第5話



トッ!タッ!トッ!


 昼間の森。私は木の枝から枝へとジャンプで飛び移っていく。背中にはパンパンに詰まった袋を担ぎどんどん森を進んでいく。《体幹》と《跳躍》そしてなんか手に入った《運搬》スキルで楽で良いね……


「おっ、やっと見えてきたね」


 視界には大きい町クローティアが見える。あの町は色んな村や町の商業の中継地になっていて物流が盛ん。まぁ、スラムの方は訳あり品や粗悪品しか出回らないから関係ないんだけど。


(ゲームの時とあんまり変わって無さそうだね……スラムも確認)


 ダブルヘッドパンサーと遭遇して2週間程。あいつを倒すために強くなると決めた私は森で狩りを続けlvとスキルを上げ続けていたけど、毛皮とかの使い道があんまりない戦利品が溜まりすぎて遂に町に売りに行くことにした。それと家にあるものではこれ以上強くなるのは難しいと感じたからちゃんとした物資を集める目的もある。ゴミ捨て場で集めたものだと対して強くならないからね……


 ダブルヘッドパンサーはあれ以降見ていない。私が遭遇した辺りにあまり行かなくなったし、そもそもあいつの縄張りが広すぎて出会わないんだろうね……あの時も運が悪かったから遭遇したんだろうし。バレなかったのは不幸中の幸いってやつ。


「手早く買い物すれば夕暮れ前には山に帰れそうだね……」


 私は素早く山を駆け降っていく。本来山を降りる時に走るのは危ないし疲れるし足痛めるしで良いことあんまり無いんだけど……そこはスキルでのゴリ押しでどうにかしてる。


(この2週間でそれなりにスキルも上げたしね)


ーーーーーー

アンlv10

魔人

暗殺者

HP:48

MP:47

スキル

《隠密・Ⅳ》《忍び足・Ⅳ》《暗視・Ⅲ》

《柔軟・Ⅲ》《体幹・Ⅲ》《跳躍・Ⅲ》

《受け身・Ⅲ》《薬学・Ⅱ》《罠術・Ⅱ》

《毒耐性・Ⅲ》《麻痺耐性・Ⅲ》

《病気耐性・Ⅲ》《苦痛耐性・Ⅳ》


新規スキル

《不意打ち・Ⅱ》

認識外から攻撃を当てた時、攻撃の威力が上がる

《急所突き・Ⅱ》

急所へ攻撃をした時、攻撃の威力か上がる

《運搬・Ⅱ》

荷物を持って運ぶ時、荷物の重量を軽減する

《持久力・Ⅱ》

動き続けてもスタミナが切れにくくなる

《陽動・Ⅱ》

気を惹こうとした行動に対し意識を集めやすくなる

《無心・Ⅲ》

混乱や恐怖によるパニックを軽減する

顔に表情が出にくくなる

ーーーーーー


 《薬学》と《罠術》は意地で上げた。これ以上は道具と素材をどうにかしないともう無理だね……新規スキルは便利なやつが増えたかな。《無心》は表情が出にくくなるって効果があるけど、ポーカーフェイスをキープできるのを考えると問題無いね。


「表情が出ない方が都合良いだろうし。表情って読まれると厄介だからね……」


 ゲームの時によくプレイヤーを狩ってた際にそういうのに長けた人がいた。動きを読まれるし厄介だったね……最終的にその人は罠踏んで死んだけど。猛毒が塗られたトラバサミを踏んでね。


(私自身仕掛けたことを忘れてたやつだったしね……あの時呆然とした表情忘れられない)


 ゲームでの出来事を思い出しながら山をどんどん降りていった。そして無事にスラムへと到着した。スラムにはボロボロの服を着た人や悪人のような見た目の人が多くいる。


(着いたけど気を抜かないようにしよう)


 私は以前ゴミ捨て場から拾って軽く手直しをしたマントを羽織りフードを被った。そして《隠密》などを使い目的地に向かっていった。


(あの店……店主の人かなり年取ってた人だったからあると思うんだけど)


 スラムには色々お店がある。ただしその殆どはぼったくりや買い叩き、偽装商品の販売等犯罪が多い場所故のトラブルがある。最初の頃はよく騙されてたね……だからこそ何処の店が良いかよく知ってる。


「あったあった。良かった……ここ無かったらちょっと面倒だったからね」


 このお店はスラムの中でも真っ当……多少買い取り金額は安いし売ってるものの値段も高いけど偽物とか粗悪品は少ないし。


ガタ、ガチャ……


 私は建て付けの悪い扉を開けた。お店の中は所狭しと色んなものが積み上げられていた。


「……いらっしゃい」


 私がお店に入ると記憶よりも少し若い店主が奥のカウンターから愛想悪く出迎えてくれた。私はそのまま店主のところまで行き袋をカウンターの上に置いた。


「全部売りたい。査定お願いします」


「あいよ……」


 店主は袋の中から素材を出し虫眼鏡のような道具で見ていく。確認作業はすごい手早くてかなり詰め込んで来たのに5分もかからず終わった。


「シンリンネズミ、マッドラビット、フォレストフォックス、ラインバジャー……全部で3500Gだ」


「……思ってたより出しますね?」


 一般的な店なら兎も角スラムの店なのに、2800Gくらいだと思ってた。


「そろそろ寒くなるからな……毛皮の需要が上がっている。また持ってきてくれんならそれなりに高く買い取るぞ」


「わかりました」


 私はお金を受け取った。この世界のお金は効果で1Gの価値がある銅貨。100Gの価値がある銀貨。1万Gの価値がある金貨って感じ。金貨の上にミスリル貨っていうのがあるけど、あれは100万Gだから貴族や大商人くらいしか持っていない。だから貴族や大商人を暗殺した時に手に入れたとしても下手に使えないんだよね……衛兵に捕まっちゃう。


(毛皮は金になる。まだ家にあるし自分で使う分以外は売り払おうか……さてと、それじゃあ買い物しよう)


 目的は塩と短剣……私はごちゃごちゃとしているお店の中を見て回った。


(おっ、岩塩発見)


 棚を探し回っていると拳大の岩塩の塊が3つあった。不純物も少なそうだから買いだね……これは良い掘り出し物。スラムでこの質は滅多にない。


「短剣の方は……これ少し錆びて刃こぼれしてるけど黒鉄製だ」


 黒鉄は鉄と鋼の間くらいの素材。これなら研ぎ直せばナイトリザードたちの皮も貫ける。


(砥石もあるから買っていこう)


 私はとりあえず必要なものを手に入れられたからカウンターに持っていて会計した。


「全部で1300Gだ……他に買うものは?」


「そうですね……見て回った時は無かったですけどクロスボウ置いてありますか?」


 ゲームの時に使ってたメイン武器。弓より連射が出来ず曲射とかの変わった射撃ができないけど、威力と射程を安定させやすく狙って撃つ技術を磨くだけで問題無く扱える。


(暗殺者は攻撃魔法の威力下がるからね……補助魔法なら平気なんだけど)


 だから遠距離攻撃は武器でやらないとなんだよね。私は隠れてジワジワと狙撃で敵を削るのを主軸にしてたし……短剣はクロスボウが効かないやつよう。


「クロスボウ……ちょっと待ってろ」


 店主はそう言って店の奥に行った。そしてガタ!ゴトゴト!という音がしばらくなり、店主は何かを持って戻ってきた。


「クロスボウはこれしかないな……少し壊れてるがどうだ?」


 店主がカウンターに置いたのは黒っぽい木製のクロスボウ。弦が切れヒビが入ってるパーツもあるけど……引き金とかの複雑な部分は壊れて無さそう。大きさは今の私には少し大きいかな……使って慣れれば大丈夫なはず。


「素材は黒樫ですか?」


「本体はな。弦はワイヤースパイダーの糸だ」


 黒樫は黒色の木材でそれなりに頑丈で武器の素材に多く使われている。ワイヤースパイダーは硬くしなやかな糸を扱うモンスターだね。


「修理用の黒樫とワイヤースパイダーの素材ってありますか?」


「問題無い。本体に修理用の素材、それとボルト10本で2200Gでどうだ?」


 残りの有り金全部か……まぁ、必要なもの買ったしそれなりに破格だからね。


(修理に使う道具も短剣あれば大丈夫でしょ……最悪また素材売りに来れば)


 私は2200Gを支払った。これで町でやることは終わったね。


「お邪魔しました」


「毎度あり……」


 私は袋に買ったものを入れ店を出た。そして夜になる前に荒屋へと帰った。


(次来る時は薬や家の修理に使う道具類を買おう……)


 私の計画が更に一歩前進した。


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