第11話
「お前ら!止まれ!ここで野宿をするぞ!」
「「「おー……」」」
日が無くなり代わりに月明かりが照らし始める頃。盗賊たちは野営の準備を始めめた。私はそれを離れたところから観察している。
「思ったより進みやせんでしたね……」
「モンスター共が凄い来たっすからね……これ効果無かったすか?」
「ちっ!不良品を掴まされたか。あの商人次会ったらぶっ殺してやる!」
盗賊のリーダーはそう吐き捨てていた。盗賊たちが使っていた獣避け……実は不良品ではないんだよね。盗賊たちが遭遇しまくったのは、私がモンスターたちを誘導してぶつけたから。
(ケモヨケの実は興奮状態のモンスターには効かないからね……)
盗賊たちの使っていた獣避け。実で安いものはケモヨケの実ぐらいしかない。あれは私が買った薬草よりも効果が弱いから気が立ってるモンスターは気にしなくなるんだよね……効果発揮させるには量もそこそこ必要だしね。あれ人数の割に少ないからただでさえ弱い効果が更に薄く……
(磁石も不良品だったのかフラフラ進んでて思ってたより進行遅いし……拍子抜けだよね)
警戒してたのが馬鹿らしい……まぁ、不安の種は消すに限るから消すことには変わりないけど。私がそんな子供思っている間も盗賊たちは手慣れた様子で野営の準備を始めた。そして持ってきていた食料で飲み食いをし始めた。酒も持ち込んでいたようでほぼ酒盛りだね……獣避けを信頼しすぎてない?
「さて、それじゃあ殺しますか」
私は近くの石を持って盗賊たちを挟んで反対側の茂みに投げ込んだ。
「ん?何の音だ?」
「ちょっと見てくるわ……」
盗賊たちが音に集中している隙に私は素早く静かに近づき酒の樽にサラサラ……と薬を入れた。そして再び距離を取った。
「何も居ませんでした」
「そうか。なら問題無いな!」
盗賊たちは酒が入ってるからか楽観的になっていた。殺そうとしているこっちが心配になってくるよ……まぁ、話してる武勇伝が何人殺したとか物騒だから殺意が引かないけれども。
私が若干呆れている中盗賊たちは一服盛られている酒をガンガン飲んでいく。さっき私が入れたのはネムリ花で作られた粉。スライムコアのお金で買っておいた素材で《睡眠耐性》の取得に使えるかな?って買っておいたもの。
(このままでも効果はあるからね……酒に混ぜちゃえば味も分からないだろうし)
軽く酔ってるから余計に分からないだろうしね。私はその後もこっそり盗賊たちを観察した。盗賊たちはその後も酒盛りをしていき……そして全員爆睡した。
「思ったより飲んでたから効きが良かったね……アルコールで回りが早かったのかな?」
さて、それじゃあ早速始末しよう。私は近くに置いてあった短剣を持って盗賊たちの首を斬っていった。こいつらに自分の武器を使う必要無いからね……近づくとこいつら思ってたより不衛生って分かったし。
『スキル《人殺し・I》を取得しました』
最後の盗賊にトドメを刺すと物騒な名前のスキルが手に入った。これは人に対しての攻撃威力を上げるスキルで対象にはエルフやドワーフも含まれている。ゲーム内では対人用スキルとしてプレイヤーはみんな持ってた。
(リアルになった今だから分かるけど……町中に《人殺し》を持ってるやつが沢山いるって怖)
無法地帯か何か?私は軽く鳥肌の立った腕を摩った。ゲームとリアルの差……ここで感じるとは。
「……気分変えるために戦利品確認しよう」
とりあえず武器は要らないかな。今持ってるやつの方が使えるし……食料は携行食で日持ちが良いものばかりだけど、かなり痛んでるやつが多いからやめておいた方がいい。
「酒は……これは素材用に回収しておこう」
酒はアルコールを抽出すれば色々使えるからね……抽出するには特殊な器具が必要だから今はできないけど。ガンテツさんに作って貰おうかな?
「ここにある武器の鉄があれば作れそうだからね……」
武器としてじゃなくて素材としてなら盗賊たちの武器も使えそうだね。どれだけ必要になるか分からないから出来るだけ持っていこう。
「これで大体漁り終えたけど……死体どうしようか?」
モンスターとは違い人は消えないみたいだからね。放置しとくとモンスターの餌になるから処理できるけど……人の味を覚えさせるのは良くないし面倒だけど燃やすか、こいつら油持ってたしね。私は死体を1箇所に集めて油をかけた。そして焚き火のところから燃えてる薪を回収して火をつけた。
「山火事にならないように見とかないと……その間に持って帰るやつ準備しよう」
私は火の番をしつつ戦利品を持っていけるように支度をした。
◇
side???(第三者視点)
ガリ!バキ!ブチブチ!
真っ暗な洞窟の中、骨を噛み砕き肉を引き千切る音が鈍く響く。地面は血で染まり洞窟内には多数の獣の骨が散乱している。
「「ガロロロロ……」」
洞窟の主は口から血を滴らせ今夜の晩餐を……アンが元いた村の狩人を堪能する。今まで食べていた黒いトカゲや赤いイノシシとは違い食えるところは少ないが、洞窟の主は今まで食らってきた獲物の中で最も美味いと感じていた。今まで食うに足らないと思っていた存在がご馳走ということに気づいた瞬間だった。
モット……モットクライタイ……
人間の味を知った洞窟の主は渇望する。量が少ないならもっと多く食らえばいい……縄張りを広げていた洞窟の主は既に御馳走の住処に気づいていた。自分が満足できる量がいる格好の狩り場を……アンが暮らしていた村を。
「「ガロロロロ……」」
そして洞窟の主は新たな獲物を決めたのだった。双頭の獣は2つの顔の両方に嗜虐を含んだ笑みを浮かべた。
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