第14話
「うー……寒い。雪はまだ降ってないけど冬本番って感じだね」
ダブルヘッドパンサーとの戦闘からしばらく経って、私は黒焦げとなり人の居なくなった村を白い息を吐きながら歩いていた。
あれから偶に様子を見に来ていたんだけどこの村は廃村になった。冬間近で家の殆どが燃えて食料も0、男手も減ったから行商人が立ち寄った時に生き残った村人たちは村を捨てて去っていってしまった。
(多分クローディアに向かったのかな……あの子元気でやってると良いけど)
行商人の一団の馬車に乗って村を去る時に見たけど両親と一緒にいなかったからね……ただ単に別の馬車に乗ってただけかもしれないけど。
「いくら心配したとしても私はもう他人だし……気にするだけ無駄か」
私はそんな風に思いながらもどんどん村を進んでいった。この村はもうずっと廃村だろうなぁ……
この世界の村や町って2種類あって、1つは領主の庇護化にあるもの。これは定期的に税を納めないといけないけれど行商人を送ってもらったり有事の際には兵士を送ってもらうことができる。今回のダブルヘッドパンサーは唐突だったからか兵士の派遣はダメだったようだけど。そして呼ばれ方としては普通に村かな?
もう1つは領主の庇護下にない村。これは税を納める必要がないけど行商人や兵士を送ってもらうことは無い。まぁ、行商人は金の匂いを嗅ぎつければ来るだけどね……一応こっちは開拓村って呼ばれている。こっちの方が1つ目より圧倒的に少なくて隠れ里的な場所もあれば盗賊の拠点だったりもする。
(別にこの村対した特産品も無いし、町から町への交通路というわけでもない。新しい村人も送られてこない可能性が高い。領主もお金をかけて元が取れないようなことはしないだろうからね……
「とはいえこれ放置されていると盗賊とかが住み着くんだよね……定期的に駆除しないとかな」
そんな物騒なことを呟いていると目的地……村の外れにある墓地に到着した。私はその墓地の端の方にある2つの墓石の前に立った。
「…………お父さん。お母さん。久しぶり」
私は墓石の前でしゃがむ。前世のことを思い出したからか記憶はあまり無いけれど私のことを愛してくれた……大事な人たちだった。
「村無くなちゃったよ……別に気にしてないけどね。あの子のこと助けることができたし」
私は両親の前で今まであったことを淡々と話した。時間を忘れて話しているといつの間にか雪が降り始め少し周りの地面が白くなっていた。
「そろそろ行くね……また来るから。これ置いとくね」
私は墓石の前に町で買ってきたお酒を置いた。安いお酒だけど両親が行商人から買ってよく飲んでいたやつ……
「次来たときも持ってくるね」
私は立ち上がり拠点に向かった。
(ここからが本番だね)
これからはスキルだけじゃなく経験を積んで刃を研ぎ澄ます……例え友人を殺すことになっても冷徹でいられるようになるフェーズ。
「拠点の設備と並行してやらないとだけど……それくらい大変な方が良い」
苦労の無い経験は意味が無いからね。私は立ち止まり目を瞑って上を向き深く息を吸って吐いた。
「頑張ろう……」
私は冴え渡るような感覚を感じつつ自分に言い聞かせた。迷いなんて抱かないように……自分の道を真っ直ぐ進めるように。
そうして山の拠点とスラムを行ったり来たりし、モンスターや盗賊を殺し続けて1年経った。
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