真・ボクシング河童

@Minoru_oni

愛と戦いとボクシング河童と

卍丸の事件が終わり、誠二と真琴は改めてデートを約束をしようとしていた。最後のデートは夏だったが、誠二は怪我を治療するために一か月ほど入院していたので、それが終わってからデートをするのだ。


一か月後・・・


「誠二、デート楽しかったね」

「それでなんだけど……」

「うん?」

「この後、僕の家に来ないか? 母さんも父さんもいないし、二人っきりになれるから」

「そっか・・・。いいよ」

二人は顔を赤くして照れている。

「じゃあ、お邪魔するわ」

こうして二人の初体験が決定した。



誠二の家には彼が言ったとおり誰もいなかった。

「ここが僕の部屋だよ・・・なんか緊張するな」

「……」

誠二の部屋にはベッドが一つあり、そこで一緒に寝る。電気を消した部屋の中で、二人は抱き合う。

「ずっとこうしたかったんだ……」

「私も」

そしてキスをした。お互い初めてなのでぎこちない。

「痛くしないでね・・・」

その刹那、外から水の大きな音がした。誠二の家の裏には川があるのだが、そこから音がしたようだ。

「こんな夜中にいったい誰が?」

誠二がベッドから降りて窓から外を見ると、川の中に裸の女性がいた。

「あれは!?」

裸!?なぜこんなところにいるのかわからないが、どう見てもそこに裸の女性がいた。

「警察を呼んだ方がいいんじゃないかしら」

「ちょっと行ってみよう」

「あ、待って!」

すぐに誠二と真琴はその女性のもとに行った。

「おい!何をしているんだ!」

誠二は外に出ると、裸の女性に叫んだ。

裸の女性は誠二の呼びかけを無視して川の中へ入っていこうとしている。川の流れは今は激しくないが、大人一人が完全に入るほどの深さはある。

「やめろ!溺れるぞ!」

誠二は裸の女性を掴んで止めようとする。

「離して! 私は行かなきゃいけないところがあるの!」

「どこへだよ! まずは服を着ろよ!」

「でも行くの!」

女は誠二を振り払おうとする。だが、彼女の腕力は異常に強く、誠二では振り払うことができない。

「何をそんなに焦っているんだよ! 落ち着いてくださいよ!」

「だって……だってもう時間が……」

そこへ、バスタオルを持って真琴がやってきた。

「まずはこれを羽織って」

少し落ち着いたらしい裸の女性がバスタオルをまいた。

「あの、ここで何をしていたん・・・」

彼女が何かを言いかけたとき、後ろから声をかけられた。

「オレ、オマエト、タタカウ」

「え?」

振り返ると、そこに専用グローブをはめた河童が立っていた。

「か、河童?」

そう、河童だった。

「ワタシハ、ヴィクター」

「セイジトタタカウタメニ、ココニキマシタ」

「ぼ、僕と?いきなりなんなんですか」

「ヴィクター!」

バスタオルをまとった女性はヴィクターと名乗る河童のもとへ駆け寄っていった。

「ヨシノ、シンパイカケテスマナカッタ」

「あなたが見つかってよかった・・・」

どうやら彼女はヴィクターを探していたようだ。

「あなた、何者なの?」

真琴が尋ねると、河童は答えた。

「ワガハイハ、マコトノ、シュゴシンデアル。イママデ、マコトノコトマモッテキタ」

どうやら、ヴィクターは守護神として真琴を守ってきたらしいのだ。そして、よしのと呼ばれた裸の女性はどうやらヴィクターの彼女で、今は人間に化けているらしい。

「ヨシノガレフェリーヲスル。セイジ、ワレトボクシングヲセヨ」

「いきなりそんなこと言われてもできませんよ!」

「ニゲルコトハユルサレナイ」

ヴィクターが手を川にかざすと、川の水がまるでモーセが割ったかのように引き始めた。水が引いたそこに、なんとリングが現れたのだ!

「ヨシノ!」

ヴィクターが叫ぶと、いつのまにかレフェリーの恰好をしたよしのがリングに入った。彼女はレフェリーをするらしい。

「サア、コイ!」

「や、やめろ!」

「誠二!」

ヴィクターが誠二を無理やりリングの中に引きずりこんだ。

するとよしのが突然叫ぶ。

「レディ・・・ファイ!!!!」

問答無用のデスマッチボクシングが誠二とヴィクターとの間で今、始まる!!!!!!!


「ファイトダ」

「誠二!逃げて!」

「くそ・・・なんなんだよ!やってやるよ!」

やけになった誠二は、目の前で構えるヴィクターへパンチをする。

「オソイナ」

「なに!?」

誠二のパンチは空を切った。

「ツギハワレノコブシヲウケテミヨ」

ドュグッ


「ぐ」

「誠二!ヴィクター!もうこんなのやめて!」

真琴は余分に持っていたバスタオルをリングに投げるが、よしのに投げ返されてしまう。

「くそ・・・」

「スモウヲキワメテ、ボクシングヲハジメタワレニ、オマエハカテナイ」

こんなやつ、どうやって倒せばいいんだ・・・


しばらくして・・・


ヴィクターは強かった。誠二のパンチなど意にも介さず、誠二を一方的に殴りつける。誠二は必死にガードするが、ダメージが大きくふっとばされてしまう。

「うぐっ・・・」

誠二の意識は薄れていく。

(ちくしょう……このままだと負けてしまう)

誠二は思った。このまま負けたら真琴に嫌われてしまうかもしれない。それだけは何としても避けたかった。

そう、諦めるわけにはいかない。誠二は再び立ちあがる。誠二の瞳からは闘志の炎が消えていない。まだ諦めることなどできないのだ。

誠二が再び構えたとき、真琴がリングに入って誠二のもとに駆け寄る。

よしのが真琴を静止しようとするが、真琴はよしのを外へぶん投げた。

「誠二、大丈夫!?」

「ああ、何とか……真琴、ここは危ないよ」

誠二は息も絶え絶えであった。真琴は誠二の体を支える。

「この勝負、もうやめにしましょう。 これ以上続けるのは無意味だと思うわ」

真琴はヴィクターに向かって言った。

「ナゼダ、コレハ、シンケンショウブナノダ」

「その通りよ。これは決闘よ。だから、私も参戦させてもらうわ」

「!?」

真琴は言う。そして、自分の着ていた服を脱ぎ捨てる。

「ま、待てよ。真琴、それはさすがにダメだ。危険すぎる」

誠二は抗議する。しかし、真琴は聞く耳を持たない。

「うるさい。誠二の初めては私がもらうって決めてるから、ここで大人しく誠二がやられているところを見ていられないのよ!」

「え?は?」

誠二の制止を無視して、真琴は戦闘服に着替え始める。

「おい、ちょっと……」

「いいから黙っていて!」

「はい……」

こうして、真琴VSヴィクターの戦いが始まることになったのだ。

「それでは……ファイト!」

いつのまにか戻っていたレフェリーの掛け声と同時にゴングが鳴る。

真琴とヴィクターの戦いが始まった。

戦いが始まるとすぐに、ヴィクターは突っ込んでくる。彼は人間ではないため動きが速い。普通ならかわせないだろう。だが、真琴にはヴィクターの動きが見えている。

(見える……見えます!)

ヴィクターの攻撃をかわしながら、真琴は思う。

ヴィクターは素早く拳を振るってくる。一撃でも喰らうと大ダメージを受けそうだ。

「えいっ」

「ウグッ」

ヴィクターの攻撃をかわすだけでなく、隙を見ては反撃を加える。ヴィクターはたまらず距離を取った。

「すごいです。やっぱりあの人、すごく強いですね」

「ああ、俺よりも強えかもしれねえな」

凸丸と卍丸は感心している。二振りの刀が誠二の横に立っていた。

「お、お前たちはなんでここにいるんだよ!」

「戦いがあると聞いて、たまらず来てしまいました」

「まあ、細かいことはいいじゃねえか」

戦いは、なおも真琴が主導権を握っていた。

「どうしたの、逃げ回ってばかりいないで、攻撃してきなさい」

真琴は挑発する。

「キサマヲ、タオス。ヌシトイエドモ、オレノイカリニ、フレタバツガ、アルゾ」

ヴィクターは怒り狂っているようだ。ヴィクターは素早い連続攻撃を仕掛けてくる。真琴はそれを冷静に捌く。

「ほら、もっと攻めてきなさい」

「コノヤロウ!!」

ヴィクターはどんどんスピードを上げていく。しかし、それでも真琴は余裕でヴィクターの攻撃を受け流す。

「な、なんで真琴はあんなに躱せるんだ?」

「あの方は目が慣れてきてるんですよ。相手の動きを先読みできるみたいですね」

誠二と卍丸は話をしている。

「そろそろいいかしら」

真琴は呟いた。ヴィクターは気づいていなかったが、真琴はヴィクターの猛攻が止む瞬間を狙っていたのだ。

「これで終わりよ!」

次の一瞬、真琴はヴィクターの懐に飛び込んだ。そして、渾身のパンチを叩き込む。

ドゴオオオンッ 強烈な音と共に、ヴィクターは吹っ飛んでいく。

「グハッ」

ヴィクターは床に叩きつけられ、そのまま倒れた。

「勝者、高垣真琴」

レフェリーが宣言すると、会場内は歓声に包まれた。

「ミゴトダッタ・・・ガクっ」

ヴィクターとよしのはそのままリングと共に再度閉じようとしている川の水の中に入っていった。

その後、真琴は着替え、誠二と一緒に帰ることになった。

「ごめんね、私の守護神?に付き合わせちゃったみたいで」

真琴は申し訳なさそうにしている。

「別にいいさ。たまにはこういうのもいいと思うよ。それにしても・・・真琴は強いね」

誠二は笑顔で言う。

「ありがとう」

真琴も笑った。二人は仲良く手を繋いで帰る。その様子を凸丸と卍丸も見ていた。

「兄さま、僕達も帰りましょうか」

「ああ、そうだな」

凸丸と卍丸も帰路につく。彼らは海の底へ帰っていった。


誠二と真琴は誠二の家に帰ってきた。

「じゃあ誠二・・・続きを・・・」

「まだ体力あるの!?」

今日も楽しい一日だった。

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