

三成の頬に触れた。

ヒヤっとした感覚が三成に伝わり、

三成は政宗を見た。


政宗の視線と正面からぶつかった。

出しっぱなしの水の音が妙に耳につく。


三成が蛇口に手を伸ばそうとした瞬間、

「じゃお詫びに・・・」

政宗の声が聞こえた。


二人の間にあった空間が消え、



政宗は三成にキスをした。



「・・・・」


一度クチビルを離し、

もう一度重ねた。


最初のキスより、

少しだけ深くクチヅケる。


「・・・・」

「んッ」


三成はハッとして政宗を突き放した。


「お前はッ

二度もすんな!舌いれんな!」

三成はキッと政宗を睨んだ。


「だって反応なかったから・・・」

政宗は余裕な顔つきで、

三成に言った。


三成は政宗の態度に再び怒りを爆発させたが、

睨むしかできなかった。



「だよッ!明日は絶対!肉ジャガにしろ!」

三成は吐き捨てて、

キッチンを出ていった。


「わかりました。三成様」

政宗が笑いをこらえながら、

三成に皮肉めいた言葉を送った。


「笑うな!」

三成は勢いよく扉を閉めた。






政宗は再び腕まくりをして、

カラアゲを作りはじめた。

「明日も肉ジャガ作んのやめようかな」

政宗の小さなつぶやきが、

窓の外を流れる風に舞った・・・




pledg=誓約

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