番外編(弟のまわりの人々)

 弟が倒れて以来、弟がキャプテンを務める野球部の顧問や担任の先生方が全力で弟のサポートをしてくださっており、特に顧問の先生は弟にビデオメッセージを撮って下さっていた。顧問の先生曰く、弟は試合の際に顧問に自身が先発をしたい旨を直談判していたことがあり、その気迫に押され、登板予定のなかった弟に先発を任せたことがあったらしい。そんなこともあり弟と顧問は特別仲が良く、特に弟の様子を気にしてくださっていた。

 また、クラスのムードメーカー的存在であった弟を心配したクラスメイトの子たちが毎日のように彼のLINEを鳴らしていた。担任の先生曰く、弟が友人と結託して机に貼り付けた顎のとがった遊戯王の城之内がズレる度に友達が直してくれているという。とにかく彼は周りの人に愛されているのは確かであった。私たち家族は、今回のことを通して初めて彼の新たな一面を知ることになった。それは、私たちにとって嬉しいことであった

 病院では、面会ができない代わりに定期的に電話で弟の様子の報告があったり、看護師さんたちを中心に写真の貼られた日々の記録帳のようなものが作られていたりしていた。また、打ち解けた看護師さんたちと好きな漫画の話やトランプをするなど辛い入院生活にも楽しみもあるようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る