第2話 入学式前日
高校入学式の前日の話
僕が受験した高校は公立皆三鷹高校、高校の中でも上の中ぐらいの公立高校だ。
学力面はもちろん、スポーツでも有名で、大手企業やヤクザの組長などのお嬢様なども入学してくるぐらい有名な公立高校だ。
入学式前日の朝のことだった。
僕は陰キャなりの楽しい高校生活を送るために計画を練っていた。
「う〜ん、陰キャが楽しむためにはやっぱり、まず友達作りからだよな、、」
椅子に座り、手を組み、考えていた。
しかし、中学生の時はろくに友達がおらず、友達の作り方など、考えていたら、入学式前日に迫っていた。
「そもそも陰キャにとって楽しい高校生活ってなんだ?」
彼は考えすぎて一歩目からいきなり壁に当たってしまった。
考えていると階段の登る音が聞こえる。
「お兄ちゃん、朝ごはんだって…お兄ちゃん、何やってんの?」
妹が冷たい目で僕を見る。
僕は「なにが?」と答えるがそう思うのも無理もなかった。
気づいたら、パンツ一枚で逆立ちになって考えていたのだ。
僕もふと、なんでだ?と思いながらも平然と食卓に向かった。
いつも通り家族四人での朝ごはん。
けど少し変わったことがある。
それは親と妹が僕に対する態度を変えたことだ。
受験生の頃は基本、僕に話しかけることがなかったけど、今は、、、
「お兄ちゃんさ〜私は妹だけど、一様女の子なんだから、あんな変な格好やめてよね」
少し恥ずかしそうに頬を赤くして妹は注意した。
「ごめん……」
「あら、、どんな格好だったの?」
「母さん、その話はもういいよ!」
僕は朝ごはんを急いで食べて、そのまま自分の部屋に戻った。
「あらあら、思春期ね、、、」
お母さんは笑っていた。
妹もすぐに朝ごはんを食べ終える。
「じゃあ、お母さん、私、友達と遊んでくるから」
一言、言って、妹も部屋に戻った。
僕は部屋で考えても仕方ないと思い、外に出た。
家の近くの川の当たりで桜を眺めながら歩いていると、一人の女の子が自転車の前でうずくまり自転車を真剣にまぶたを細めながら、何か困っている様子だった。
僕は話しかけて助けるべきか迷っていた。
周りを見るとみんな無視をして通り過ぎていく。
……助けるべきか?でもな〜
そう考えていると、少しずつ女の子との距離が狭まっていく。
そこで僕はふと思った。
……陰キャが高校生活を楽しむためにはある程度のコミュニケーション能力は必要だ…そうだ!これを練習だと思えばいいんだ!
ちょっと現実逃避をしながらも、助けることを決意した。
陰キャにとって人と話すこと、特に初対面かつ女子に話すことはとても難しいことだ。
僕は勇気を振り絞って女の子に声をかける。
「ああ、あ、あのどうしましたか?」
少し口調が硬くなってしまったが女の子に声をかけることに成功した。
僕は内心初めて自分から女の子に声を掛けたことが嬉しく、心の中でガッツポーズをした。
「あの〜自転車のチェーンが変な風になってしまって、、」
上目遣いで話す女の子、可愛すぎて目が潰れそうだったが耐えながらも自転車のチェーンを見る。
「え〜と」
僕は自転車のチェーンを確認すると見る感じすぐに直せそうだったのでチャチャっと直した。
「これで大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!」
大きく頭を下げながら、お礼を言う女の子。
「そんな、大したことは」
「そんなことないですよ、、そうだ!お礼に……お礼に…」
女の子は僕にお礼をしたいのか、「お礼、お礼」と呟きながら考えている。
「いいですよ、お礼なんて」
「そんな!そうだ、LINE教えてください!後日、またお礼をします!」
「でも…」
目を輝かせながら、僕に迫る女の子、その勢いに負けた僕はそのままLINEという名の連絡先を交換した。
「では!また後日、連絡します!」
女の子はそのまま自転車を漕いで去っていった。
「初めての……」
それ以上は言わないが、内心とても嬉しかった陰キャだった。
「後日か、、明日入学式なんだけど……」
そのまま僕は家に帰る。
玄関先にはお母さんがいた。
「ゆうちゃん、遅かったわね、もう17時よ、お昼は食べたの?」
「17時?」
ふとスマホを見ると17時だった。
なんとお昼を食べずにずっと散歩をしていたのだ。
「う……ん…外で食べたよ」
俺は不意に嘘をついてしまった。
「そう、ならいいわ」
そのままお母さんはリビングに向かった。
「……全然、気づかなかった」
そう思いながら祐樹は自分の部屋に戻り、今日あったことを思い出していた。
「初めて、女の子と、、えへへへへ」
スマホでその子のLINEを見つめて、変な顔で笑う。
「そうか、、やっぱり陰キャが楽しむ上で陽キャのようにはいかないけど、積極的に話すことが重要なのか、、」
祐樹はいいことがあったと同時に、自分なりの答えも見つけていた。
「よし、最初にやることは積極的に話す!これで決まりだ!」
最初にやるべきことを見つけた祐樹はそのままリビングに行き、夜ご飯を食べて、そのまま眠りについた。
朝、起きて新しい制服に着替えて僕は親と一緒に高校に向かった。
結局、例の女の子の連絡はなかったが、そんなことを忘れ、水森祐樹は新しい高校生活にワクワクしていた。
そして、高校の門をくぐろうとすると、後ろから声が聞こえた。
「あの、すいません」
僕は自分ではないだろうと思い無視をする。
「あの!すいませ〜ん!」
その声はどんどん大きくなり、その声は近づいていく。
僕は後ろを振り向くと、そこには昨日、助けた女の子がいた。
「あの、、昨日ぶりですね」
その笑顔はとても眩しく可愛かった。
「2022年1月3日/改編」
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